司法書士っぽくないですねと言われた日嬉しさと戸惑いが混ざった

司法書士っぽくないですねと言われた日嬉しさと戸惑いが混ざった

司法書士っぽくないと言われる瞬間

依頼人に面談中、ふとした一言で「司法書士っぽくないですね」と言われたことがある。思わず苦笑いしながら「そうですかね」と返したが、心の中ではその言葉がずっと残っていた。司法書士として十数年、法務局と家庭裁判所を行ったり来たりする生活の中で、誰かにそう言われることは珍しくない。しかし、それが褒め言葉なのか、ただの違和感なのか、受け止め方が難しい。スーツにネクタイで身を固めてはいるが、中身は元野球部の泥臭いおっさん。そんな自分が「ぽくない」と言われることに、少しだけ救われる気もしてしまうのだ。

その言葉は褒め言葉なのか悪口なのか

「司法書士っぽくない」という言葉の真意は人によって違う。褒めているつもりの人もいれば、単に「堅苦しくない」という感想を述べているだけの人もいる。だが、こちらとしてはそれを言われるたびに、心の中でいちいち引っかかってしまう。たとえば先日、法定相続情報の説明中に雑談を交えたら、「こんなに話しやすい司法書士初めてです」と言われた。嬉しい反面、「他の司法書士と比べて軽く見られてないか?」と、被害妄想に近い感情が頭をよぎる。言葉を素直に受け取れない性格なのかもしれない。

第一印象で感じた距離感

名刺を渡すとき、多くの人が私を見て一瞬「え?」という顔をする。スーツは着ているが、髪は伸び気味で、靴はちょっとくたびれている。笑顔も営業スマイルではなく、どちらかというと照れ隠しの笑み。そんな第一印象から「え、ほんとに司法書士?」という疑念が湧くのだろう。これがよく言えば親しみやすさ、悪く言えば信用のなさだ。司法書士としての見た目に自信を持てない日もある。だがそれでも、自分なりにやってきたという自負は、なんとか心を支えてくれている。

野球部出身という異色の経歴

高校時代はバリバリの体育会系で、毎日グラウンドに泥を撒いていた。法学部に進んだのも、野球部の先輩に憧れてのことだった。司法書士という職業を知ったのは、部活帰りにたまたま寄った図書館だった。だから今でも、机に向かっているときより、動いているときの方が落ち着く。そんな自分が書類の山に囲まれて、筆ペンで遺言書を書く姿は、自分でもちょっと笑えてしまう。きっとこのギャップが、「司法書士っぽくない」と言われる所以なのだろう。

見た目とギャップのある職業感

司法書士というと、「無口で真面目」「スーツがビシッと決まってる」「話しかけづらい」といったイメージが世間にはあるようだ。しかし、現実はもっと泥臭い。依頼人の自宅に出向いたり、役所の窓口で長時間待たされたり、汗だくで書類を運んだりすることもある。だからこそ、見た目が少しラフであることが、逆に依頼人との距離を縮めているのかもしれない。

スーツが似合わない司法書士

スーツは、正直苦手だ。首元が苦しいし、夏は暑い。そんな状態で「信用される外見」を維持するのはなかなか辛いものがある。ある日、汗びっしょりで登記相談に訪れたら、依頼人に「頑張ってますね」と言われてちょっと救われた。でも内心では、「これじゃいかん」と思い直し、翌日からネクタイだけは替えるようにした。小さなことだが、少しでも「ぽく」なろうとする努力はしているつもりだ。

地元の人からの素直な感想に揺れる心

田舎では噂がすぐに広まる。司法書士になった当初、「あの野球部のイナガキくんが司法書士?」と驚かれた。地元の人は私を子どものころから知っているから、なおさら「らしくない」と感じるのだろう。ある高齢の依頼人に「あなたみたいな人がいて助かるわ」と言われたときは、本当に泣きそうになった。「ぽくない」が、誰かの安心につながるなら、それも悪くないのかもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。