人の幸せがまぶしすぎて、目をそらしたくなる日がある
司法書士という仕事をしていると、人生の節目に立ち会うことが多い。結婚、相続、会社設立……人の幸せな瞬間にかかわれるのは、ある意味で光栄なことだ。でも、そんな「おめでたい話」がまぶしすぎて、直視できないときがある。特に、自分が置き去りにされたような感覚を抱えているとき、人の幸せは胸に刺さる。最近、久しぶりに連絡をくれた友人が結婚するという話を聞いて、嬉しさよりも先に出たのは、なぜか「つらさ」だった。
なぜか「おめでとう」が言えなかったあの日
「そうか、結婚するんだ。おめでとう」――そう言えたらよかった。でも、言葉が詰まって、電話の向こうで一拍の間ができた。無理に笑って取り繕ったけれど、心は全然ついていってなかった。中学からの友人で、独身仲間だと勝手に思っていた彼が、ついに抜け出していく。置いていかれる側に回ったんだと、実感してしまった瞬間だった。
同期の結婚報告に動揺してしまった
同じ司法書士としてスタートした同期からも、最近立て続けに結婚や出産の報告が届く。長く頑張ってきた仲間の幸せは喜ばしいはず。でも、「あの人が結婚できるなら、俺にもチャンスあるかも」と思ってた気持ちが裏切られたような、そんな勝手な感情に押し潰されそうになる。たぶん、心の底では自分が取り残されたくないだけなんだろう。
祝いの言葉が喉につかえて出てこない
LINEで「おめでとう！」と送るだけの簡単なはずの返信にも、ずいぶん時間がかかった。何度も書いては消し、スタンプだけ送ってしまった。自分の器が小さいんだと思う。でも、器なんて簡単には広がらない。自分の中の「嫉妬」という感情と向き合うたび、どうしようもない劣等感に苛まれるのが現実だ。
笑顔の裏で、心がざわざわしていた
結婚式の写真、子どもの誕生報告、SNSにあふれる幸せの記録。そんな投稿を見るたび、胸の奥がザワつく。「よかったね」と思う反面、「自分には何もない」と呟いてしまう自分がいる。たとえ顔で笑っていても、心の中ではうまく処理できていないのが、なんとも情けない。
他人の幸せが、自分の足りなさを突きつけてくる
司法書士という仕事は、結果を数字で評価されるわけでもなければ、誰かと比べて勝ち負けがつくものでもない。でも、プライベートの充実度は、どうしても比べてしまう。他人の幸せが眩しく見えるのは、自分の生活が色あせて見えてしまうからだ。机の上に散らかった書類と、静まり返った事務所。ふと我に返ると、何をやってるんだろうと思ってしまう。
うらやましさと罪悪感の板挟み
「うらやましい」と思うこと自体が、悪いことのように感じる。でも本当は、誰にでもある感情だと思う。素直に「いいな」と言える人の方が、きっと心が健やかなんだろう。だけど、自分の中にあるうらやましさが、時に黒く濁って罪悪感に変わるときがある。そうするともう、幸せな話すら聞きたくなくなってしまうのがつらい。
ひとり事務所で迎える夕暮れの静けさ
一日の業務が終わり、事務所の照明を落とした瞬間に感じる孤独は、誰にも言えない。事務員さんが帰った後の静けさが、やけに耳に残る。人と関わる仕事をしているのに、なぜかこんなに孤独なのはなぜだろう。お祝いごとが続いたあとの日常に戻ると、余計にその静けさが身に染みる。
忙しさにかき消される「さみしい」の正体
仕事が立て込んでいる日は、「さみしい」と感じる暇すらない。でも、ふとした瞬間に訪れる空白の時間が怖い。帰り道、コンビニの明かりがやけに温かく見えたり、ふらっと立ち寄ったスーパーで子連れの家族を見かけると、自分の居場所がどこにもないような気がしてくる。
相談を受けるだけで、誰にも相談できない日々
司法書士という仕事は、人の悩みを聞くことが多い。でも、じゃあ自分の悩みは誰に話せばいいのか？相談できるような同業者もいない。年々、愚痴をこぼす場もなくなって、気づけば心の中で独り言ばかり増えている。そういう孤独が、じわじわと心をむしばんでいく。
人と関わる仕事なのに、人恋しいとはこれいかに
相続の相談や登記の依頼など、人と話す機会は多い。けれど、それは「仕事上の会話」でしかない。自分の弱さや本音を話す相手ではない。だからこそ、毎日誰かと話していても、どこか満たされない。仕事の顔と、素の自分のギャップに疲れてしまう日もある。
手続きが終われば、誰もいない
「ありがとうございました」と言われて事務所のドアが閉まる。その音を聞くたびに、「また明日も同じ日が始まる」と思ってしまう。終わっていくやりとりの繰り返しのなかで、自分自身が「消耗品」のように感じることがある。人の幸せを支えるはずの仕事なのに、自分の心はどんどん乾いていく。
それでも働き続ける理由を探して
そんな風にくすぶりながらも、司法書士という仕事を辞めたいとは思わない。たぶん、この仕事にしかできない役割があると信じてるからだと思う。愚痴ばかりこぼしてるけれど、それでも前を向こうとしている自分も、たしかにいる。
愚痴だらけでも、最後に残るもの
登記が終わって一言、「助かりました」と言われたとき。不意に差し入れで頂いたお菓子を見たとき。そんな些細な瞬間が、心の支えになっているのかもしれない。華やかではないけれど、人の役に立てている実感が、この仕事の根っこにある。そう思える日は、少しだけ救われた気がする。
感謝された一言が、心にしみた日
「先生がいてくれてよかった」と言われた日があった。その一言が、何日分もの疲れをふっと軽くしてくれた気がした。まぶしい幸せではないけれど、じんわりと温かい。自分にも、誰かにとっての「救いの存在」になれる瞬間があるのだと思えた。
誰かの幸せを「まぶしい」と思える自分を許す
人の幸せをうらやましく思うこと。それは、決して悪いことじゃない。むしろ、自分にも「そうなりたい」という気持ちがある証だ。目をそらしたくなることがあっても、それでもまた、前を向ける日が来ると信じていたい。まぶしさに耐えるのではなく、自分のペースで、少しずつ進んでいけばいい。
うらやましいと思えるのは、まだあきらめてない証拠かもしれない
もし本当にすべてをあきらめていたら、人の幸せなんて何も感じないはず。だから、今感じているこのざわめきも、自分がまだ希望を持っている証なのだと思いたい。そう、どこかでまだ信じている。「自分にも、いつか光が差す日がくる」と。
