「暇そうですね」と言われた瞬間の心の中
「司法書士って、暇そうですよね」――この言葉、何度聞いたかわかりません。一見何気ない一言ですが、言われた側としては、どこか心をざわつかせる響きがあります。笑って返すこともありますが、内心はモヤモヤ。何も知らずに言われるからこそ、その言葉が意外と重く感じるんです。
冗談か本気か、どっちにしても刺さる
「いや〜先生って暇そうでいいですよね!」と、笑いながら言われたことがあります。でも、そのとき私の机の上には登記申請書類が10件、裁判所への書類も2件、顧客とのメールも未返信が山積みでした。冗談のつもりでも、現場を知らない人に軽く言われると、なんとも言えない虚しさがあります。
一言に込められた、無理解と距離感
この一言は、単なる印象というより、「士業=偉そうにしていて暇で儲かってる」みたいなステレオタイプの反映なんでしょうね。話している相手との距離がぐっと遠く感じる瞬間でもあります。「この人は、俺たちの仕事に関心すらないんだな」と感じてしまいます。
世間のイメージと現実のギャップ
司法書士という仕事に対する世間のイメージと、実際の業務内容には大きなギャップがあります。名前は聞いたことがあっても、具体的に何をしているのかまでは知られていない。それが「暇そう」という誤解に繋がっているんだと思います。
司法書士=登記屋さん、で止まっている人が多い
多くの人は、「司法書士=不動産登記の人」でイメージが止まっています。でも実際は、相続、遺言、裁判書類の作成、成年後見、会社設立など、業務は多岐にわたります。しかも、それぞれが複雑で、慎重さと正確性を求められる仕事ばかりです。
テレビにも出ない、ドラマにもならない地味な職業
司法書士はドラマになりにくいんですよ。検察官や刑事のような派手さもなければ、医者や弁護士のように感情的なシーンも少ない。書類と向き合い、人と向き合う毎日。だからこそ世間からの注目も少なく、誤解されやすい仕事だと思います。
実際の一日:忙しいのに“暇そう”に見える理由
朝から晩まで動き回っていても、静かに座ってパソコンを打っている姿だけを見れば、「暇そう」と見られてしまうのかもしれません。でも、その裏側には、見えない仕事がたくさんあるのです。
書類の山、電話、来客…外から見えない地味な戦い
一日中デスクに座っている日もありますが、それは書類作成が終わらないから。しかもその間に電話も鳴るし、飛び込みの来客もある。マルチタスクどころの話じゃありません。特に月末や相続手続きが重なると、昼ごはん抜きも珍しくないです。
午前中だけで疲れる打ち合わせ地獄
午前中だけで3件打ち合わせが入る日もあります。高齢の相談者に丁寧に説明し、法的に正確な案内をするのは想像以上に神経を使います。そのまま昼をまたいで、午後の予定が押すなんてこともザラです。
午後はひたすら申請と不備対応
午後になると、法務局へのオンライン申請や役所への確認作業。不備が返ってくればすぐ対応しなければなりません。特に最近はオンラインとはいえ、エラーが出るたびに時間を取られて、ストレスも倍増します。
夕方からが「自分の仕事」になる皮肉
すべての対応が終わる頃には、もう夕方。「やっと静かになった…」と思ったときが、自分の事務作業の始まりです。誰にも邪魔されない時間はありがたいですが、結局帰宅が21時を過ぎることもあります。
なぜ“暇そう”に見えてしまうのか
どれだけ忙しくても、黙々と机に向かっている姿は傍目には静かです。その静けさが「暇」に見えるのかもしれませんが、実際の内情は真逆です。
事務所で静かに座っている=暇に見える理不尽
正直、座って作業していると「今日は暇なんですね」と言われることがよくあります。でも、何十枚もの申請書や添付書類を必死にチェックしているときほど、声をかけられたくない気持ちになります。理不尽ですが、外から見えない努力って、どうしても軽く見られがちです。
「先生」と呼ばれる肩書のワナ
「先生」と呼ばれる立場だからこそ、「働いてる感」を見せないと、逆に「暇そう」と誤解されます。でも、そんな見た目ばかり気にしていたら、本来の仕事に集中できません。肩書と実態のギャップには、今も戸惑うことがあります。
本音:言われて一番モヤモヤする言葉
「暇そうですね」以外にも、司法書士をしていて言われてつらい言葉はあります。それらはどれも、こちらの苦労をまるで無視されたような感覚にさせるのです。
