あのときの自分が、今の自分を救ってくれた話
過去の自分に救われた――そんな瞬間が確かにあった
「未来の自分のためにやっておこう」と思って書き残したメモや資料。それがまさか、本当に自分を救う日が来るなんて思っていなかった――。司法書士として日々の業務に追われる中で、そんな瞬間が確かにありました。今回は、何気なく残した記録や手順が、想像以上の効力を発揮した経験についてお話しします。大げさかもしれませんが、あの時の自分がいなかったら、今の自分はパンクしていたと思います。
あの頃の努力は報われないと思っていた
正直なところ、開業当初は「誰も見ていない努力」に意味があるのか疑っていました。マニュアルを書いても、それを使うのは自分だけ。チェックリストを作っても、活用されないまま埃をかぶる。そんな地味な作業をしている時間があれば、もっと実務をこなした方が良いのでは? とすら思っていました。特に疲れているときほど、「こんなこと、意味あるのか?」と苛立ちが湧いたものです。
思わぬ場面で「やっててよかった」と思える時
ところが、ある日ふとした拍子に、過去に作ったテンプレートや段取りメモに助けられる場面がありました。それは繁忙期の真っただ中、急な案件が重なり、通常業務すら手いっぱいの状態のとき。判断が鈍っている中で、引き出しから偶然出てきた1枚の「過去の自分のメモ」が、まるで過去の自分からの救援物資のように見えました。
しんどい毎日の中でも、コツコツ積んだもの
私は業務の中で、少しでも面倒だと感じた工程を「次からラクにするにはどうすればいいか」と考えるクセがあります。でも、実際にそれをメモに残しても、役立つ場面はそうそう来ません。だからこそ、「これって無駄じゃない?」と思っていたんです。でも、その無駄に見えた作業が、後の自分を確実に助けてくれたことに気づいてから、少し考え方が変わりました。
日報、チェックリスト、業務マニュアル…全部自分用だった
事務員に渡すわけでも、外部に出すわけでもない。自分しか見ない資料って、どうしてもやる気が出ませんよね。でも、私は過去に大きなミスをした経験から、「書いておこう」「記録に残そう」と決めていた時期がありました。その時の癖で続けていた日報やチェックリスト。それが今では“非常時の命綱”のような存在になっています。
「なんでこんな細かいことまで」と思いながら書いていた
手順書の一文に「書類チェックは封筒から出して並べて確認」と書いてあったとき、「そんなことまで要るか?」と自分でツッコミを入れたくなった覚えがあります。でも、実際にその手順で救われたことがありました。焦っていたときに、誤って前回の案件の書類を持って行きそうになったんです。バカみたいな内容でも、残しておいて良かったと本気で思いました。
ある日、急な依頼に追い詰められて
それは年末の慌ただしい時期でした。金融機関との連絡ミスで、急遽翌日に立会が必要になり、事務員は休み、私は準備の時間すら取れないという状況でした。朝から電話は鳴りっぱなし、頭の中は真っ白。でもそのとき、棚の中から1冊の「緊急対応マニュアル」を見つけたのです。それは2年前の自分が作ったものでした。
事務員が不在、資料も揃わない、時間もない
チェックリストも進行表も、普段は事務員が出力してくれるのですが、この日は完全に一人。パソコンの前に座っていても、何から手をつけていいかわからず、メールを開いては閉じ、書類の山を眺めては溜息をつくばかり。焦れば焦るほど、判断ミスが増えていくのを自分でも感じていました。
頭が真っ白になった時に目に入った一枚のメモ
引き出しの奥にあったA4の紙。「急ぎ案件時の最低限確認リスト」と手書きで書いてありました。もうすっかり忘れていた自作のメモです。読んでみると、「印鑑証明書の有効期限チェック」「登記識別情報の封筒を確認」など、あたりまえのことばかり。でも、その“あたりまえ”が、あの時の私には何より心強く、まるで道しるべのようでした。
過去の自分が書いた自分向けの手順
「これは前に同じ状況で痛い目見たときに作ったんだな…」と、記憶がよみがえりました。あの時の自分は、もう二度と同じミスを繰り返さないために、未来の自分のためにこれを書いた。それを今、まさに自分が手に取っている。なんとも不思議な気持ちでした。過去の自分と、時間を超えて握手したような感覚です。
「準備していた自分」がいなければ終わっていた
結果として、その案件はなんとか無事に乗り切ることができました。でももし、あのメモがなかったら? と思うと、今でもゾッとします。あの状態で勘だけを頼りに進めていたら、たぶんどこかで致命的なミスをしていたでしょう。何気なく作ったその資料が、どれだけ自分を救ってくれたか――今でも鮮明に思い出せます。
段取りメモがなかったら、登記ミスしてた
手順の確認を飛ばして進めたがるタイプの私ですが、あの時だけは忠実にチェックリスト通りに進めました。たった5分の確認で、申請用の住所が誤っていたことに気づき、冷や汗が出ました。あのまま提出していたら、訂正申請と関係者への謝罪で数日潰れていたはずです。
緊急対応のテンプレートに救われた
過去の自分は、忙しい中でもメールや書類のテンプレートを残してくれていました。それを少し修正するだけで、急な関係各所への連絡もスムーズに済ませることができました。ゼロから何かを書く労力って、余裕がないときにはとにかく重い。それがあるだけで、どれほど気持ちがラクになったか。
これから司法書士を目指すあなたへ伝えたいこと
この仕事を続けていると、「今の積み重ねが本当に意味あるのか」と思うことが何度もあります。孤独な作業に見えても、それは必ずどこかで自分を支える土台になる。もしあなたが司法書士を目指しているなら、「未来の自分に感謝される準備」をしておくことをおすすめします。
未来の自分に感謝される準備をしておくといい
どれだけ忙しくても、どれだけ意味がなさそうに思えても、メモを残す、手順を整理する、小さな失敗を記録する――そうした地味な行動が、後の自分を助けてくれます。「ありがとう、あのときの自分」と言える瞬間を作るために、今できることは必ずあるはずです。
しんどいときほど、「小さな一手」があとで効いてくる
私は今でもしんどい日々の中で、過去の自分に何度も助けられています。ミスをした自分も、準備していた自分も、どちらも今の自分の一部。これからも愚痴をこぼしつつ、小さな一手を積み重ねていこうと思っています。