緊急出張の先に待っていたのは、まさかの“留守”──振り回される現場のリアル

緊急出張の先に待っていたのは、まさかの“留守”──振り回される現場のリアル

緊急出張の先に待っていたのは、まさかの“留守”──振り回される現場のリアル

「今すぐ来てほしい」との連絡が入ったのは、昼休みが終わる少し前。依頼人は焦っている様子で、内容も切羽詰まっているようだった。こういう時、断れないのが司法書士という仕事の厄介なところである。準備もそこそこに車を飛ばし、現地に到着。しかし、そこで待っていたのは「すみません、ちょっと外出しちゃって…」の一言だった。どっと疲れが押し寄せる中、ふと「この仕事の在り方って…」と自問してしまう。そんな一日の記録を、少し愚痴も交えながら綴ってみたい。

なぜ緊急出張になったのか

こちらとしても予定は詰まっていたが、依頼人の言葉に押されて、急遽動くしかなかった。普段は出張を避けているのに、今回は例外だった。

依頼人の「今すぐ来てほしい」コール

「今日中じゃないと困るんです」「○時までに来てもらえないと…」そんな言葉を電話越しに聞いた瞬間、こちらも自分のスケジュールのことなど頭から飛んでしまった。電話の向こうの焦り具合がリアルすぎて、断るという選択肢がなくなる。おそらく向こうも、慣れていない手続きに混乱していたのだろう。それはわかる。わかるけれど…と思ってしまうのが本音である。

遠方でも断れない立場

車で片道1時間。地元でもない場所に事務員を置いてまで行く必要があるか、と言われれば「普通は行かない」。けれども、小さな地域の司法書士として、「お願いされる=断れない」のが実情だ。特に紹介案件などは、断れば紹介者の顔を潰すことにもなりかねない。善意が重荷になることもある、というのは現場あるあるかもしれない。

事務所を空けるリスクと不安

一人しかいない事務員に、午後丸ごと留守番をお願いするのは申し訳ない。しかし、私自身が動くしかない場合も多く、心配は尽きない。

事務員一人に任せきりの現状

当然、すべての電話に出られるわけでもないし、来所されたお客様への対応も限られる。事務員が気を利かせて対応してくれているのはありがたいが、負担も大きい。とくに繁忙期などは、事務所に人がいないこと自体が業務の停滞につながる。「出張ばかり行ってたら、ここが回らなくなるよ」という、心の声が聞こえてくる。

電話対応すらままならない午後

帰ってきて履歴を見ると、何件も不在着信とメールがたまっている。しかもその半分以上が「急ぎ」だったりするから、余計に精神が削れる。ほんの数時間空けただけで、こんなにも連絡が集中するのかと呆れるくらいだ。電話一本で依頼が決まることもあれば、トラブルにも発展するリスクもある。結局、出張中も気が抜ける時間なんてない。

現地に着いたら誰もいない衝撃

焦って到着した先に、依頼人の姿はない。約束の時間はとっくに過ぎていたのに、チャイムを鳴らしても誰も出てこない。これほど無力感を味わったことはない。

「ちょっと出てるので待ってて」の一言

ようやく連絡がついたと思ったら、「あ、すみません。ちょっと出てまして…あと15分くらいで戻ると思います」。この“ちょっと”が実際には30分以上だったりするのもよくある話。エンジンを切った車の中でじっと待つ時間の長いこと。夏場なら汗だく、冬場は凍える。司法書士ってこんなに忍耐力を試される職業だったっけ、とぼんやり思う。

時間もガソリンも返ってこない

当然ながら、移動にかかる時間も交通費も、戻ってくるわけではない。報酬に含めて請求すればいい話ではあるのだが、そう簡単にいかないのが現実だ。事情を話せばわかってくれる人もいるが、「え?そんなにかかるんですか?」という反応をされることも。時間と労力の価値が軽視されがちな業界なのかもしれない。

依頼人との温度差がしんどい

こちらが焦って対応しても、肝心の依頼人が拍子抜けするほどマイペースだったりする。その温度差が一番しんどい。

こちらは切羽詰まってるのに

車を飛ばし、予定をすべて後ろ倒しにして現地に行っている。そういう努力をしているのに、「あ、そんなに急がなくてもよかったのに」なんて言われたときの、あの脱力感たるや…。もちろん悪気はないのだろうが、心が折れそうになる瞬間だ。

「そんなに急がなくてもいいでしょ?」と言われたときの脱力感

こちらが勝手に焦ってただけ、と思われるかもしれない。でも、それは依頼人の“緊急”という言葉に反応したからだ。緊急という言葉の意味が人によってこんなにも違うとは、司法書士になってから何度も実感している。そこをきちんと共有できないまま仕事を進めるのは、本当に苦しい。

そもそも“緊急”って誰の基準なのか

依頼人が「急ぎ」と言えば急ぎになる。でも、その判断は本当に正しいのか?こちらには見えない背景も多い。

依頼人の焦り=こちらの優先順位?

