「忙しいんですよね?」が地味につらい
この一言、日常的によく投げかけられるフレーズですが、なぜか胸にチクリと刺さるんですよね。地方で一人で事務所を切り盛りしていると、誰かに「お忙しいですよね?」と笑顔で言われるたびに、心の奥で「うーん、忙しいけど、なんて返せば角が立たないんだろう」と頭をフル回転させてしまいます。言葉自体に悪気はないのに、なぜこんなにも返答に悩むのでしょうか。
言われるたびにモヤモヤする理由
忙しいのは事実。でも認めたくない
実際問題、忙しいのは事実です。でも、それをあっさり「はい、忙しいです」と認めるのって、なんだか自分のキャパが狭いと認めるみたいで嫌なんですよね。さらに、「忙しい」と言うことで相手に遠慮させてしまったらどうしよう、と考えてしまう。以前、お客様に「お忙しいですよね?」と聞かれて「まあ、ほどほどです」と答えたら、「ならすぐお願いしてもいいですか?」と即反応されて冷や汗をかいたことも。正直、忙しいことを隠したいのに、隠すと損する。難しいものです。
本音は「余裕がないことを悟られたくない」
「忙しい」って、ある意味で「余裕がない」と言っているようなものです。プロとして依頼を受ける立場として、余裕をもって仕事をしているように見せたい。でも実際は、目の前のタスクに追われて、事務員さんにもつい声を荒らげてしまうような日もある。そんな姿を見せるのが恥ずかしい。だからこそ、「忙しいですよね?」という言葉に、無意識に身構えてしまうのかもしれません。
この一言がもたらす心理的プレッシャー
余裕を見せるべき?正直に言うべき?
一番困るのは、どう返しても気まずくなること。「忙しいです」と言えば遠ざけられそう。「そんなことないですよ」と言えば、自分の首を絞めることになる。つい中途半端に「まあまあですね」とか曖昧な返しをしてしまうのですが、それもなんだか嘘っぽい。どっちに転んでも後味が悪いのです。こういうとき、うまく笑って返せる人が本当にうらやましい。
「忙しい=対応できない人」レッテルの不安
もう一つの悩みは、「この人に頼んでも無理そう」と思われることへの恐怖。司法書士の仕事って信頼で成り立っている部分が大きいので、「忙しくて手が回らない人」と認識されることは避けたいんです。事務所の規模が小さい分、ひとつひとつのご依頼に対して丁寧に向き合いたいと思っているのに、逆にその思いが空回りしてしまうことも多くて。ジレンマです。
実際、司法書士ってそんなに忙しいのか?
「忙しいって言っても、そんなにやることあるの?」と思われがちですが、やることは山ほどあります。しかも種類がバラバラで、ひとつひとつが意外と神経を使う作業ばかり。外からは見えづらいからこそ、「大変そうに見えない」ことで誤解されやすいのも事実です。
地域で一人事務所を構えるリアル
誰も代わりがいないというプレッシャー
私のように地方で一人事務所をやっていると、何かあったときに「代打」がきかないのが最大の不安です。体調が悪くても、子どもの学校行事があっても、全部自分で調整しないといけない。事務員さんはとても頼りになりますが、やはり最終的な責任は司法書士にかかってくるので、精神的な負担は想像以上です。
事務員一人のありがたみと限界
事務員さんがいるだけでもだいぶ救われています。電話応対や簡単な書類の下処理などを任せられるので、自分は実務に集中できます。でも、彼女も人間ですし、できることには限りがあります。「今日は急ぎの登記が重なってる」とか「役所とのやり取りが詰まってる」とか、イレギュラーが重なると事務所内がてんてこまいになります。毎日が綱渡りです。
「暇そう」と思われがちな業務の誤解
書類作成だけが仕事じゃない
司法書士の仕事=書類を作ってハンコ押すだけ、と思っている人が意外と多い。でも実際には、依頼者の意向を丁寧に聞き取り、法律的に問題がないかを精査し、関係各所とのやりとりをし、最終的に書類をまとめるという、見えない工程が山ほどあります。ときには調整役やトラブル仲裁まで担うこともあるんです。
日常業務に潜むタイムトラップたち
業務の合間に来る電話、突然の来訪者、ネットがつながらない、プリンタの紙詰まり……。こういう“タイムトラップ”が積み重なると、1日が一瞬で終わってしまいます。しかもそういう日はなぜか決まって「今週中に登記できますか?」という急ぎ案件が飛び込んでくる。不思議ですね。
「忙しい」と言えない人にありがちな悩み
忙しくても「忙しい」と言えない。それは優しさの裏返しであり、責任感の強さの現れでもあります。でも、そうやって無理を重ねていると、心も身体も疲れてしまいます。
断る罪悪感が根っこにある
真面目な人ほどNOが言えない
私もそうなんですが、「断る=悪いこと」だと無意識に思ってしまうんですよね。「他の人も頼りにしてくれてるから」「これくらいなら受けても大丈夫かも」と自分を説得してしまう。でも、それが積み重なると、手一杯になって結局相手に迷惑をかけてしまう。自己犠牲では仕事は回りません。
人付き合いと自己防衛のはざまで
お客様・関係者に気を遣いすぎる
地域密着型の事務所だと、お客様との距離が近くなりがちです。だからこそ「断りづらい」「悪く思われたくない」と気を遣ってしまう。結果として、キャパオーバーになっても笑顔で引き受けてしまうことが多い。でもそれって、結局自分を追い詰めるだけなんですよね。
気まずさを減らす“やんわり返答術”
「忙しいんですよね?」という質問に対して、気まずくならない返し方をいくつか持っておくと便利です。とくに、ちょっと笑いを交えた返答は相手の緊張もほぐしてくれます。
「ありがたいことに…」で返すテクニック
私がよく使うのが、「ありがたいことに、なんとか回ってます」という返し方。これなら謙虚さもにじむし、余裕があるようにも聞こえる。言葉ひとつで印象は変わります。
あえて笑いに変えるひと言を用意しておく
たとえば「忙しいですよ~、でも誰か分身を開発してくれたら助かるんですけどね(笑)」みたいな一言を添えるだけで、空気がやわらぎます。冗談っぽくしながらも、自分の大変さを伝えることができるのでおすすめです。
それでも本当に限界なときはどうするか
どうしても「もう無理!」となることもあります。そんなときは、無理に笑って返すよりも、正直に状況を伝えた方がいい場合もあります。
事務所として「余裕がない」を伝える勇気
「今ちょっと立て込んでいまして、〇日以降でしたら対応可能です」と、はっきり言うことで信頼が逆に高まることもあります。誠実さは、時に断ることの中にも表れます。
「忙しい」と言える仕組みを作る
ウェブサイトに「現在の対応可能日」や「繁忙期のお知らせ」などを掲載することで、対外的にも伝えやすくなります。仕組みで言いづらさを解消するのもひとつの手です。
同じように悩んでいる司法書士さんへ
このモヤモヤを抱えているのは、あなただけではありません。私自身、いまだに返答に迷う日々です。でも、ちょっとした言葉選びや意識の持ち方で、気まずさを笑いに変えることはできると思っています。
「忙しい」と言っても、誰も嫌わない
むしろ本音で話せる関係の方が、お互いにとって心地いいはず。無理をして自分をすり減らすより、素直に状況を伝えることも大切です。
一人で抱え込まないために必要なこと
誰かに相談すること、仕組みでカバーすること、そして少し笑いを忘れないこと。忙しい日々だからこそ、自分を守る言葉を持っておきたいものです。