恋愛経験がないまま司法書士になりました
恋愛と無縁のまま司法書士になった理由
恋愛経験がないまま司法書士になった、というと驚かれることもあります。でも、本人からすると、それが当たり前すぎて逆にどう話せばいいかわからない。学生時代から、恋愛を後回しにしてきた結果、気づけばこの歳になっていたというだけの話です。周りは家庭を持ち、子どもの話題で盛り上がる中、私はいつもひとりで会話の輪の外にいる。司法書士という職業の責任感が恋愛のチャンスを押し流してしまった、そんな気もしています。
高校時代は野球一筋 恋愛なんて考える暇もなかった
僕の高校生活は、汗と土とグローブの匂いに染まっていました。朝練から始まり、放課後は日が暮れるまでグラウンド。甲子園を夢見て、ひたすら白球を追いかけていたあの頃、クラスの女子と話すことなんてほとんどなかった。バレンタイン?試合前の調整日としか思っていなかった。周りが恋愛を楽しんでいる姿に、どこかで憧れはあったけれど、「自分には縁のない話だな」と諦めていた部分もあるんです。
グラウンドにすべてを置いてきた日々
夏の大会で負けたあの日、泣きながら整列したことを今でも覚えています。全力を出し切ったと思っていたけれど、どこかで「これで俺の青春が終わった」と感じた瞬間でもありました。周囲が次の進路に向けて動き出す中、僕は抜け殻のようになってしまって、恋愛なんてエネルギーは残っていなかった。試合には仲間がいたけれど、私生活では孤独との戦いでした。
青春のページに「彼女」の欄は空白のまま
卒業アルバムの寄せ書きには、「◯◯ちゃんと付き合ってたよね」とか「初デート楽しかった!」なんて甘酸っぱい言葉が並んでいたけれど、僕のページは淡白な「お疲れ!」ばかり。別にそれが嫌だったわけじゃないけど、どこかで「自分にはそういう物語がなかったんだな」と思い知らされた瞬間でした。あの空白は、今でも心のどこかで埋まっていない気がします。
司法書士という仕事を選んだ瞬間に何かが決まった気がする
大学に入って法律を学び始めた頃、「手に職をつけたい」という思いから司法書士を目指すことにしました。気づけば朝から晩まで六法とにらめっこ。恋愛どころか、人と食事する時間すら削っていました。まるで“恋愛免疫”が完全に失われていくような感覚すらあった。試験に受かって喜んだのも束の間、そこからの人生は、仕事という名前の迷路に入り込む始まりだったのです。
目指す道に恋愛の余白はなかった
試験合格後も補助者としての勤務、独立準備、開業後の営業と、毎日が目まぐるしく過ぎていきました。夜遅くまで残業して、終電で帰って、シャワーを浴びて寝るだけの生活。気づけば1年、2年、5年と過ぎていった。「余白」なんて言葉は、僕のスケジュール帳には存在していなかったんです。
「資格取るまでは頑張る」そのまま十数年が過ぎた
「落ち着いたら考えよう」「今は忙しいから」――そんな言い訳を繰り返していたら、もう45歳です。気づけば恋愛に不器用どころか、恋愛そのものが「どうすればいいか分からない対象」になってしまっていた。人とちゃんと向き合う勇気が、自分には足りなかったのかもしれません。
事務所を構えてからの孤独と忙しさ
独立して地方で事務所を構えた時、「ようやく自由になれる」と思っていました。でも現実は、すべての責任が自分に降りかかってくる毎日。事務員さん一人を雇ってはいるけれど、結局のところ自分が動かなければ何も回らない。休日?いつ取ったか覚えていない。そんな毎日を続けていると、人としての潤いがどんどん失われていくんです。
仕事が増えても生活が豊かになるわけじゃない
売上が上がるのは嬉しい。けれど、増えるのは責任とプレッシャー。相談者の数が増えるほど、自分の時間がなくなっていく。夕食はコンビニ弁当。テレビのニュースは流し見。会話するのは事務員さんと依頼者だけ。仕事の量=人生の豊かさ、ではないと痛感したのは、身体が悲鳴を上げるようになってからでした。
独立すれば自由になれると思っていた
「社長は自由でいいですね」と言われたことがあります。思わず苦笑いしかできなかった。自由どころか、誰よりも不自由な生活を送っているのは自分なんです。いつかはゆっくり旅行でも…と思いながら、もう何年もスーツケースに触れていません。
現実はひとりブラック企業だった
自分で自分を追い詰める、そんな働き方になっていました。誰にも相談できず、ひとりですべてを背負い込み、気づけば体調を崩す寸前。恋愛なんて贅沢の極み。そんな風に思い込んで、さらに距離を置いてしまっていたんです。
女性との接点がない日常
事務所でのやりとりは仕事が中心。事務員さんとは最低限の会話。飲みに行く相手もいなければ、誘われることもない。恋愛以前に、誰かと日常を共有する場面が極端に少ないのです。司法書士という職業柄、信頼はされても親密さにはつながらない。どこかで「この人は堅そうだな」と思われてる気がして、それもまた自信をなくす要因になっています。
お客様との距離感と人としての距離
業務では、登記や相続の相談でいろんな人と会います。でも、それは「先生」としての私であって、本来の自分とは少し違う。信頼関係は築けても、それ以上踏み込む関係にはならない。人と人としての関係性が築けず、心の距離が開いたままです。
婚活アプリの画面を開いたまま閉じた夜
思い切って登録してみたこともありました。でも、プロフィール欄に「司法書士」と書くと、逆に引かれたり、「真面目そうすぎて怖い」と言われたことも。やっぱり自分には無理だなと感じて、そっとアプリを閉じて、いつも通りの夜を過ごしました。
今からでも遅くないと思いたい
このままひとりで生きていくのも悪くはない。でも、どこかで誰かと笑い合いたいと思う自分もいます。恋愛だけが人生じゃない。でも、恋愛があったらもう少し柔らかい日々があったのかもしれない。そんなことを考える夜もある。遅いなんて誰が決めたんだ、そう自分に言い聞かせながら、今日も依頼者の話を丁寧に聞く。それが、今の僕にできる誠実さの形です。