遺言書に書かれていた一言に胸が詰まった日

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遺言書に書かれていた一言に胸が詰まった日

遺言書に書かれていた一言に胸が詰まった日

司法書士という仕事をしていると、淡々と書類を扱う日々が続きます。感情を動かしている暇なんて、正直あまりありません。けれど、ある日ふとした一文に心を奪われることがあるんです。「これはただの手続きじゃない」。そう思わされたあの日のことを、今日は綴ってみようと思います。誰にも言えなかったけど、あの時は本当に涙が出そうでした。

日常業務の中で起きた“想定外”の瞬間

いつも通りの遺言書確認のはずだった

その日も普段と変わらず、朝から書類の山を片付けていました。新しく依頼された遺言書の確認作業。数件目の封筒を開けたとき、それは始まりました。手続き的に言えばよくある「自筆証書遺言」でしたし、内容も不動産の相続に関するもの。正直、流れ作業のように読み進めていたんです。

あの一文が目に飛び込んできたとき

「ありがとう。俺の人生は、そんなに悪くなかった。」
そう書かれていた最後の一文に、手が止まりました。何かすごく人間的な、そして重い言葉。いろんな想いが詰まっているようで、しばらくページをめくることができませんでした。気づけば息を呑んで、そのまま机に突っ伏していました。こんなにも感情を揺さぶられたのは、久しぶりでした。

司法書士としての感情と職業的な距離感

感情を切り離すべきなのか?

仕事として見るなら、我々は「登記」や「相続手続き」を正確に進めることが役割です。感情を挟むと効率が落ちるし、時にはミスに繋がります。でも、遺言書というのはその人の“最期の言葉”であることも多く、どうしても心が反応してしまうことがあるんです。特に、その人の人生が垣間見えるような言葉が書かれていると…ね。

書類の中に人間の人生がある

形式だけを見ていれば、ただの紙切れかもしれません。でも、その裏には一人の人間の人生、家族との関係、悩みや葛藤、想いが詰まっています。それを理解しないまま「仕事」として処理してしまうのは、正直、どうなんだろうとも思うわけです。効率と向き合う日々の中で、時にこうした“揺れ”があるのもこの仕事の特徴かもしれません。

「書かれていた一言」が意味したもの

心に残る言葉の重さ

「俺の人生は、そんなに悪くなかった」――それは、後悔も希望も両方含んだような言葉でした。完璧じゃない人生だったかもしれない。でも、それなりに満足して終えることができたんだろうなと。私も、いつかそんなふうに言える日が来るんだろうか。思わず、自分の人生を振り返ってしまいました。

依頼人の背景に想像が追いつかないとき

すべての遺言書に深いドラマがあるわけではありません。でも、時折こうして、想像のはるか上をいく人生の重みを突きつけられると、こちらの“読み解く力”の無さを痛感します。相手の人生を完全に理解することなんてできない。だけど、それでも少しでも想像しようとすることが、せめてもの礼儀のように思えてきます。

忙しさに流されて忘れていたもの

人の死と向き合うということ

司法書士って、法律の専門家として冷静な判断を求められます。でも、相続や遺言書の手続きというのは、言ってしまえば“誰かの死”の上に成り立っている業務です。日々の忙しさに追われる中で、そんな当たり前のことを忘れてしまいそうになるんですよね。本来ならもっと丁寧に、静かに向き合わなければならない場面だったはずなのに。

感情を処理しきれない夜もある

夜中、ふとした拍子に思い出してしまうことがあります。あの依頼人の顔は知らないけれど、きっと不器用だけどまっすぐな人だったんだろうな、とか。私たち司法書士は、“人生の終わり方”に少しだけ関わってしまう職業なのかもしれません。そう思うと、どうしても胸が詰まって、眠れない夜もあるんです。

それでも業務は待ってくれない

目の前の案件がどんどん積み上がる

感情に揺れていても、締切は変わらない。次々と案件は舞い込んできて、今日中に仕上げないといけない書類が机の上に山積みになります。感情と現実の狭間で揺れる時間なんて、正直なかなか取れないんです。だから余計に、あの一言が心に残って離れないのかもしれません。

事務員にも見せられない「疲れ」の本音

うちは小さな事務所で、事務員さんが一人います。彼女もよく頑張ってくれているから、こちらがしんどそうにしているわけにもいかない。つい「大丈夫」と笑ってしまうけれど、正直、けっこう限界近い時もあります。愚痴りたくても愚痴れない。そんな時、あの依頼人の「そんなに悪くなかった」という言葉に救われる気がするんです。

司法書士を目指す人に伝えたいこと

この仕事は、ただの手続きじゃない

司法書士の仕事は、法的手続きを進めるだけの冷たいものに見えるかもしれません。でも、実際には人間の「生きた痕跡」と関わる仕事でもあります。効率や正確さばかりが求められる中で、時に心が折れそうになることもある。でも、それでも人間らしさを忘れないことが、この仕事に必要な資質だと思います。

覚悟と柔らかさ、両方が求められる

法律知識だけではやっていけない仕事だと、改めて実感しています。相手の事情をくみ取る想像力、感情に潰されないタフさ、その両方が必要です。それでもやりがいは確かにある。だから、司法書士を目指す人には、覚悟をもって、でも優しさを忘れずに進んでいってほしいと思います。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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