朝の静けさに疲れがにじむ
早朝の事務所は静かで、心が落ち着くはずなのに、最近はその静けさに疲れを感じる。目覚ましが鳴ってから30分は布団の中で現実逃避してしまうこともある。昔は朝からバリバリ動けたのに、今は「今日もやることが山積みだ」と思うと、布団から出るのが一苦労だ。コーヒーを淹れて窓を開けても、スッキリするどころか、溜息が漏れる。静寂が心を癒すどころか、むしろ疲れの深さを思い知らされる。
眠気と戦いながら開く事務所のシャッター
毎朝8時すぎに事務所に着く。シャッターを開ける手が、以前より重く感じるのは気のせいだろうか。春の花粉、夏の暑さ、冬の寒さ、どの季節にも理由をつけて「今日はちょっとしんどいな」と思ってしまう。眠気を引きずったまま事務所の明かりをつけ、パソコンの電源を入れるが、心もまだ立ち上がっていない。司法書士って、もっとスマートな仕事だと思っていたのに、実際は半分肉体労働のような日もある。
「よし」と言ってから動き出すまでの10分
「よし、やるか」と口にしてから、実際に動き出すまで10分はかかる。机の前に座ってはいるが、頭はまだスリープ状態。メールを確認しようとしても、目が滑る。そんなときは決まって、机の上をなんとなく片付け始めたりする。要は、逃げてるのだ。今日の一日がしんどいと分かっているからこそ、始めるのが怖いのかもしれない。
事務員が来るまでの孤独な1時間
うちの事務員さんが出勤してくるのは9時過ぎ。それまでの1時間が地味に長い。静かなのはありがたいが、誰とも話さず、相談もできず、ただ机に向かって書類と向き合うだけの時間。電話が鳴れば出なきゃいけないし、来客があれば自分が対応する。孤独というより、「全部自分でやらなきゃ」が重くのしかかる。たった1時間が、1日で一番つらい時間かもしれない。
電話の音が心に刺さる日
着信音が鳴るたびに、体がビクッとするようになったのは、いつからだろう。昔は「仕事のチャンス」と前向きに捉えられていた電話が、今では「トラブルの予感」として感じられてしまう。内容が想像つくものならまだマシで、相手が誰か分からない着信は特にストレスが大きい。「また何か起きたのでは?」と勝手に不安になる。それでも出ないわけにはいかないのが自営業のつらいところ。
鳴るたびに仕事が増える現実
電話って、大体が「ちょっとだけ確認したいんですけど…」から始まる。ところが、その「ちょっと」が30分の相談になり、終わった後には3通のメールと2件の書類作成が追加されている。電話一本で仕事が倍になるなんてザラだ。しかも、相手にはその自覚がないからこそ、対応する側は余計に疲れる。「電話ひとつで予定が崩れる」。これ、司法書士あるあるだと思う。
お客さんの「ちょっと聞きたいだけ」
「ちょっと教えてほしいだけなんですけど…」という入り方、実は結構トラウマになっている。「無料でどこまで答えるべきか」ってすごく難しいラインだと思う。親切心で答えても、そのまま無料相談に発展してしまうこともある。断るのもエネルギーがいるし、かといって受け続けると消耗する。結局、損な役回りをしてしまうのが常だ。
出ないという選択肢がない自営業
疲れていても、電話に出ない選択肢はない。仮にスルーしたら、「連絡がつかない」と悪評につながるのが怖い。クチコミって、良い評価よりも悪い評価の方が広まりやすいから厄介だ。だからこそ、どんなに疲れていても、出なきゃいけない。「今日はしんどいから出たくないな」と思っても、それは許されない。そういうプレッシャーが積み重なって、さらに疲れていく。
それでもやめない理由
じゃあ、なぜこんなに疲れているのに辞めないのかと聞かれたら、それはやっぱり「感謝」があるからだ。お客様からの「本当に助かりました」という言葉、わざわざ手土産を持ってきてくださる方、感謝の手紙をくれる方…。そんな些細なことに、心が救われる瞬間がある。毎日がしんどくても、その一言だけで「また頑張ろう」と思えるから不思議だ。結局、人の気持ちが自分を支えてくれているのかもしれない。
感謝の一言に救われる瞬間
先日、登記のご依頼をされたお客様が帰り際に「他のところも検討したけど、先生にお願いしてよかった」と言ってくださった。その一言に、本当に泣きそうになった。普段は当たり前のようにこなしている業務でも、こうして誰かの役に立っているんだと実感できる瞬間は、やっぱり何物にも代えがたい。仕事に誇りを持てる瞬間がある限り、辞めようとは思えない。
「あなたに頼んでよかった」の重み
数年前、夜遅くに対応した相続の件で、「夜分遅くにも関わらず、本当にありがとうございました」と手書きの手紙をいただいたことがある。何度も読み返しては、疲れた夜にこっそり泣いた。そんな経験があるから、しんどくても、また頑張れる。たとえ自分が「ちょっと疲れた司法書士」でも、誰かにとっての「頼れる存在」でありたいと思う。
自分を必要としてくれる人がいる限り
この仕事は大変だし、孤独だし、報われないと感じる日も多い。でも、自分を必要としてくれる人が一人でもいるなら、それだけでやる意味があると思える。正直、女性にもモテないし、独り身で寂しい夜も多い。でも、仕事を通じて誰かの力になれているなら、それはそれで幸せなのかもしれない。疲れたときは、そうやって自分を励ましている。