書類の山に埋もれて、今日も独り言が増えていく
朝から届く書類、依頼者からの電話、郵便物のチェック。忙しい一日が始まったはずなのに、ふと気づくと誰とも会話をしていない。気づけば独り言が癖になっていて、ひとつひとつの処理に「よし」とか「なんだこれ」と声を出して自分を鼓舞している。仕事は人と接するもののはずなのに、この孤独感は何なんだろう。特に午後、陽が傾き始める時間帯になると胸の奥が妙に寂しくなってくる。パソコンの画面ばかり見ているせいか、誰かの顔が恋しくなるのだ。
依頼は来るけど、感情の交流は少なすぎる
登記や相続の依頼は着実に入ってくる。だから「暇で寂しい」わけではない。でも、関わる人とのやりとりは必要最小限で終わってしまうことが多い。「先生、これお願いします」「かしこまりました」——そのやり取りだけで終わる日もある。法的なやりとりには、どうしても感情を出す場面が少ない。感情よりも正確性、効率、誤解のない言葉が優先される。だからこそ、心が空っぽになるような感覚が生まれるのだと思う。
「こんにちは」「ありがとうございます」それっきりのやりとり
とある日、相続の相談に来た年配の女性が「ありがとうね」と深く頭を下げて帰っていった。ちゃんと役に立てたんだな、と満足感はあった。でも、心のどこかで「もっと話したかったな」という想いも残った。お互いの人生に触れるような会話は、なかなかできない。司法書士という立場上、深入りを避けるのが礼儀でもあるから難しい。でも人としての温もりを感じたい。あの「ありがとうございます」にすべてを託されている気がして、胸が少しだけ痛くなった。
関わってるのは“人間”なのに、人恋しいのはなぜだろう
法的な仕事は、人の人生に深く関わるものだ。なのに、その過程では「人間味」を感じる瞬間が驚くほど少ない。これは司法書士だけに限らず、士業全般に言えることかもしれない。責任の重い仕事だからこそ、私情を挟まずに済ませようとする。でも、その“冷静さ”の裏で、自分が人としてのつながりを失っているのではないかと、不安になることがある。心が触れ合う瞬間は、仕事の枠を超えたところにしかないのかもしれない。
事務所にいるのは僕と事務員さんだけ
毎朝事務所のドアを開けると、事務員さんが「おはようございます」と言ってくれる。それだけで救われるような気持ちになる。でも、その後はほとんど会話がない。別に仲が悪いわけではない。ただ、お互いに「仕事モード」に入りすぎてしまって、雑談のタイミングが見つからないのだ。静まり返った室内でカタカタとキーボードを打つ音だけが響く。そんな時間が1日6時間くらい続くと、誰かと話したくて仕方なくなる。
雑談って…していいの？しちゃダメなの？
たまに思う。「今、雑談していいかな？」って。でも事務員さんは真面目な性格で、仕事中はとにかく黙々と作業している。それを邪魔しちゃいけないという気持ちと、ちょっと声をかけてみたい気持ちの間で揺れる。昔の職場では、昼休みに「昨日テレビ見た？」みたいな話をしていた。でも今は、そんな緩い時間の感覚がどこか遠くなってしまった。会話がなくても成立する職場。それが心地よいときもあるけど、寂しさの方が勝る日もある。
気を遣う性格が空回り、会話ゼロ時間の増加
私はもともと、人に気を遣うタイプだ。「こう言ったら迷惑かな」「今、声をかけたら邪魔かな」と考えてしまって、結果的に黙ってしまう。すると、どんどん会話の機会が減っていく。そして、その沈黙が当たり前になってしまう。まるで「話さないのがルール」みたいな空気が出来上がってくる。それがまた寂しさを増幅させて、自己嫌悪に近い感情まで湧いてくることもある。自分で自分を孤独にしているのかもしれない。
話しかけられないと、どんどん話せなくなる
誰かから話しかけられると、自然と話せる。でも自分からはなかなか話せない。そんな性格のせいで、ますます会話の機会が減っていく。司法書士という職業柄、元々内向的な人が多いのかもしれない。相談を聞く側であっても、自分のことを語るのは苦手。だからこそ、言葉を交わせるだけでもありがたい。たとえそれが天気の話や、今日のランチの話でも、ぽつんと話せる相手がいるだけで、心はだいぶ違う。