「暇そう」「楽そう」「儲かってそう」三大イライラワード
この3つは本当に多くの人に言われます。そしてどれも、実情を知らない人にとってのイメージだけで語られているんですよね。苦労話は外に出さない方がいいと言われますが、それが逆に損になることもあるのかもしれません。
苦労を見せないことが仇になる
「そんなに大変なら、もっと疲れてる顔をすれば?」と言われたことがあります。苦労を隠してニコニコしていると、「楽そう」に見えるという矛盾。でも、相談者の前でつらい顔なんて、やっぱり出せないじゃないですか。
「暇そう」=価値が低いと思われている気がする
この言葉の裏にあるのは、「そんなに暇なら、価値がない仕事なんじゃないの?」というニュアンス。だからこそ腹が立つのかもしれません。実際には、人の人生に関わる大事な手続きを扱っているのに。
モチベーションを保つのがしんどい時もある
人からの評価も少なく、孤独になりがちな司法書士。忙しさだけでなく、精神的なバランスを取るのも大変です。
誰にも相談できない“士業の孤独”
士業は横のつながりが弱く、日々の悩みを相談する相手が少ないのが現実です。特に地方では、同業者同士がライバルでもあるため、弱みを見せるのもためらわれます。孤独に耐えることも、この仕事の一部かもしれません。
「休む=収入減」の重圧
仕事が途切れると即収入に直結するのも、個人事務所のつらいところ。体調が悪くても、家族の事情があっても、なかなか休めません。自由業という言葉に夢を持たれることもありますが、その裏には不安との戦いがあります。
それでも続けている理由
こんなに大変で報われないことも多い司法書士業ですが、それでも続けているのは、やはり「人との信頼関係」があるからです。
感謝の言葉に救われる瞬間がある
「先生、本当に助かりました」と涙を流して言ってくれた依頼人がいました。その一言で、何日も続いた徹夜作業の疲れが吹き飛んだ気がします。直接人に感謝される、それがこの仕事の何よりの報酬かもしれません。
「あなただから頼みたい」と言われた日
競合の多い業界で、「先生だから安心してお願いできる」と言ってもらえたとき、心から嬉しかったです。書類を超えた“人と人との信頼”こそが、司法書士の本質だと思っています。
同業者へのメッセージ:「暇そう」と言われたときの対処法
同業の方々も、きっと一度は言われたことがあるでしょう。そんなとき、どう受け流すか。意外とこれが、精神衛生を保つコツだったりします。
笑って流す?それとも訂正する?
私は最初、毎回ちゃんと反論してました。でもそれだと疲れてしまうんですよね。最近は、「あはは、そう見えるかもしれませんね〜」と笑って受け流しつつ、興味があれば少しだけ説明するようにしています。
感情的になると損をする
言われた直後はムッとするかもしれませんが、感情的になると、かえって相手との距離ができてしまいます。誤解は、ゆっくりほぐすくらいがちょうどいい。そう思うようになりました。
軽く説明して、誤解だけ解いておく
相手が少しでも聞く耳を持ってくれるなら、「実はけっこう大変なんですよ」と一言添えるだけでも効果的です。すべてを説明する必要はない。けれど、誤解だけはその場で小さく壊しておく。それが私のやり方です。
これから司法書士を目指す人へ
司法書士になろうとしている方に、ぜひ伝えたいのは、「暇そう」という言葉に惑わされないでほしい、ということです。実際は地道で体力も気力も使う、そんな仕事です。
「暇そう」は幻想、実際は体力勝負
体は座っていても、頭はフル回転。クレームにも冷静に対応し、重たい責任を背負いながら書類を完成させる。そんな仕事が「暇なわけがない」と、声を大にして言いたいです。
覚悟すべきは、地味な毎日と人間関係
一発逆転もなければ、脚光を浴びる瞬間もない。でも、地味な努力を積み重ね、信頼を築いていく。その姿勢を持てる人が、司法書士に向いていると思います。
おわりに:暇に見えても、心は戦っている
外から見れば、確かに静かで落ち着いた職場かもしれません。でも、司法書士は常に「正しさ」と「責任」と向き合いながら、目に見えない戦いを続けています。だからこそ、同業者同士で支え合い、理解し合える関係を築いていけたら――そんな願いを込めて、今日もまた書類に向き合っています。