静かすぎる一日、その違和感に気づいたのは夕方だった
「今日は妙に静かだな」と思ったのは、午後4時を回ったころでした。普段なら、午前中に2、3件は問い合わせの電話があるのですが、その日は朝から事務所の中がずっと静まり返っていて、ただただ業務に集中できていました。最初は「これはありがたい」とさえ思っていましたが、日報を書こうとした瞬間にふと気づいたのです。「今日、1本も電話鳴ってなくないか?」と。そこから受話器を手に取るまでのわずかな時間に、背筋がゾワッとしました。
まさかの「電話不通」トラブル
確認してみると、電話のランプがまったく反応していない。慌てて外線に電話をかけてもらったところ、まったくつながらず。結局、回線トラブルで電話が朝からずっと不通になっていたことがわかりました。誰も気づかず、何の対処もできていなかった自分たちに愕然としました。
電話回線の不具合、それともこちらの不注意?
回線業者に確認すると、原因は近隣の工事による影響だったとのことでした。が、それより問題なのは「誰も気づかなかった」という事実です。私も、事務員も、あまりにも日常の業務に追われていて、電話が鳴らないことに何の違和感も覚えなかった。そのことの方が、よほど怖いと感じました。
“いつもより楽”だった一日が不気味に感じた理由
「今日は静かだな」「集中できるな」と思っていたその時間こそが、まさに異常事態だったわけです。騒がしさに慣れすぎてしまうと、静けさがありがたく感じる。でもそれは、現場が健全に回っているかどうかを見誤る一因にもなります。
「楽=良い日」ではない、という現実
電話が鳴らない日が「楽」なのは事実ですが、それが「良い日」かどうかはまったく別問題です。この日、事務所は外から完全に遮断されていたわけで、業務としては「営業していなかった」のと同じ。のんびり仕事が進むことが、売上や信頼を削る要因になっていると考えると、背筋が寒くなりました。
電話がつながっていない間に失ったもの
このトラブルの一番の問題は、「何を失ったのかがわからないこと」です。電話が鳴らなければ、そもそもその問い合わせが存在したかどうかも把握できない。無自覚に機会損失を重ねてしまう怖さを、あらためて実感しました。
依頼のチャンスは何件あったのだろう
「今日、初回相談をしたかった人がいたらどうしよう」と考えると、落ち着いていられません。特に地方では、最初の電話対応が印象の8割を決めるとも言われます。一度つながらなければ、もう二度と連絡が来ないことも珍しくありません。
信頼の低下は数字に表れない
目に見える損失ならまだしも、信頼の低下は気づきにくく、回復にも時間がかかります。何かあったときに連絡が取れない、つながらないという印象は、後々まで尾を引くものです。
不在着信が残らない“無言のサヨナラ”
スマホと違って、事務所の固定電話には履歴が残らないケースもあります。誰が何時ごろ電話したのかもわからず、こちらからフォローもできない。こうして見えないところで、知らぬ間にお客様は離れていくのです。
トラブルに気づけなかった理由
なぜ朝から電話が鳴っていないことに誰も気づかなかったのか。その根本には、日々の忙しさと「自分たちは大丈夫だろう」という油断がありました。
忙しすぎて“異変”を感じる余裕がなかった
朝から役所への提出書類、依頼者との面談、書類のチェック…。バタバタしているうちに、電話のことなど意識の外でした。忙しいことが“正常”だと錯覚してしまうと、こういう小さな異常に気づけなくなります。
「誰かが気づいてくれる」という油断
「事務員さんが確認してくれてるだろう」「おかしいことがあれば連絡が来るだろう」と、どこかで他人任せにしていた部分もあります。結局、自分が気づくべきことを誰も気づかずに一日が終わってしまったのです。
事務員一人体制の限界
うちは事務員が一人しかおらず、対応できる範囲にはどうしても限界があります。忙しい日は電話対応も後回しになりがちで、今回のような異常に対処できないリスクは常にあります。
“報連相”が回らない職場の実態
「あれ、電話変じゃないですか?」といった一言が出なかったのは、日々の報連相が機能していない証拠かもしれません。小さな気づきを言いやすい雰囲気づくりこそが、こういうトラブルを未然に防ぐ鍵なのだと感じました。
日々のルーティンに潜むリスク
司法書士業務はルーティンの積み重ねですが、その中には思わぬ“穴”も潜んでいます。油断や慣れによって、トラブルの芽を見逃してしまう危険性は常にあるのです。
「いつも通り」が一番危ない
「いつも通り」を疑わない姿勢が、今回のような事態を招く原因になりました。安定しているように見える日々でも、確認作業を怠ると、重大なミスが潜んでいるかもしれません。
チェックリストを作るのも結局は自分次第
日次の確認項目として「電話が鳴っているか」「外線につながるか」なども入れるべきかもしれません。でも結局、そういうリストも、運用も、最終的には自分が意識してやるしかない。仕組みは作るだけでは意味がないのです。
同業者や後進へのささやかなアドバイス
こんな情けない失敗談ではありますが、だからこそ伝えたいことがあります。司法書士という仕事は“人との接点”が命です。その第一歩を無自覚に失うようなことがないように、仕組みと意識の両面で備えておくべきだと思います。
事務所の“生命線”は電話だと再認識してほしい
メールやLINEも使いますが、やはり電話が主な連絡手段という人は多いです。電話がつながらないだけで「この事務所は信用できない」と思われる可能性もある。だからこそ、電話の管理には神経質すぎるくらいでちょうどいいと実感しました。
見落としがちなトラブルこそ、仕組みで防ぐ
業務のミスや書類の不備はチェック体制である程度防げますが、設備トラブルのような“非業務”の異常は盲点になりやすいです。だからこそ、気づきの仕組みが重要なのです。
IT導入や通知アラートの活用例
最近では、電話の着信がGmailに転送されたり、異常時にスマホに通知が来るようなサービスもあります。コストはかかっても、失うものに比べれば安い投資です。IT導入に抵抗がある方も、ぜひ一歩踏み出してみてほしいです。
一人で抱えない体制づくりのすすめ
すべてを一人で見ようとしても限界があります。事務員との役割分担、外部の専門業者との連携、相談できる同業者のネットワークなど、「孤立しないこと」が最大のリスク回避になる。今は、そう思っています。