依頼人にとっては一大事でも、こちらにとっては「後でも十分間に合う内容」ということも少なくない。それでも「来てください」と言われると、優先してしまう。結果として他の予定を犠牲にし、その日の全体スケジュールが崩壊してしまうのだ。

“とりあえず連絡”の気軽さが生む無駄

「困ったらとりあえず司法書士に連絡してみよう」。その姿勢自体は嬉しいのだが、“とりあえず”で動くにはこちらのリソースが足りない。相談の段階で済むことまで現地対応する必要があるのか、もっと丁寧に線引きを考えなければならない。

時間のロスが業務にどう響くか

一件の出張のズレが、事務所の予定全体に悪影響を及ぼす。そういうことを、依頼人に伝えるのはなかなか難しい。

スケジュールは秒単位で詰まってる

「午後は空いてますか?」と軽く聞かれることがあるが、実際には1時間ごとに予定が詰まっていることがほとんどだ。そこに突発の外出が入ると、他の依頼人への対応がどんどん遅れてしまう。信頼を積み上げるのは時間がかかるが、崩れるのは一瞬である。

一件のズレが全体を狂わせる現実

依頼人からすれば「一件だけの話」かもしれないが、こちらにとっては「今日のすべて」が変わってしまう場合もある。そうした感覚のズレをどう埋めるかが、永遠の課題である。

こういう時、誰にも愚痴れない問題

しんどい思いをしても、なかなか愚痴を吐ける相手がいない。同業者には言いづらく、事務員にも言えない。

事務員には言えない

「今日は参ったよ」と軽く話せる雰囲気ならいいが、愚痴ばかりになると事務所の雰囲気も悪くなる。それに、事務員にとっては他人の外出ミスなどどうでもいい話かもしれない。自分のストレスを押しつけたくないという気持ちもある。

同業にもなかなか言えない

同業の先生方もみんな忙しい。誰しも似たような経験をしていることはわかっているが、それをわざわざ言葉にするのも野暮な気がする。結果として、抱え込むしかない。

それでも依頼人を責められない理由

相手に悪意がないことはわかっている。それだけに、余計に責めることができない。やるせなさだけが残る。

本人に悪気はないから余計に苦しい

依頼人にとっては普通の行動だっただけ。だからこそ、「なんで待たされたんだ」と強く言えない。そのもどかしさが積もっていく。

感情よりも仕事を優先してしまう性分

どれだけ腹が立っても、結局は仕事を円滑に進めることを優先してしまう。こういうとき、自分は「割に合わない性格だな」とつくづく思う。

現場のリアルを見せる意義

こういう体験を表に出すのは、ちょっと気が引ける。でも、司法書士を目指す方々には、華やかさだけでない現場の空気を知っておいてもらいたい。

司法書士の裏側を共有したい

「先生っていつも余裕がありそうですね」と言われることがあるけれど、実際は火だるまみたいな日も多い。そういう日々も含めて、この仕事だと思っている。

これから目指す人には知っておいてほしい

資格を取れば安泰、なんて時代じゃない。むしろ、現場に出てからが勝負。だからこそ、こうしたエピソードを“裏側のリアル”として知ってもらえたらと思う。

せめて“伝える文化”を作っていきたい

愚痴で終わらせるだけでなく、少しでも未来が変わるように。そんな想いで、このコラムを書いている。

依頼人への説明も「仕組み」として考える

例えば、出張には事前予約が必要とか、急ぎ対応には追加費用が発生するといったルールを明文化する。そうすれば、無理な対応を未然に防げる可能性もある。

誤解や無理解を減らすための一歩

制度だけではなく、「なぜ必要か」を伝える姿勢が求められている気がする。依頼人にとっても、こちらにとっても気持ちのよいやりとりが増えていくような、そんな文化を作っていきたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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