実は今月もギリギリだった僕の現実と限界

実は今月もギリギリだった僕の現実と限界

月末に気づく現金残高の少なさに胃が痛む

月末、通帳の数字を見るたびに胃がキリキリと締め付けられる。今月もまたギリギリだった。仕事はしている、依頼も来ている。けれど、なぜか残るお金が少ない。司法書士という仕事は安定していると思われがちだが、実際にはタイミングの問題、支払いのズレ、急な出費で予想以上に収支が狂う。特に地方の事務所では、入金のサイクルが遅く、ギリギリの綱渡りになることが多い。口座の数字だけが、現実の厳しさを冷たく告げてくる。

仕事はあるのに通帳は痩せていく

「忙しいのに儲からない」という言葉、これほどリアルに刺さるものはない。今月もいくつかの登記申請を処理したし、相談案件もこなした。けれど、その大半が月末締め翌月払い。手元に現金が残らない。売上があっても、その実感がないまま月日が流れ、いつの間にか残高が減っている。働けば働くほど、疲労と不安が募る。このサイクルから抜け出す方法は、正直まだ見つかっていない。

請求書を出してもすぐには入らない

依頼者に請求書を渡しても、すぐに入金されることは稀だ。「来月の頭に振り込みますね」と言われれば、信じるしかない。法人相手の案件では、締めと支払いのルールがきっちりしているところもあるが、それが返って融通がきかない要因になることもある。待つしかない、というこの感覚。昔の僕なら「そんなものか」と流していたが、今はそれが切実な問題になっている。

支払いのタイミングが全部重なる

月末は地獄だ。事務所の家賃、コピー機のリース代、電話代、事務員さんの給料、自分の生活費――それらが一斉にやってくる。なのに、入金は月初にズレることが多く、タイムラグが常に発生する。毎月このタイミングになると、「なんで司法書士になったんだっけ?」という後悔にも似た気持ちが湧いてくる。お金の流れに追い立てられる生活が、少しずつ心を削っていく。

事務所を開いたあの日の理想と現実

開業当初は夢があった。「自由な働き方」「地域貢献」「好きな仕事で生きていく」。だけど現実は、理想とはかけ離れていた。とにかく時間が足りず、責任も重い。そして何よりも「お金のこと」が頭から離れない。人の人生に関わる仕事だからこそ、手を抜けない。その一方で、報酬は後から、遅れて、もしくは減額されて入ってくる。そういう矛盾を抱えながら、日々をやり過ごしている。

「やりがい」だけでは食えない壁

依頼者に「ありがとう」「助かった」と言われる瞬間は、本当にうれしい。心の支えになる。でも、それだけではやっていけないのが現実だ。やりがいが腹の足しになるなら、とっくに成功している。気づけば、毎月の家計簿とにらめっこする日々。夢と現実の間で、どうやってバランスを取ればいいのか、未だに答えは出ていない。

借りたコピー機が重たく感じる理由

開業当初にリースした業務用コピー機。あのときは「これがあれば仕事がはかどる」と思っていたが、今は毎月のリース代が心の重荷だ。正直、今の業務量ならもう少し安い機種でもやっていけるかもしれない。でも、解約にも手数料がかかるし、引き取りも面倒。そういう「身動きの取れなさ」が、この仕事のつらさでもある。

一人事務所の孤独とやさしさの矛盾

事務所には事務員さんが一人いる。とてもありがたい存在で、彼女がいるおかげで事務作業がかなり助かっている。でも、僕自身の悩みはなかなか口に出せない。雇っている側として、弱音を見せたくないという思いもある。笑顔でいることが「責任」だと思っている。けれど、本音は…やっぱりしんどい。

事務員さんの前では明るくいなきゃと思う

事務所の雰囲気は、自分の表情ひとつで変わる。だからこそ、どんなにしんどくても「お疲れさま」と笑って声をかける。でも、内心は不安でいっぱいだ。「今月も乗り切れるのか」「急な出費が来たらどうしよう」…そんな思考がぐるぐると頭を回っている。誰かに相談したいけど、その相手もいない。だから、笑ってごまかすしかない。

でも口座残高を見ると黙り込む

帰宅してひとり、口座残高を見てため息をつく。昼間は「なんとかなる」と思っていたのに、数字を見た瞬間、現実に引き戻される。明るくしていた自分が嘘のように、無口になる。テレビもつけず、ただ布団にくるまる夜もある。そういう自分に気づいて、少し情けなくなる。

感情を押し込めた先にある疲労感

感情を外に出さないことが当たり前になってしまっている。でも、それがじわじわと疲労感となって蓄積していく。ときどき、何もしていないのに涙が出そうになる日がある。体は疲れていないのに、心が重たい。そんな自分を「弱い」とは思わない。でも、「孤独だな」とは思う。

それでも辞めない理由

じゃあなぜ辞めないのかと聞かれたら、答えは「この仕事が嫌いじゃないから」になる。たしかにギリギリの毎日で、心もすり減っている。でも、誰かの助けになれたときの喜びや、少しずつ信頼を積み重ねていく感覚。それがあるから、なんとか続けていける。たとえギリギリでも、生きている実感がある。

お客様に「助かった」と言われる瞬間

登記が完了し、依頼者から「本当に助かりました」と頭を下げられたとき、不思議と全てが報われた気がする。「やっていてよかった」と思える瞬間が、ほんの一瞬でもある。それがあるから、どれだけしんどくても、また次の案件に向かうことができる。

報われる時間は一瞬だけど

現実的な報酬や生活の厳しさは消えない。けれど、報われたと感じる時間がほんの一瞬でもあるから、人は頑張れるのかもしれない。その一瞬のために、また机に向かう。元野球部のときの「あと一本」の精神が、今もどこかに残っているのかもしれない。

その一瞬がまた次をつないでくれる

「次の月も、なんとかなるかもしれない」。そう思わせてくれる小さな光が、日常の中に紛れている。その光を見逃さないように、今日も仕事に取り組む。ギリギリでも、踏ん張っていれば、何かが変わるかもしれない。そう信じて。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。