朝から全てがうまくいかないときに限って気づく存在
何気ない朝。机に座り、パソコンの電源を入れた瞬間、電話が鳴りっぱなし、依頼メールの山、さらに前日に後回しにした案件の資料も見当たらず。すでに気力が半分ほど削られた状態で一日が始まる。そんなとき、ふと隣を見ると、そこにいつもいるはずの事務員さんの席が空っぽだった。今日は用事があって午前休。たったそれだけのことなのに、事務所の空気が妙に重たく感じられた。その瞬間、「あ、この人がいないと回らないな」と思った。
電話が鳴るたびにため息しか出なかった朝
普段なら事務員さんがサッと取ってくれる電話。今日はその役が全部自分に回ってくる。登記申請についての問い合わせ、役所からの書類確認、依頼人からの時間変更の相談――それに対応しているうちに、自分が本来集中すべき業務には全く手がつかない。電話を切るたびに「えーと、次なにやってたっけ?」と頭が真っ白になる。情けない話だが、まるで初任者に戻ったような感覚だった。
出社して5分で心が折れる日もある
元野球部で、理不尽なシゴキにも耐えてきたつもりだったが、社会のプレッシャーは別物だ。たった一人欠けただけで、こんなにも事務所全体の流れが崩れるとは思わなかった。デスクに座って5分で、「もう今日一日終わりでいいかも」と思ってしまった。いかに事務員さんが目立たずとも、毎日無数の業務をこなしてくれていたか。そう思うと、ここ数ヶ月まともに「ありがとう」と言ってなかったことを思い出して胸が痛くなった。
その手際に救われたことを認めたくない自分がいる
僕は正直、どこかで「自分がすべての中心だ」と思っていたふしがある。依頼人と直接やりとりするのも自分、登記内容の判断を下すのも自分、責任を負うのも自分。だが、今日の混乱ぶりを目の当たりにして、ようやくわかった。誰かがスムーズに流れを作ってくれていたからこそ、自分はその中心に立てていただけだったのだ。事務員さんのさりげない調整や先回りした準備が、どれほど大きな意味を持っていたか、ようやく理解した。
いなくなって初めて気づく存在の大きさ
人って、失ってからじゃないと気づかないってよく言うけれど、本当にそうだ。事務員さんがいない午前中、すべてがちぐはぐだった。自分で動いても、誰もフォローしてくれない。ふとした瞬間に、「あの人、いつもここでこれやってくれてたんだな」と気づかされる。自分の中の“当たり前”が、実は誰かの努力で成り立っていたものだと身に染みた。
誰かに頼れるということがこんなにもありがたいとは
普段なら「自分でやるよ」と断っていたような雑務も、今日ばかりは誰かに任せたいと心底思った。人に頼ることは決して弱さではなく、職場というチームの中で当然のことなんだと、今さらながら実感した。頑なな自分のプライドを少しずつほぐしていくには、こういう現実にぶつかるしかないのかもしれない。
普段は何気なく受け取っていた言葉の重み
「これ、先に確認しておきました」「この資料、まとめておきました」そんな一言に、どれだけ救われていたのか。言葉にすれば簡単なことだけど、実際にやるのは地味で手間のかかる作業だ。それを黙々とこなしてくれていたことに、今さらながら気づく。自分ひとりで回しているように見えて、実際には誰かの支えでやっと保っていたという現実。それを認めるのは、ちょっとだけ悔しくもあるが、感謝は隠せない。
自分で抱え込む限界と向き合う
「一人でできる」は幻想だ。元野球部の気合いでやってきた自分でも、限界はある。事務所という場所は、一人で戦う場所ではなく、誰かと共に動く場所だった。そう気づいたとき、少しだけ肩の力が抜けた。
元野球部のプライドが邪魔をする
部活時代、苦しくても「泣くな」「甘えるな」と言われてきた。その教えがどこかで染みついていて、大人になっても「頼る=ダメなやつ」と思い込んでいた気がする。でも、現実は違った。誰かに頼ることこそ、組織を機能させるための知恵であり、誠実な判断だったのだ。自分のやり方に固執していたあの頃の自分を、今日は少しだけ反省した。
全部自分でやる癖はそろそろやめたほうがいい
朝から晩まで、自分で電話を取り、書類を整え、申請を出し、スケジュールを調整する――そんな生活をずっと続けていた。だけど、それが本当に効率的なのかと問われれば答えに詰まる。誰かに任せられる部分は任せる。それは手を抜くことではなく、全体を前に進めるための戦略なんだとようやく理解した。
チームプレーのはずが一人でマウンドに立ち続けていた
野球に例えるなら、僕はずっと一人で投げ続けるピッチャーだった。キャッチャーもいない、守備もいない、ベンチもない。それで勝てるわけがないのに、それが当たり前だと思っていた。事務員さんという存在は、言ってみれば堅実なセカンドやショート。ミスをカバーしてくれて、冷静にプレーをつないでくれていた。今後はその支えを大切にし、もっと感謝を伝えていこうと思う。