コーヒーより補正通知が効く

コーヒーより補正通知が効く

朝の一杯より、あの通知で目が覚める

朝イチのコーヒーが沁みる季節になってきた。けれど、正直に言えば、どんな高級豆よりも目が覚める瞬間がある。それは、メールの受信通知に「登記の補正について」と書かれていたときだ。まるで雷に打たれたかのように、一気に血の気が引いて、頭がシャキッと冴える。カフェインなんて比較にならない。司法書士にとっての「朝の一杯」とは、法務局からの補正通知かもしれないと思ってしまう自分が少し怖い。

補正通知、それは眠気を吹き飛ばす合法的スリル

補正通知が来ると、心臓がドクンと跳ねる。これは本能に近い反応で、もう条件反射だ。どんなに忙しくても、疲れていても、補正通知を見ると眠気が吹き飛び、胃がキリキリし始める。まるでジェットコースターの頂上から急降下するような感覚。違うのは、自分がコントロールできないという点。だからこそスリルがあるし、だからこそしんどい。

「来たか…」と唸る瞬間

あのメールの件名を見た瞬間、思わず「来たか…」と口に出してしまう。まるで戦国時代の武将が敵の襲来を知ったかのような気分だ。経験を重ねてもこの感覚は変わらない。補正の可能性がある書類は提出前に何度も確認しているはずなのに、それでも来る時は来る。「なぜここを見落としたのか」と自問自答しながら、机に手をついて天を仰ぐ。それが朝のルーティンのようになっている。

コーヒーじゃ心臓は動かないけど、補正なら動く

最近はカフェインにも慣れてしまって、朝のコーヒーだけでは心が動かない。それよりも、補正通知のほうがはるかに効果がある。ドキドキ、というよりドクン、という重い心臓の音が体を支配する。こんな生活、正直、体にいいわけがない。でも、司法書士という職業の性質上、避けられない刺激だ。心臓に悪いけど、今日もそれに助けられて起きている。

平穏な日常を壊すのは、いつも法務局

朝から穏やかに進んでいた予定表が、一通のメールで崩壊する。補正通知が届くと、まず頭の中のスケジュールがぐしゃっと潰れる音がする。たった一通の文書で、今日の予定が全部ひっくり返る。誰にも責められていないのに、ひどく責められているような気になるのも、この通知の不思議なところ。書類の不備は自分の責任。それがある意味で、一番きつい。

急ぎの書類?いや、それよりこっちが先

午前中に申請しないと間に合わない案件がある。でも補正通知が来たら、そっちが優先。なぜなら、補正を放置しておくと、事態はもっとややこしくなる。登記官の印象も悪くなるし、クライアントにも迷惑がかかる。頭では理解しているけど、身体が追いつかない日もある。「もうひとり、俺が欲しい…」と心の中でつぶやきながら、コーヒーを一口だけ飲んで、補正対応を始める。

予定が狂うのはいつも突然

この仕事をしていて思うのは、「予定通りにいく日は存在しない」ということだ。登記の進行は不確実性の塊だし、思わぬところで足をすくわれる。特に補正が来ると、すべての段取りが狂う。電話対応のタイミングも変わるし、次の訪問もキャンセルせざるを得なくなることもある。それでも、謝るのはこっち。「すみません、法務局から補正が…」なんて言っても、誰もわかってくれない。

「軽微な補正です」って、軽微じゃないこともある

法務局の通知文には「軽微な補正」と書かれていることがある。でも、その“軽微”の感覚は人それぞれで、こちらにとっては“致命的”なこともある。たった一文字のミスで全部やり直し、なんてこともあるのがこの世界だ。思わず「それ、最初に言ってよ…」と愚痴が漏れる。補正って、ほんと“軽微”じゃない。少なくとも、精神的には。

ミスを見つけてくれるのは、だいたい法務局

一番厳しい校正者は、たぶん登記官だと思う。自分では何度も見直して完璧だと思って提出しても、あちらは容赦ない。「この文言は誤りです」「根拠条文を再確認してください」など、プロ中のプロの赤ペンが飛んでくる。その度に、自分の甘さや油断に気づかされる。どんなに経験を積んでも、補正ゼロにはならない。司法書士は、常に自分の未熟さと向き合わされる仕事なのだ。

優しさ?いいえ、鋭さです

補正通知には、感情がまったくない。それが逆に怖い。淡々と書かれた文章ほど、心に突き刺さるものはない。「この表記では登記できません」「再提出願います」…それだけで、こちらは深く反省することになる。登記官に悪意があるわけではない。むしろ、彼らは仕事を全うしているだけ。でも、それが優しさではなく“鋭さ”として突き刺さる。まるで、切れ味の良すぎる包丁のようだ。

補正を出すたび、自分の未熟さを噛みしめる

補正通知が来たとき、一番辛いのは「またか」という自己否定感だ。毎日真面目にやっているつもりでも、どこかにミスがある。しかも、そのミスは基本的なことだったりする。書類の書き方、添付の順番、印鑑の押し方…。それらが原因で補正されると、「俺は何をやっていたんだろう」と情けなくなる。司法書士としての自信は、補正通知によって少しずつ削れていく。

誰かに怒られるより地味にこたえる通知

上司に怒鳴られるとか、クライアントに怒られるとか、そういうわかりやすい叱責よりも、補正通知は地味に効く。誰にも責められていないのに、強く自責の念に駆られる。自分が気づけなかったという悔しさと、迷惑をかけたという罪悪感。怒られてないのに泣きそうになる。そんな通知が、毎月のようにやってくる。司法書士って、地味にメンタル削られる職業なんだと改めて思う。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。