10人の印鑑を集めろ!相続登記、地道すぎる戦いの全記録

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10人の印鑑を集めろ!相続登記、地道すぎる戦いの全記録

「10人の印鑑を集めろ!」相続登記の舞台裏

「相続登記なんて、書類まとめて提出すれば終わりでしょ?」と思われがちですが、現場の司法書士からすれば、それは夢のまた夢。特に、相続人が10人なんて案件にぶち当たると、まるで“RPGで全員の鍵を集めないと扉が開かない”みたいなもので、しかもその鍵を持ってる人が全員バラバラの場所に住んでて、全員がこじらせてる。そんな仕事、ほかにありますか?と聞きたくなります。ここでは、そんな相続登記の“地道すぎる戦い”を、ちょっと愚痴りつつ、真面目に綴ってみたいと思います。

なぜこんなに大変?相続登記の現実

「簡単な手続きでしょ?」と思われがちな仕事

相続登記というと、役所や法務局に書類を出すだけの単純作業だと思われがちですが、実態はかなり違います。遺産分割協議が必要なケースになると、話は急に複雑になります。印鑑をもらうだけじゃなく、その前に「納得してもらう」工程が必要なんです。正直、書類よりも人間関係をまとめるほうがずっと難しい。しかも、こっちは法律を守って進めてるだけなのに、なぜか「そちらの都合で急がされている」と思われてしまう始末。そうなると、ただの書類集めが、心理戦へと化していきます。

10人の相続人、それぞれの都合と感情

先日扱った案件では、被相続人に子どもが5人、そのうち2人がすでに亡くなっていて、その孫たちも相続人に含まれるパターンでした。結果、相続人は10人。これがまあ、全員バラバラの土地に住んでいるし、連絡がつかない人もいるし、兄弟間で確執がある人もいたりして、まるで人間関係のパズルです。ある人には「遺産なんて要らないから関わりたくない」と言われ、別の人には「もっと取り分があってしかるべきだ」と主張され…。全員の同意を得るには、とにかく根気と冷静さが必要です。

実務の中で感じる「地味にキツい」ポイント

印鑑をもらう=説得+調整+根回し

印鑑をもらうといっても、ハンコだけ送ってもらえばいいわけではありません。「どういう経緯でこうなったのか」「取り分はどう決まったのか」など、説明責任があります。場合によっては、何度も電話やメールでやり取りし、場合によっては直接会いに行くこともあります。説得材料も必要ですし、感情的な対立を和らげるための“言葉選び”にも神経を使います。結局、相手の信頼を得るまでが勝負。だからこそ、この仕事は「法律」よりも「人間」を扱うんだなと日々痛感します。

連絡がつかない、住所がわからない…日常茶飯事

「この人、今どこに住んでるんでしょうかね…」というのが始まりの会話になることもしばしば。連絡先が古くて、電話はつながらず、手紙を出しても戻ってくる。住民票をたどっても「職権消除」で行き止まり。こうなると、探偵みたいなことをする羽目になります。SNSを駆使してみたり、共通の知人を頼って連絡を取ったり。事務所で地道に調査をする時間が、積み重なっていく。しかも、そうやって苦労して探し出しても、「そんな手続き、知らない」と一蹴されることもあります。

心理的な疲労感と孤独感

「自分だけが頑張ってる?」と思う瞬間

すべての相続人がスムーズに協力してくれるわけではありません。むしろ、どこかしらで足並みが乱れます。10人のうちの1人が、ひたすら後ろ向きな姿勢だったり、何度説明しても理解してもらえなかったりすると、「なんで私だけこんなに気を使ってるんだろう…」という虚しさに襲われます。依頼人は依頼人で焦ってるし、相続人は非協力的。板挟み状態のなかで、自分の存在意義が見えなくなることもあるんです。

感謝されることより、疑われることのほうが多い

「この人、ちゃんと仕事してくれてるのかな」とか、「司法書士って何やってる人?」という目で見られることも多いです。費用の説明をすれば「そんなに取るんですか?」と言われるし、進捗の報告をしても「それだけ?」と返される。全ての依頼人がそうではありません。でも、疲れているときほど、その一言が刺さるんです。愚痴っぽくなりますが、もう少し司法書士の仕事が世間に理解されていればな…と何度思ったことか。

事務員との連携、ありがたいけど限界もある

一人事務所の厳しさ、誰にも投げられない仕事

うちの事務所は事務員さんが一人だけ。とても優秀で助かっているのですが、やはりマンパワー的に限界があります。細かい書類チェックや発送準備、郵便の管理、電話対応…彼女がやってくれているおかげで成り立っています。ただ、それでも最後は「司法書士の判断」になることが多く、最終的な責任は自分が背負うことになります。精神的なプレッシャーも含めて、誰にも肩代わりしてもらえないのがこの仕事の厳しさですね。

感情労働の多さに、二人でため息

「また印鑑もらえなかったです…」と報告しに行くと、事務員さんも「うわぁ…」と一緒にため息をついてくれます。共感してくれる存在がいるだけでも、本当に救われます。ただ、事務員さんもまた、依頼人や相続人とのやり取りの中でストレスを感じているのが伝わってきます。二人で愚痴をこぼし合いながらも、「じゃあ次どうするか」と前向きに切り替えていく。そんなやり取りが、うちの事務所の日常です。

これから司法書士を目指す人へ

華やかさゼロ、でも地元には必要とされる

司法書士の仕事には派手さはありません。むしろ「縁の下の力持ち」どころか、「地面の下で支えてる存在」と言っても過言じゃないかもしれません。でも、だからこそ地元の人にとっては、いざというときに頼れる存在でもあります。「相談できてよかった」と言われると、疲れも少しは和らぎます。大変だけど、役に立てる仕事。地味だけど、人間臭くて奥が深い。そんな職業だと思います。

「印鑑一つもらう大変さ」に耐えられるかどうか

これから司法書士を目指す方に伝えたいのは、「印鑑もらうだけの仕事じゃない」ということです。もらうまでに、相手の心をどう動かすか、信頼をどう積み上げるか。そういう“人の部分”に耐えられるかどうかが、向き不向きを分けるポイントだと思います。知識だけでは進まない場面が必ず来るので、どれだけ人と向き合えるか、それを考えてほしいです。

それでもやっぱり、この仕事を続ける理由

地道な努力が形になった瞬間のやりがい

10人の印鑑が全て揃った瞬間、「やっと終わった…」と、肩の力が抜けると同時に、達成感が込み上げてきます。正直、報われないことの方が多いかもしれません。それでも、一つひとつ地道にやってきたことが、最終的に登記という「形」になった瞬間、心の中で小さなガッツポーズが生まれます。これがあるから、続けられている気がします。

誰かの「助かったよ」が、ギリギリの支えになる

一言でいいんです。「助かったよ」「ありがとう」。それがあるだけで、すべてが報われる。逆に、それがないと、どこかで心が折れそうになる。だから私は、依頼人とのやり取りを少し丁寧に、少し優しくするよう心がけています。自分自身がその一言に救われることを、誰よりも知っているからです。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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