声が出ないオンライン会議、30分間のジェスチャー劇場

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声が出ないオンライン会議、30分間のジェスチャー劇場

オンライン会議に潜む「まさか」の罠

普段からあまり得意じゃないオンライン会議。音声も画面共有も、正直「出ればラッキー」くらいの気持ちで臨んでいる。でもこの日は違った。念入りに準備をして、事務員にも少し手伝ってもらい、マイクチェックも済ませたつもりだった。にもかかわらず、会議が始まって一発目、「声が聞こえません」と相手の口が動いているのが見えた瞬間、背中に冷たい汗が流れた。

準備したはずなのに音声が出ない

その日の相手は、顔合わせて3回目の司法書士仲間。そこまで親しくはないが、事務所の連携の話もあり、失礼のないようにしたかった。ところが、こちらの声が一切届いていない。イヤホンもマイクも正常に接続されている表示なのに、相手の眉間がどんどん険しくなる。「聞こえてますか?」の口パクが、逆にプレッシャーとなって押し寄せてくる。

イヤホンもマイクも問題なし?なのに声が届かない

まさに「どこが悪いかわからない」状態。Zoomの設定も一度見直したが、特にミュートにもなっていない。マイクテストも正常なはず。もう、原因を追及するより謝って早く本題に入りたい。だが、その「謝ります」さえ伝えられないのだ。無言のまま、笑顔と手のひらで「ごめんなさい」を表現する自分が、情けなくて仕方なかった。

「聞こえてますか?」がむなしく繰り返される地獄

相手の口元ばかりが「聞こえてません」「確認してください」を繰り返しているのがわかる。まるで音のない世界に取り残されたようで、孤独と焦りがぐるぐる回る。結局、原因不明のまま、なんとなくのジェスチャーで「とりあえず続けましょう」の意思を伝えることにした。だが、その瞬間から、まるで無言劇が始まった。

相手の視線に感じる「早くして」のプレッシャー

時間は有限。特に忙しい士業の世界では、1分でもムダにしたくない。なのに、こちらは話せず、相手もイライラしてきているのが画面越しに伝わってくる。目線が何度も横に逸れ、時計をチラチラ見る様子。焦れば焦るほど、こちらの手元も動きがぎこちなくなり、悪循環に陥っていった。

ジェスチャー開始、まるで無言劇

私は手を大きく動かして、〇や✕をつくり、なんとかYES・NOだけでも伝えようと試みた。まるで小学生のジェスチャーゲームのようだった。話し合いのはずが、なぜこんなにも体を使っているのか。時折、相手が笑う場面もあったが、それが「面白い」の笑いなのか「呆れた」の笑いなのか、判断もつかなかった。

チャットでフォローしても遅れる意思疎通

途中からはZoomのチャット機能に切り替えて、少しずつ会話を進めるようにした。しかし、タイプしている間に、相手の話はどんどん進んでいく。こちらの「その件ですが…」というメッセージが送信された頃には、もう別の話題に入っていて、何度もすれ違いが起こった。まるでタイムラグだらけの会議だった。

この30分がなぜこんなに長く感じたのか

30分という時間は、本来なら軽く済む打ち合わせのはずだった。でも、あのときの30分は、まるで2時間にも感じられるほど濃密で、気疲れとストレスが積もりに積もった時間だった。ジェスチャーとチャットだけで伝わることの限界も、身をもって知ることになった。

仕事の話をしたかっただけなのに

もともとの議題は、合同で進めている案件の進行状況の確認だった。書類のやりとりや、登記の段取りの話。つまり、お互いが得意な分野で、サクサク決まるはずの内容。でも、それを伝えられない。これほど「もどかしい」と思ったのは久しぶりだった。

肝心の要件は伝わらず、進まない議事

結局、要点の半分も伝えられないまま時間だけが過ぎた。お互いのストレスは募り、私の顔もどんどん強張っていったと思う。「また後日話しましょう」で終わったが、それが本当に救いだったのかは、今でもわからない。まさに中途半端なまま終わった感だけが残った。

相手もイライラ、自分も消耗

会議後にふぅっとため息をついた自分に、事務員が「どうでした?」と聞いてきた。「最悪だったよ」と答えるしかなかった。相手が悪いわけでもないし、自分だけが悪いわけでもない。でも、誰かにこの苛立ちをぶつけたくなるほど、心は擦り減っていた。

技術に振り回される毎日に疲れてきた

この手のトラブル、実は今回が初めてではない。ちょっとしたマイク不良やカメラ不具合、画面共有の失敗など、日常茶飯事だ。でも今回は、その「集大成」のような30分だった。オンラインで便利になったようで、結局、昔よりストレスは増えているのかもしれない。

紙の時代ならこんなトラブルなかった

正直なところ、FAXや電話の方が安心感がある。回線が切れることもないし、声が聞こえないなんてこともなかった。あの頃は、アナログゆえの手間もあったが、変な緊張は少なかったように思う。便利のはずのデジタルが、今では一番の不安要素になっている。

便利なはずのツールに神経をすり減らす矛盾

本来、業務効率化のために導入したZoomやGoogle Meet。それが、使いこなせない不安を生み、さらなる負荷を生んでいる。毎回「今日はちゃんと動いてくれるか?」と祈るような気持ちでログインしている自分が、なんとも滑稽に思えてくる。

ジェスチャーで乗り切ったけど、本当に乗り切れたのか

最終的には、笑顔で終わった。相手も「面白かったです」と言ってくれた。でも、それが本音なのか、建前なのか、わからない。そして私は、あの30分を「失敗」ではなく「事故」だったと処理しようとしている自分に気づいた。

相手は笑っていたが、本心はどうだったか

「大丈夫ですよ、気にしないでください」と言ってくれた。でも、裏では「またトラブルか」と思っていたかもしれない。信頼というものは、積み重ねるのは時間がかかるのに、崩れるのは一瞬だ。そういう意味で、あの30分が残した影響は、思っている以上に大きいかもしれない。

「面白かったですね」で片付けられる虚しさ

この手の出来事は、周りから見れば「笑い話」で済むのだろう。でも、当事者にとっては、ただただ悔しさと反省が残る。何がいけなかったのか、どうすればよかったのか、ずっと考えてしまう。そんな自分の真面目さに、時々疲れる。

ひとり事務所の限界を感じる瞬間

結局、こういうトラブルの時、頼れる人がいないのが一番つらい。もし技術に詳しいスタッフがいたら、もっと早く対処できていたかもしれない。ひとりでやるって、自由ではあるけど、孤独で、こういうときに心が折れそうになる。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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