AIの進化が怖い——司法書士だって例外じゃない
正直に言うと、ここ最近ずっと不安なんです。テレビやネットで「AIが人の仕事を奪う」と言われるたびに、自分の仕事もその対象になるんじゃないかと落ち着かない気持ちになります。司法書士は専門性の高い職業だし、機械にはできないだろう……なんて、数年前までは思っていました。でも、最近はそんな楽観もできなくなってきました。特に、法務書類を自動で作成するサービスが出てきたあたりから、現実味を帯びてきたというか、自分の仕事もじわじわと侵食されるような感覚を覚えています。
「自分の仕事は機械じゃできない」と思っていたけれど
開業当初は「相談を聞いて書類を整えて手続きをする」この一連の流れが機械にできるわけがないと思っていました。でも今は、チャットボットが相談に答え、書類作成ソフトが申請書を作り、API連携でオンライン申請が完了する。ここまで来てしまうと、もう「AIじゃ無理」という言い訳も通用しない気がしてくるんです。そんな風に、夜中にふと不安が頭をもたげて眠れなくなることもあります。
AI相談サービスの台頭に感じるモヤモヤ
最近では、AI相談サービスを導入した行政書士や税理士の広告が目につくようになりました。何でも自動で答えてくれるとか、即時にアドバイスがもらえるとか、利便性はたしかにすごい。でもその一方で、人の悩みってそんなに単純なものばかりじゃない。僕たちのような地方でやっている司法書士にとっては、「話を聞く」時間そのものが仕事の大きな部分を占めているわけで、そこがAIに代替されると思うと、何とも言えない寂しさがあります。
本当にAIに司法書士の仕事は奪われるのか?
じゃあ実際、僕たち司法書士の仕事はAIにどこまで奪われるのか?これは多くの同業者が気になっていることだと思います。すべてが置き換わるとは思いません。ただ、単純な書類作成や申請処理のような“定型業務”は、真っ先にAIにとって代わられる可能性が高い。それでも、すべての仕事が奪われるわけじゃない。その線引きをどう見極めるかが大事なんです。
登記申請は自動化できる?現場での実感
実際、登記申請の中でも「相続登記」のようにある程度パターンが決まっているものは、今やAIでもそれなりに対応可能です。僕の事務所でもテンプレートを使って作業を効率化していますが、これがさらに進化すれば、専門家が関わらなくても手続きできる時代が来るかもしれません。でも、現実にはちょっとした間違いで補正が出たり、書類の不備でトラブルになることも多く、完全自動化はまだまだ難しいというのが正直なところです。
AIでは対応できない「人間の感情」って何だ
じゃあ、AIにできないことって何か?やっぱり「感情のやりとり」だと思うんです。特に相続や遺言の相談は、亡くなった家族への思いや、兄弟間のわだかまりといった、感情が複雑に絡むことが多い。ここにAIが入っても、言葉では対応できても「察する」ことまではできません。そこが、僕たちの出番であり、価値なんだと思いたいです。
依頼者の「不安」に寄り添うという仕事
たとえば、相続の相談に来た年配の女性が「こんなこと相談していいのかしら」と不安げに話し出す場面があります。こういうとき、ただ答えるだけではダメで、「大丈夫ですよ、一緒に考えていきましょう」と一言添えることがどれだけ相手を安心させるか。これはマニュアルにもAIにも載ってない、経験と心遣いからくる言葉なんですよね。
クレーム対応と場の空気の読み合いは、まだ無理
現場で一番難しいのが、トラブル対応です。怒ってるお客さんを前に、どこまで謝るべきか、どこで折り合いをつけるか、その場の空気を読みながら判断する。これって、AIにやらせたら逆に火に油を注ぐだけじゃないかと思います。まだまだ“空気を読む力”は人間の専売特許です。
仕事の価値が見えづらくなる不安
AIと比べられることで、自分の仕事の価値がわからなくなる瞬間があります。人間のほうが遅いし、費用もかかる。でも、心を込めて対応する意味ってどこにあるんだろう、と自問する日もあります。
「この業務、本当に必要か?」と自分に問い始める
特に、細かい書類確認や証明書の取得代行のような作業をしているとき、「これって本当に自分がやる必要あるのか?」と考えるようになりました。便利な時代だからこそ、僕たちが“やるべきこと”の定義がどんどん揺らいでいる気がします。
AIと比較される職業になってしまった現実
ついに僕たちのような専門職までも「AIとどっちが安いか・速いか」で比べられるようになってきました。これは、誇りを持ってやってきた仕事にとっては、結構つらいことです。
価格競争と「効率化圧力」の中で消耗する
最近では、他事務所との価格比較をされることも増えてきました。「AIならもっと安く済みますよね?」と言われたときの悔しさと虚しさ……。わかってもらえないことが増えてきた気がします。
昔ながらのやり方が通用しなくなっている
ベテランの先生が長年やってきた「信頼第一」「足で稼ぐ」スタイルも、今では効率が悪いと言われる時代です。僕も紙で残したい派だったけど、最近は少しずつ変えなきゃと感じています。
どうやってこの不安と付き合っていくのか
AIの進化は止まりません。それなら、どうやって不安と共存していくかが課題です。嘆いてばかりもいられない。できることから変えていくしかない、そんな気持ちで日々を過ごしています。
“人対人”の仕事を見直すという原点回帰
AIにできないことを突き詰めていくと、やっぱり「人と人との関わり」に行きつくと思います。手続きそのものではなく、「この人にお願いしたい」と思ってもらえる関係を築くことが、今後のカギだと思います。
小さな事務所でこそできることもある
僕のような地方の小規模事務所にしかできないこともあります。たとえば、ちょっとした雑談の時間や、近所づきあいの延長のような付き合い。それが結果的に相談のしやすさや安心感につながっていると信じたい。
依頼者にとって「顔の見える専門家」であること
「あの先生に聞けば何とかなる」——そんな存在でいられるように、日々の対応を丁寧にしています。顔が見える関係だからこそできること、まだまだあると思うんです。
雑談の中にあるヒントを拾えるのはやっぱり人間
「そういえば、うちの母が相続のことで…」そんな雑談の一言が、実は大事な相談の入り口だったりします。こういう“間”は、やっぱり人間同士じゃないと生まれません。
これからの司法書士に求められるのは何か
これからの時代、司法書士に求められるのは「AIと対立する」ことじゃなく、「どう共存するか」だと思います。テクノロジーに飲まれるか、活用するか。その差が、生き残りのカギになるかもしれません。
AIと共存するための“ゆるやかな進化”
全部を否定せずに、使えるところはAIに任せる。自分は「人間にしかできない部分」に集中する。そんな柔軟な姿勢が必要なのかもしれません。
技術に頼りながら、心を置いていかれない工夫
AIを導入して便利になる一方で、人とのやり取りや想いを大切にし続ける。そんな二律背反のバランスを取るのが、これからの司法書士の在り方かもしれません。