午後は沈黙。スキャナーが壊れた日、すべてが止まった

未分類

午後は沈黙。スキャナーが壊れた日、すべてが止まった

スキャナーが壊れた。それだけで仕事が止まる午後

午後2時、いつものようにスキャンを始めようとしたその時。スキャナーから「ギギッ」という聞き慣れない音がして、画面にエラー表示が出た。まさか、と思いながら何度か電源を入れ直すも反応なし。結果、その日の仕事がごっそり止まった。スキャナーが動かないだけで、なぜこんなにも仕事が進まないのか、自分でも情けなくなる。昔は手書きとコピーで乗り切っていたのに、今では「スキャナーがないと何もできない体」になってしまっている。たった1台の故障が、こんなに大ごとになるなんて。

PDF化できないだけで、なぜこんなに焦るのか

登記申請や報告書の提出、相続関係説明図のデータ保存。司法書士の仕事は、いまや何でもかんでもPDF化が前提になっている。紙の書類が山のようにあっても、PDFがなければ「動けない」。今日やるべき登記申請3件も、原本はあるのにスキャナーが動かないというだけで提出が翌日にずれ込む。しかも、依頼者には「本日中に」と言ってしまっている。焦る。無駄にパソコンの前でクリックを繰り返し、「もしかしたら直るかも」なんて淡い期待を抱いてしまう自分がさらに嫌になる。

予定していた申請がすべて後ろ倒しに

午後の予定は、登記申請2件と、別件のPDFファイル作成が1件。全部、スキャンが前提だった。それがスキャナー1台の沈黙で、全部後ろ倒しに。申請日を1日ずらすだけで、お客さんからの「進捗どうなってます?」の電話が想像できて胃が痛い。自分の仕事の「要」とも言える申請作業がこんなに簡単に止まることに、改めて危機感を覚えた。これ、何も災害じゃない。ただの機械故障。それだけで、まるで自分の存在が否定されるような、あの無力感。

事務員も巻き込まれる“沈黙の午後”

うちの事務所は、自分と事務員さんの二人だけ。だから、何かトラブルが起きたときには否応なく空気がピリつく。今日はその典型だった。機械の不調でこちらがイライラしているのが伝わってしまい、事務員さんもそわそわしている。まるで家族が険悪な雰囲気に包まれているときのような、居心地の悪さが事務所全体に流れた。

「ちょっと見てくれない?」が言えない空気

本来なら、「ちょっとスキャナーの調子が悪いんだけど、見てもらえます?」と気軽に声をかければいいだけなのに、今日はそれができなかった。たぶん、自分が焦ってるのを悟られたくなかったし、内心「これくらい自分で何とかすべき」と思っていたんだろう。だけど実際は、何も解決できないまま時間だけが過ぎていった。変なプライドが邪魔をして、協力し合うべきタイミングで壁を作ってしまった。

なんでも一人で背負いがちな悪い癖

司法書士という仕事は、一見すると専門職でカッコよく見えるかもしれない。でも実際は、地味な作業と気配りの積み重ね。そしてトラブル時には、「全部自分で背負う」空気がある。事務員さんに任せられる部分もあるのに、つい自分で抱えてしまう。結果、こういうときに無理をして自滅する。今日の午後は、その典型だった。誰にも相談せず、黙ってパソコンの前でうなだれていた自分が滑稽で仕方ない。

機械に頼るしかない仕事の脆さ

思えば、数年前までは紙とFAXと電話が主役だった。それが今では、何でもかんでもPDF、クラウド、電子申請。たしかに効率は上がった。でも、その分、たった1つの機械に全てが依存している。この午後のように、スキャナーが沈黙しただけで、仕事がストップする。こんなに頼っていいのか?と思いつつ、現実は「頼らないとやっていけない」状況にどっぷり浸かっている。

