心が折れそうな瞬間は、意外と些細なことだったりする
毎日何件もの案件を処理して、事務所を回していると、体力的な疲れよりも、精神的な疲れの方がじわじわ効いてきます。でも、意外と心が折れそうになるのは、ドカンと大きなトラブルが起きたときではなくて、ほんの些細な出来事なんですよね。何気ないひとことや、ちょっとしたミスで、ガラガラと自分の気持ちが崩れていくあの感覚。「なんでこんなことで……」と自分でも思いながら、どうにも気持ちが戻ってこない。司法書士って、意外と心のスタミナ勝負なんだと、ここ最近になって痛感しています。
書類の訂正を一文字ミスっただけで崩れる集中力
忙しい日常の中で、登記申請書類のわずかな誤字脱字が命取りになります。一文字の間違いに気づいたとき、正直、ため息が止まりません。「またか…」と自分に呆れながら、訂正印を押し直していくのですが、そんなときほど集中力が一気に切れます。午前中から黙々と作業していて、その1ミスでその日のリズムがガタガタに崩れる。まるで積み木の塔が、一片で崩れていくような。こんなに小さなことで、ここまで気持ちが乱れるのかと自分で驚くこともしばしばです。
修正印を押しながら心の中では「またか」と呟く
この「修正印」という文化、便利なようで実にやっかいです。1箇所間違えれば、印を押す、日付を書く、さらに訂正内容を確認して再提出——と、ミスの何倍も手間がかかるんです。私のように手書きの場面がまだ多い事務所では、特にこのストレスが大きい。たった一文字のミスが、頭の中の整理をぐちゃぐちゃにしてくる感じがして、気が抜けてしまいます。「またやってしまった」と感じるときの、あの胃の奥がキュッとする感覚。経験のある方なら共感してくれると思います。
「たった一文字」で一日のリズムが狂うという現実
午前中から張り詰めていた緊張感が、その一文字で一気に萎むのを感じます。特に期限が迫っている案件では、この「一文字」が数時間のロスを生むこともある。そうなると、自分の段取りに影響し、次の案件にも波及していく。もう、心のなかでは「今日はダメな日」と決めつけてしまうんです。本当はまだ時間もあるし、取り戻せるはずなのに、それができない。この無力感が、地味に、でも確実に心を削ってきます。
依頼者の一言が地味に刺さることもある
仕事柄、依頼者のさまざまな人生の節目に立ち会うことが多いですが、その中で放たれる一言に、思わぬ形で心を揺さぶられることがあります。悪気がないのは分かっているんです。でも、それでも刺さる。たとえば、相続の相談で「これって簡単な手続きですよね?」なんて言われたとき、自分の積み重ねてきた知識や努力が否定されたような気持ちになるんです。感情の処理が追いつかず、黙って笑ってしまう自分にも、なんだかモヤモヤします。
「これって簡単な仕事ですよね?」の破壊力
私が長年かけて身につけてきた法律知識や実務経験は、「簡単」と言われることで一瞬で価値が軽んじられるような気がしてしまう。この言葉の破壊力は想像以上です。依頼者が安心したいという気持ちから出た言葉だということもわかっています。でも、疲れているとき、心が弱っているときに言われると、どうしても「バカにされてるのか?」という受け止め方をしてしまう。情けないけれど、それが正直な気持ちです。
プロとしての矜持を、どう守ればいいのか
司法書士として、依頼者には安心感を与えたい。でも、「簡単」と言われたときに、それを否定せずに受け入れるのが正解なのか、それとも「実は複雑なんですよ」と伝えるべきなのか、迷うこともあります。自分の矜持を守りたい気持ちと、依頼者との信頼関係を壊したくない気持ちがぶつかって、結局どちらにも振り切れずにモヤモヤが残る。その繰り返しが、少しずつ自信を削っていくんです。
誰にも相談できない苦しさがじわじわくる
地方で一人事務所を構えていると、相談できる相手がいないという孤独は想像以上です。事務員さんには言えない話もありますし、家族もいない。地元の同業者とは顔見知り程度で、本音を言えるほどの関係にはなれない。そんな環境で毎日過ごしていると、知らず知らずのうちに自分の気持ちに蓋をしてしまい、気づいたときには「なんでこんなに苦しいんだろう」と思ってしまいます。
事務員には言えない、所長としての本音
事務員は事務員で一生懸命働いてくれているので、こちらの弱音なんて聞かせられません。仕事のミスやミスの尻拭いをしてもらうこともあるし、だからこそ所長である自分が弱いところを見せてはいけない。そんな風に考えてしまう。でも、それって逆に自分を追い詰めているんですよね。「しんどい」と言いたいのに言えない。それがどれほど心に負担をかけているのか、最近になってようやく気づいてきました。
「やめたい」と思う夜に誰かと話せたら
夜、自宅に帰ってから、「もう無理かもしれない」と思う瞬間がたまにあります。特に、理不尽な補正通知や急な案件が重なった日なんかは、もう逃げ出したくなるほど。でも、その気持ちを誰かに話す相手がいない。「同じように頑張ってる司法書士仲間が近くにいたらな」と思うこともあります。もし話せたら、たぶん気持ちが軽くなるのに。話すことで自分の状況を客観視できたり、「まだ大丈夫」と思えたりすることもあると思うんです。