たった1日のズレが引き起こした悲劇
法定相続情報一覧図――この制度には本当に助けられてきました。戸籍を束ねる手間が一気に減るし、登記だけでなく金融機関にも出せる。ただ、だからこそ、添付書類の「正確さ」が問われる。先日、ほんの1日違いで法務局から突き返された出来事がありまして……。これが地味に、精神的ダメージが大きかったんですよ。
事務所で起きた「よくある」書類トラブル
日々の業務に追われながら、書類チェックにも追われる。事務員と二人三脚でなんとかまわしているけれど、ちょっとした油断が命取りになります。とある依頼で必要だった戸籍の附票、すでに取得済みと思い込んでいたんです。
事件はいつも慌ただしい午前中に
その日は朝から相談の電話が立て続けで、合間を縫って法定相続情報の提出準備。封筒に書類をまとめながら、「あれ、附票これでよかったっけ?」と一瞬だけよぎった不安。でも、まぁいいかと手続きを進めたんです。後になって「あの時やっぱり……」という後悔ほど、後を引くものはありません。
添付書類の確認、していたつもりだったのに
確認はしていたんですよ。チェックリストもある。でも「日付」の欄はなんとなく流していた。まさか「発行から3ヶ月以内」でなくてはならないとは、うっかり見落としていたんです。取得日がちょうど4ヶ月前。ほんの1日の差で、再取得となりました。
「発行日が1日違う」だけでアウトの現実
日付が1日違うだけ、でもルールはルール。融通がきくと思っていた自分の甘さが悔やまれます。何より、依頼者に説明するのがつらい。「再取得で少しだけお時間をいただくことになります」って、言い訳に聞こえてしまうのではと。
登記官からの冷たい一言
「この附票は期限切れですね、差し替えてください」――事務的な口調で淡々と言われたその瞬間、心の中で「うわぁ」と声が出ました。怒られたわけじゃない。でも、書類1枚のことで、全部やり直しのプレッシャーが襲ってくるのが司法書士という仕事なんです。
依頼者には言えないミスの中身
「期限切れなので再取得します」と伝えるだけで、本当は胃がキリキリ痛む。依頼者にはプロとして映っているのに、こんな初歩的なミス……と思うと、情けなくて仕方ない。かといって「1日違いなんです」なんて言い訳めいたことも言えず、ただ平謝りするしかありません。
信頼を損ねる恐怖と自己嫌悪
依頼者との信頼関係を壊したくない、それが一番。でも、自分の不注意でそれが崩れてしまったら……そう思うと夜眠れなくなることもあるんです。ミスをした自分への怒りと、また同じことが起きたらどうしようという不安で、気持ちがどんよりしてしまいます。
なぜこのようなことが起きるのか?
根本的には、制度の硬直さと、現場の負担のギャップが大きすぎるんです。ミスを防ごうとしても、確認ポイントが多すぎて人間の注意力では限界があります。だからといって「見逃してくれ」とは言えないのが、司法書士の立場なんですよね。
システムに救われず、人にしわ寄せ
法定相続情報制度自体は素晴らしい。でも、それを使う現場は人力任せ。マイナンバーと連動した自動確認とか、少しでも手間を減らす仕組みがあればな…と思わずにいられません。今のままでは、司法書士の神経がどんどん削れていくだけです。
「融通がきかない」仕組みへの本音
柔軟に対応してくれる登記官もいますが、基本的にはNGはNG。誰かが一度でも例外を認めたら全体が崩れるというのも分かるけど、それでも「1日ぐらい…」という気持ちはやっぱり出てきますよ。真面目にやってる側が一番つらい仕組みって、どうなんでしょうか。
事務員との連携にも限界がある
事務員さんには感謝しかないけど、やっぱり限界はあります。人手も時間も足りない。確認作業も多岐にわたるし、チェックリストを何重にしても、抜ける時は抜ける。それを全部「司法書士の責任」とされるのも、正直しんどいです。
人手不足と確認作業のバランス
小規模事務所にとって、人員配置の余裕なんてありません。書類の正確性と業務スピード、どちらも求められるけれど、実際には両立が難しい。ひとつひとつ慎重に対応するほど、別の案件が遅れてしまう。常に綱渡りの毎日です。
司法書士の「書類リスク」はなぜ減らないのか
登記の世界では「ミス=信頼失墜」に直結します。たとえ1件だけでも、それがクレームに繋がれば致命的。だからこそ、書類リスクへの神経のすり減り方は、他の士業より深刻かもしれません。
完璧を求められる仕事のつらさ
「間違えても大丈夫」と言われる職業ではありません。完璧が前提。100件完璧にやって、1件だけミスをしたらそれで「信用できない」と言われかねない。これ、けっこうメンタルやられますよ。
「1日違い」を見落とした自分を責める日々
寝る前に「あの時もう一回だけ確認しておけば…」と何度思ったことか。こういう小さなミスって、後からじわじわ効いてくるんですよね。周りからは些細に見えるかもしれないけど、本人にとってはかなりのダメージです。
この業界にありがちな“あるある”
ミスをすれば、時間も費用も自腹で対応。しかも報酬には反映されない。だから「割に合わないな」と感じる瞬間もあります。でも、「それが仕事」と割り切るしかないんですよね。
書類を再取得するコストと時間の無駄
附票1通といっても、請求して届くまで数日かかることもある。再取得に伴って委任状も再度必要になる場合もあって、本当に手間が増える。これ、結構な「見えない負担」なんです。
報酬に反映されない「見えない苦労」
どれだけ追加で動いても、「もともとお願いしてた報酬」のまま。依頼者は再取得の背景なんて知らないし、それを説明して報酬を上乗せするのも気が引ける。結局、自腹で対応して、心だけすり減っていくのが現実です。
同じミスを繰り返さないために
こんな失敗をしたからこそ、改善は必要です。同じことを繰り返さないために、地道な工夫をしていくしかありません。そういう小さな積み重ねだけが、自分を少しずつ守ってくれます。
確認ルールの見直しでできること
チェックリストを一段細かくしました。日付を「取得日」と「提出予定日」で二重に確認するように。手間は増えましたが、安心感は確かに違います。慣れた頃が一番怖いので、慢心しない仕組みが必要です。
日付チェックリストをつくってみた
「取得日が3ヶ月を超えていないか」という欄を追加して、毎回確認するようにしました。特に提出日ギリギリの書類は、再取得のタイミングも意識するように。小さな工夫ですが、気づきやすさは格段に上がりました。
自分を責めすぎないために
ミスは誰にでもあります。でも、それを引きずりすぎると、自分自身が壊れてしまう。この仕事を長く続けるためには、「反省しすぎない力」も必要なんだと思うようになりました。
司法書士にも「弱音を吐ける場」が必要
同業の友人と話すだけで、少し心が軽くなる。愚痴を言える相手がいるだけで、「自分だけじゃない」と思えて救われるんです。もっと気軽に弱音を吐ける空気、業界全体に広がってほしいですね。
最後に:それでもこの仕事を続ける理由
大変なことばかり。でも、それでも続けたいと思える瞬間がある。それが、この仕事の不思議な魅力です。
依頼者の「ありがとう」が支えになる
書類が通ったときの「ありがとうございます、助かりました」という言葉。それだけで、報われた気持ちになります。人の役に立てている実感が、この仕事の醍醐味なのかもしれません。
失敗が次の精度を高めてくれる
失敗はつらい。でも、それを糧にして次はミスを防げたら、それだけで意味があると思うようにしています。愚痴もこぼしながら、少しずつ前に進む。そんな姿を、これから司法書士を目指す人にも見せていけたら嬉しいです。