夢を見ることすら疲れる
夜、布団に入るたびに思う。「ああ、また明日が来るのか」と。夢を見ることすら面倒に感じる夜が増えてきた。昔は夢を見ながらワクワクしたり、理想の未来を想像して眠りにつけたものだ。それが今では、夢にすら現実がにじんできて、もう一つの仕事場のようだ。休んでいるはずなのに、疲れが取れない。司法書士という仕事にやりがいを感じていた頃の自分は、もうどこか遠くへ行ってしまった気がする。
夜の静けさが怖いと感じる日
事務所の片付けを終えて帰宅し、テレビもつけずに静かな部屋にいると、むしろ騒がしいよりも心がざわつく。静寂は、自分の心の声を大きく響かせてくる。「このままでいいのか?」、「何のためにやっているんだ?」そんな問いが浮かんでは消えていく。静けさに向き合うには、自分自身の葛藤を直視せねばならない。それがとにかく怖くて、今日も寝る直前までスマホをいじり続けてしまう。
眠るのが休息ではなく義務になった
眠るという行為が、身体を休めるための行動ではなく「翌日に備えるための業務」になって久しい。眠らなきゃいけない、そう思えば思うほど目が冴えてしまう。睡眠アプリや安眠グッズも試したが、根本の原因は疲労じゃなく心の張り詰めた糸が切れそうになっていること。朝、眠気と疲れを引きずったまま目覚めるたびに「結局、何のために寝たんだ」と思うのだ。
夢さえも仕事の延長に見えてくる現実
登記のミスを夢の中で何度も確認する。補正通知が出る場面が脳裏に焼き付いていて、夢の中でも訂正案を考えている。夢という本来自由な世界ですら、司法書士という肩書に縛られているのだと思うと、笑えてくるやら悲しくなるやら。夢くらい現実から逃げてもいいのに、それすら許されないのは、きっと心が仕事でいっぱいになっている証拠なのだろう。
なぜか毎日が「消耗戦」
ひとつひとつの案件が特別に重たいわけではない。けれど、終わりが見えない。登記が完了しても、また新しい依頼がすぐやってくる。気が抜ける瞬間がない。中小企業の登記、相続の相談、住宅ローンの抹消…内容は違っても、気を遣うポイントは毎回違っていて、集中力が削られていく。そんな日々を繰り返しているうちに、自分がどんどん擦り減っていくのを感じる。
事務員に任せることの罪悪感
事務員が一人いるとはいえ、すべてを任せられるわけじゃない。任せれば楽になることは分かっているのに、「失敗させたら可哀想」「責任を押しつけてると思われたくない」という思いが頭をよぎる。結果、結局自分でやってしまう。相手を信頼できないのではなく、信頼して任せた結果、自分が傷つくのが怖いのだろう。だから、一人で抱え続けて、また疲れてしまう。
責任感と孤独感の板挟み
「司法書士だからしっかりしているはず」と思われることが多い。でも本音を言えば、こっちだって誰かに頼りたい時がある。誰にも話せないことが積み重なって、ふとした瞬間に涙が出そうになることもある。愚痴を言える相手がいない日常は、案外深刻だ。お客様の信頼を裏切らないようにと、真面目に仕事をすればするほど、心の中の孤独感は増していく。
かつて描いていた理想の仕事とは
独立したての頃は、もっと自由に、もっと自分らしく働けると思っていた。自分のペースで仕事を進め、クライアントと信頼関係を築いていく日々…そんなイメージを描いていた。でも実際は、締切や他人の都合に振り回され、トラブル対応で休日も潰れる日々。理想とのギャップがじわじわと心を蝕んでいく。気がつけば、当初の情熱はもう記憶の奥に追いやられている。
開業当初のワクワクはどこへ
当時は、事務所を開けるたびに胸が高鳴った。新しい依頼があると、それがどんな案件でも嬉しかった。それが今では、「またひとつ増えたか…」とため息交じりに封筒を開けるようになってしまった。慣れとは恐ろしいもので、どんなにやりがいのある仕事でも「作業」に変わってしまえば、心は動かなくなる。それでもやらねば生活は回らないのだ。
独立したかったはずなのに自由がない
自分で選んだ道なのに、なぜこんなにも「やらされている」感覚に陥るのか。スケジュールも報酬も、すべて自分で決められるはずだった。でも現実は、顧客の都合、金融機関の締切、行政の対応…あらゆるものに追い立てられている。自由なはずの独立が、皮肉にも一番不自由な環境になっている気がしてならない。
人に弱音を吐けない仕事
士業という言葉が重くのしかかる。弱音を吐けば「向いてない」と思われるのではないか、そんな被害妄想に近い気持ちにすらなる。誰かに愚痴を言うことができないから、こうして心のなかに溜まっていく。行政書士や税理士の仲間も「しんどい」と言いながら笑っているが、みんな同じなのだろうか。強く見せることに、何の意味があるのか、時々分からなくなる。
「士業なんだからしっかりしてるでしょ」の圧
依頼者の目は厳しい。こちらが少しでも不安そうな顔を見せれば、「この人に任せて大丈夫か?」と判断されてしまう。だからこそ、どれだけ疲れていても、どれだけミスを恐れていても、顔には出せない。心の中で震えながらも、平然とした顔で登記書類を提出し、相談に応じる。それが当たり前になっているけれど、それが人を壊していく原因でもある。
誰にも言えない「辞めたい」という気持ち
「辞めたいなあ」と、ふと思うことがある。でもそれはすぐに「じゃあ何するんだ?」という現実にかき消される。司法書士という肩書きを捨てた先に、自分を受け入れてくれる場所があるのか?そんな保証はどこにもない。結局、自分にできることはこれしかないと思って、また事務所の鍵を開けるのだ。