スキャナーが動かない=登記が進まない

信じられないかもしれないが、登記申請を進めるには「紙の書類をスキャンしてPDFにする」という作業が不可欠になっている。原本は持っているのに、法務局はPDFデータでの提出が求められるケースもあるし、依頼者への控えもデジタルで残すのが前提。つまり、スキャナーが止まると、こちらの意志とは関係なく仕事が止まる。「人が動いても、機械が動かなきゃ意味がない」。これが今の司法書士の現実。

郵送対応の限界とスピード感のなさ

もちろん「スキャナーが壊れたなら郵送すればいいじゃない」と思う人もいるだろう。でも、それは理屈であって、現場では通用しない。まず、時間がかかりすぎる。郵送では翌日着が基本。依頼者に「本日中」と伝えていたら、もう間に合わない。しかも、郵送の準備って意外と手間がかかる。封筒、宛名、切手、控え…全部が面倒。そして何より「この時代に何してんだろう」という虚しさが押し寄せる。

デジタル化された業務の「一点故障リスク」

あらゆる業務がデジタル化され、クラウドやシステムで管理されている時代。便利になった反面、「一点が壊れたら全滅」というリスクは無視できない。今回のスキャナーもその一例だ。パソコン、ネット回線、プリンター、クラウド。どれか一つでも不調なら、業務全体が止まる。そんな綱渡りのようなバランスで日々仕事しているのが、現代の司法書士という仕事の実態かもしれない。

この午後に、ふと湧き上がる不安と自己嫌悪

何もできずに時計の針だけが進む午後。こういう時に限って、いろんなネガティブな感情が押し寄せてくる。「なんで予備を用意してなかったんだ」「もっとちゃんとスケジュール組んでおけばよかった」「いやそもそも俺、司法書士向いてないんじゃないか」。そんな思考がグルグルと頭を回り、気づけば深いため息ばかりついている。

「俺がもっとちゃんとしてれば」っていう無意味な反省

こういうトラブルのたびに、「全部自分が悪い」と思ってしまうのは、司法書士という仕事の特性だろうか。誰かのせいにできない。事務員さんに文句を言う筋合いもない。結局、責任は全部自分に戻ってくる。でも、「俺がちゃんとしてれば」なんて反省、あんまり意味がないこともわかっている。それでも、つい言ってしまうのがこの仕事の苦しさでもある。

でも、現実は変わらないし誰も助けてくれない

午後も終わりが近づいてくるころ、「なんで今日はこんなに疲れたんだろう」とふと考える。答えは明白。仕事が進んでいないから、心だけが焦って、空回りしていたからだ。そしてもう一つ。こういうとき、誰も助けてくれない。同業者に電話しても、「うちも忙しいんだよね」と言われるだけ。孤独な戦いの中、ただ時間だけが過ぎていく。それが地方で司法書士をやるという現実。

故障と向き合いながら考えた、今後の備え

この午後を境に、ようやく「備えることの大切さ」に意識が向いた。今までは「壊れたら買い替えればいい」と思っていたけれど、そんな簡単な話じゃない。仕事を止めるリスクは、機械の値段よりずっと高い。予備機を買うか、業務フローを見直すか。それとも、もう一人スタッフを増やすか。現実は厳しい。でも、何もしないよりはマシだ。

予備機?クラウド?…でも予算がない現実

理想を言えば、スキャナーは2台体制。クラウド保存も万全。外注でスキャンも可能。でも現実は、「そんな予算どこにあるの?」という話。地方で一人事務所をやっていると、そんな理想論はすぐにかき消される。けれど、せめて「スキャナーが止まっても申請できる道」を一つでも作っておくこと。それだけでも、今回みたいな“午後の沈黙”は防げるかもしれない。

「最悪の午後」から見えた改善のヒント

結局この日、申請はすべて翌日に回した。でも、そのおかげで業務フローを見直す時間ができた。機械に頼る部分、紙で対応できる部分、人に任せる部分。その線引きをもう一度考えるきっかけになった。スキャナーが壊れた午後は、たしかに最悪だった。でも、「ただの失敗」で終わらせない。次に同じことが起きても、少しはマシに対応できる自分でありたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

未分類