地方司法書士、今日も銀行で心を折られる
銀行対応というのは、司法書士業務の中でも特に忍耐を求められる業務の一つです。特に地方では、顔見知りであるはずの担当者すら異動で消えており、毎回のように一から説明をする羽目になります。私も開業して十数年、何度この「心が折れる瞬間」に出会ってきたことか。今日もまた、その記録が増えてしまいました。
予約しても待たされるのが日常
銀行に行く際には、なるべく無駄な時間を省くために事前に予約を入れています。ところが、予約時間に行っても「少々お待ちください」のまま15分、30分と平気で待たされるのです。こちらはその時間に他の依頼者とのアポも抱えている身。時間を守るのが仕事の基本では?と思わずにはいられません。
「担当者が変わりますね」の一言で振り出しに
ようやく順番が来たと思ったら、「前任者は異動になりまして…」と新しい担当者が出てくる。名刺を差し出しつつも、こちらの案件の内容はまったく把握していない状態です。何のための引き継ぎでしょうか?事前に送った資料も「初めて見ました」と言われ、愕然とすることもしばしばです。
引き継ぎゼロの現場に毎度ため息
私は一度、住宅ローンの抹消登記に関して、2週間前に説明した内容を、同じ支店で再び説明し直すという経験をしました。しかもそのときは、引き継ぎメモすら残っておらず、ゼロからのやり直し。どっと疲れました。司法書士側が「前に話したでしょ」と言っても、それは通用しません。
「あれ、そんな依頼受けてませんけど?」の衝撃
これはもう冷や汗が止まらなかった案件です。確かに銀行からの依頼を受けて動いていたはずなのに、現場で「その手続き、うちでは扱ってません」と言われたのです。後で調べたら、別支店との連携ミス。でもその場ではこちらが疑われたような雰囲気になり、本当に胃が痛みました。
書類の出し直し地獄、なんでこうなる
「この書類では受付できません、もう一度お願いします」…そんな言葉を何度聞いたことか。しかもその書式、つい先月使ったばかりのはず。それが急に「最新版でお願いします」と突き返される。もはや地獄。正直、何のための書類ルールか、わからなくなります。
フォーマットの変更、事前に教えてくれ
書式が変更されること自体は仕方ないとしても、その情報がこちらに届くのが遅すぎる。FAXもメールも来ていないのに、いきなり「この書類は古いですね」と言われることがあり、もうこちらとしては怒りというより呆れの境地です。現場で何度も詫びる事務員の姿が不憫でなりません。
「別支店ではOKでしたけど?」は通じない
一番理不尽なのがこれ。A支店でOKだった書類を、B支店では「受け付けられません」と返される。統一されていないルールに振り回される司法書士たちは、もはや誰を信じればいいのか。支店ごとの「ローカルルール」に頭を抱えるばかりです。
忙しいのに…時間のロスが一番こたえる
司法書士の仕事は、予定が詰まりに詰まっているものです。1時間の遅延が、1日のスケジュール全体を押し潰すようなことも珍しくありません。そんな中での銀行対応の手戻りや待ち時間は、精神的にも肉体的にも大きなダメージとなります。
他の依頼を後回しにする罪悪感
銀行対応に時間を取られたせいで、他のクライアントに返事が遅れたり、登記の準備が後ろ倒しになったりすることもあります。そのたびに「ごめんなさい」と頭を下げる。別に自分が悪いわけじゃないのに…そう思いつつ、罪悪感は消えません。
事務員さんにも負担がいくつも重なる
私の事務所では、事務員さんが一人です。銀行からの連絡や書類の修正対応、再提出の準備など、すべて彼女に任せているわけにもいかず、私自身も動きますが、それでも彼女の疲弊は見ていてわかります。ときには申し訳なさで夜中に眠れなくなることもあります。
なぜこうも連携が取れないのか
銀行の担当者と司法書士の間には、どうにも越えられない「壁」のようなものを感じることがあります。何度もやり取りしているはずなのに、まるで初対面のような扱いを受ける。その原因の一つが、支店ごとの対応の差と、縦割りの組織体制です。
支店間で対応がバラバラすぎる問題
「支店ごとに対応が違う」と言われても、こちらは全国的な手続き基準に基づいて仕事をしているのです。なのに、支店AではOK、支店BではNGでは、私たちは対応しようがありません。せめて、全国統一の基準を徹底してほしいと願うばかりです。
「上に確認します」の壁の厚さ
担当者に何か尋ねると「確認します」と言われてそのまま1時間…。「その場で答えられる人がいない」ことが、どれだけ現場に影響しているか、銀行側にはもっと理解してほしいところです。こちらは1分1秒が勝負のときもあるのですから。
それでも銀行に頼らざるを得ない現実
文句を言いながらも、私たち司法書士は銀行と付き合わざるを得ません。とくに抵当権の抹消や設定業務では、銀行との連携は避けられません。だからこそ、心が折れても、次の日にはまた銀行に足を運ぶ。そんな繰り返しの日々です。
登記手続きとの関係性
銀行が登記情報のキーを握っていることも多いため、こちらがどんなに急いでも、銀行の処理が止まっていれば何も進みません。登記完了の期限があるなかで、その待ち時間がいかに恐ろしいか、分かる方には分かってもらえるはずです。
銀行対応からは逃れられない宿命
どんなにストレスが溜まっても、銀行対応は司法書士の仕事の一部。逃げたくても逃げられません。だからせめて、自分なりの「心の整え方」を持っておくことが大切なのかもしれません。私は最近、昼休みに甘いあんぱんを食べることにしています。
精神を削られる業務の中でどう自衛するか
どうしても銀行対応は避けられない。でも、心まで削られてしまっては続きません。だからこそ、自衛策が必要です。自分なりに折れた心を修復し、何とか明日も事務所を開ける。そんな日々の積み重ねです。
「期待しない」のが最強の心構え
最近は、あまり期待をしないようにしています。「連絡が来るだろう」「きっと準備してくれているだろう」…そんな期待は、裏切られると大きなストレスになります。最初から「トラブルは起こるもの」と思っておく方が、ずっと楽です。
愚痴を言える仲間の大切さ
同業の友人と、仕事終わりに愚痴を言い合うことも大切です。お互い「うちもそうだよ」と笑い合えるだけで、少しだけ救われた気持ちになります。ひとりで抱え込むより、吐き出す場所を持つこと。これも大事な自衛策です。
地方こそ横のつながりが命綱
地方ではとくに、同業者同士のネットワークが重要です。情報共有だけでなく、精神面の支えにもなります。つらいことがあっても、隣の事務所の先輩が「俺も昨日やられたよ」と笑ってくれると、それだけでまた頑張れます。
司法書士を目指す方へ伝えたいこと
これから司法書士を目指す皆さんに言いたいのは、「華やかなイメージだけで選ばないでほしい」ということ。実務には、こういった見えないストレスとの戦いがあることも、ぜひ知っておいてもらえたらと思います。
銀行対応は「業務の華」ではない
法務局でのやりとりや、登記の完成に注目がいきがちですが、実際には銀行や役所との折衝が大部分を占めます。しかもそれは、地味で報われづらく、ミスのリスクも高い仕事です。心構えがあるだけで、対応力は変わります。
自分の中で「割り切り力」を育ててほしい
理不尽なことも、予定通りにいかないことも山ほどあります。それでも「まあ、そういうものだ」と割り切れる力が必要です。精神的に安定していなければ、この仕事は続きません。心が強い人が、長くやっていける職業です。