夢の中でもうまくいかない：心が休まらない夜
夜、布団に入ったときくらいはすべてを忘れて眠りたいのに、気がつけばまた仕事の夢。しかも、うまくいかない。登記の書類を間違えたり、依頼人に怒鳴られたり、印鑑が押されていなかったり。夢だとわかっていても目覚めたときには汗びっしょりで、朝からどっと疲れる。現実でも失敗が怖くてたまらないのに、夢の中でも逃げ場がないというのは本当にきつい。これは司法書士という仕事の性質上、ミスが許されないというプレッシャーが深層心理にまで染み込んでいる証なのかもしれない。
夢にまで出てくる失敗案件：あれは本当にトラウマだった
昔、抵当権抹消登記で誤って違う不動産番号を入力してしまったことがある。すぐに気づいて訂正できたが、金融機関と依頼人に詫びの電話を入れたあの瞬間の手の震えと冷や汗はいまだに忘れられない。あのときの感情が何度も夢に出てくるのだ。相手に「それがあなたの仕事でしょう？」と責められる夢を見て、目覚めてもしばらく動けない。たかが夢、されど夢。現実と同じくらい心に刺さる。
電話一本のタイミングで狂った登記の地獄
あの日、一本の電話で流れが崩れた。別件の相談に気を取られ、メインの登記作業の確認を一時中断。そのあと、入力を再開したが、気が緩んでいたのか入力ミスに気づけなかった。確認作業を「した気」になっていた。翌朝、法務局からの連絡で気づき、あの瞬間の血の気の引く感覚は今でも夢に出てくる。「なぜあのとき確認しなかった？」と何度も自問する。その問いが夜な夜な夢となって押し寄せてくる。
自分を責める癖が夢にまで及ぶ
誰もそこまで怒っていないのに、自分が過剰に責任を感じてしまう癖がある。司法書士という職業柄、完璧を求められる場面が多く、「ちょっとしたこと」が致命傷になりかねない。その不安が日々の中で積もり、夜になると夢の中で反芻される。反省ではなく自己否定に近いループに陥り、結局目が覚めたときにはぐったりしている。この循環から抜け出す方法は見つかっていない。
休んでいるはずの睡眠が「業務時間」になっている
布団に入ったら本来なら「業務終了」のはずなのに、頭の中はまるでタイムカードを押さずに働き続けている状態。夢の中でも電話が鳴り、誰かに謝罪し、書類のミスを探している。睡眠が回復の時間であるべきなのに、精神的には残業しているようなものだ。
眠るたびに責任が蘇る
夢の中で「提出期限を間違えた！」と叫んで飛び起きた朝が何度あったことか。心臓はバクバクしているし、手には汗。夢なのに、身体は本気で危機を感じている。こうした状態が続くと、寝ること自体が怖くなってくる。「どうせまた仕事の夢を見るんだろうな」と思いながら布団に入るのは、なかなかの地獄だ。
疲れが取れない朝に襲う無力感
起きた瞬間から「今日は大丈夫か？」と自分に問いかける。夢で疲れ、現実でも気を張り、そしてまた夜が来る。この繰り返しに、時々「なんでこんなことしてるんだろう」と思う朝がある。世の中にはもっと気楽な仕事もあるのに、自分はなぜこの道を選んだのかと自問してしまう。
夢が教えてくれる“逃げ道のなさ”
夢とは無意識の現れだというが、そこでまで仕事に追われているというのは、どこにも「逃げ」がないことの証明だ。司法書士という仕事は一人で多くの責任を背負いがちで、間違いがそのまま損害や信頼の失墜につながる。そういった状況が長く続けば、夢くらい自由になってもよさそうなのに、それすら許されないのが現状だ。
現実と地続きの夢：日常の延長線上
夢の中で、いつもの事務所にいる自分がいる。机に向かい、書類を並べ、依頼人に電話している。まったく現実と変わらない光景。違うのは、ミスが次から次へと起こることだけだ。目が覚めるまでそれが夢だと気づけないくらい、日常と地続きなのだ。それだけこの仕事が生活に食い込んでいる証だろう。
業務と人格が結びつきすぎているのかもしれない
自分は司法書士である前に「人間」だと、当たり前のことがふとわからなくなるときがある。仕事をしていない時間でも、自分はこの肩書きと責任から解放されていない気がする。もしかしたら、自分という存在がこの仕事と過度に同一化しすぎているのかもしれない。
「逃げたい」のに逃げられない構造
たとえばコンビニで何かを買っているときですら、「あの登記、問題なかったかな」と頭をよぎる。完全に仕事から離れられる瞬間がない。夢の中すらその延長では、もはや「自分の時間」は存在しないのではないか。司法書士としての自分を一瞬でも手放したいと思っても、背負ってきた責任や期待がそれを許してくれない。
続く夜の中で、僕らができること
夢の中でも働き続けるような日々に抗うすべは、正直多くない。けれど、少しずつ意識を変えていくことはできるかもしれない。「失敗することもある」「すべてに完璧を求めなくてもいい」と自分に言い聞かせること。それだけでも少し、夢が穏やかになる日が来ると信じたい。僕らは今日も夢に疲れながら、それでも朝を迎えて仕事をしている。それだけでも、十分頑張っていると思う。
