「辞めたい」は甘えじゃない——その気持ちとどう向き合うか?

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「辞めたい」は甘えじゃない——その気持ちとどう向き合うか?

本音を言えば、辞めたいと思う日もある

地方で司法書士をしていると、時折どうしようもなく心が重たくなる瞬間があります。忙しさ、責任の重さ、人手の足りなさ…。日々やるべきことに追われるなかで、「本音を言えば、もう辞めてしまいたい」と思う気持ちが頭をよぎるのです。自分の弱さなのか、それとも職業としての構造的な限界なのか。そんな問いに、答えの出ないまま数年が過ぎていきました。

司法書士という職業にある“逃げ場のなさ”

司法書士という仕事には、「自分だけが責任を背負う」という特性があります。例えば登記申請。1文字間違えただけで、クライアントの大切な手続きがストップします。もちろん法務局にも責任の一端はありますが、最終的には「あなたが確認して提出したんですよね?」という空気になる。正直、逃げ場がないんです。

相談される立場が、相談できない現実を生む

人の相談に乗るのが仕事である以上、こちらが弱音を吐くことは許されない空気があります。実際、私も一度だけ同業の先輩に「最近つらいです」と漏らしたところ、「まあ、みんなそうだよ」と返されただけでした。相談すること自体がタブー視されているような風潮もあり、ますます孤独感が強まります。

「責任感の強さ」が逆に自分を追い込む

誰しも、仕事に対して責任を持つのは当然のこと。でも司法書士の場合、その責任感が過剰になりがちです。自分のせいでお客様が不利益を被るかもしれない、という思いが強くなりすぎて、夜中に書類を見直したり、休日も気になってメールを開いたり。そうして徐々に心がすり減っていくんです。

辞めたいと思った瞬間ベスト3(ワースト3?)

日々仕事をしていると、何度も「辞めたい…」と思う瞬間があります。思い返すと、特に強く感じた3つの出来事がありました。今振り返ると笑えるようなこともありますが、その当時は本当に心が折れそうでした。

登記ミスのプレッシャー——夜も眠れない日々

数年前、ある会社の商業登記で書類の一部を間違えて提出してしまったことがあります。法務局からの電話でそのことが判明し、冷や汗が止まりませんでした。その夜は、何度も起きてはメールを確認し、頭の中で謝罪の言葉を繰り返していました。結果的には無事修正できましたが、そのときの「自分のせいで全部終わったかもしれない」という恐怖は今でも忘れられません。

「それ、先生の責任ですよね?」と言われたとき

お客様の中には、こちらの落ち度でないことでも責任を求めてくる方がいます。たとえば役所の対応の遅れや、本人確認書類の不備など。それでも「それ、先生が言ってくれなかったからでしょ?」と言われる。どこまでが自分の責任なのか、わからなくなる瞬間が一番つらいです。

報われない努力と、わかってもらえない苦労

どれだけ丁寧に説明しても、「結局書類にハンコ押すだけでしょ」と言われたときの虚しさは格別です。専門的な判断や調査の時間は見えないものなので、努力が評価されにくい。それでも手を抜くわけにはいかず、どんどん気力がすり減っていきます。

愚痴を言えない職業の辛さ

士業全般に言えることかもしれませんが、司法書士はとにかく愚痴を言いにくい仕事です。お客様の信頼を損ねたくない、専門家としての自尊心もある、事務所の雰囲気も壊したくない。だからこそ、黙って耐えることが美徳のようになってしまっているのかもしれません。

事務員には気を使う、家族にも言えない

うちの事務所は事務員がひとり。愚痴をこぼしたい日もありますが、相手は毎日顔を合わせる存在です。重たい話をしても負担になるだけかな…と遠慮してしまいます。かといって家に帰っても、家族には仕事の内容自体が伝わりづらくて、結局ひとりで抱え込むことになるのです。

「それが仕事でしょ」と片づけられる悲しさ

過去に親しい知人に仕事の悩みを話したことがありましたが、「そういうのも込みで司法書士なんでしょ?」と一言で片づけられてしまいました。何も間違ってはいないのだけど、その一言がとても冷たく感じて、それ以来、誰かに話すことが怖くなってしまいました。

それでも続けている理由を、正直に並べてみた

そんなふうに辞めたいと思いながらも、今日もこうして事務所に座っています。じゃあなぜ続けているのか?それは綺麗ごとでも理想論でもなく、現実的で、そして少し情けない理由かもしれません。

依頼者の「ありがとう」がある限り

結局のところ、この一言に救われることが多いです。たとえどんなに疲れていても、「助かりました」「本当にありがとう」と言われると、少しだけ報われた気持ちになります。その一言を信じて、今日も頑張ってみようと思えるのです。

生活がある、借金がある、逃げ道がない

もちろん「やりがい」だけでは生活はできません。住宅ローン、教育費、事務所の経費…。現実は待ってくれません。この年齢になって別の仕事に就く勇気もなく、「続けるしかない」というのが本音かもしれません。だけど、それでも毎日こなしている自分を少しだけ誇りに思っています。

「辞めたい気持ち」との付き合い方

結局のところ、「辞めたい」と思う気持ちは悪いことではないと、最近になって思えるようになりました。否定するのではなく、「そう思っても当然だ」と受け入れること。そこから、自分なりの対処法が見えてきたのです。

逃げ場の確保は「逃げ」じゃない

たとえば、月に一度だけでも予定を空けて何もしない日を作る。仕事のことを一切考えない時間を意識的に確保する。これが思った以上に効果的でした。「逃げ」ではなく、自分を守る手段として必要な時間だと思います。

同業者とのつながりが、思った以上に救いになる

最近になって、オンラインの勉強会やSNSを通じて他の司法書士とつながる機会が増えました。愚痴を言い合えるわけではありませんが、「ああ、みんな同じようにしんどいんだ」と思えるだけで心が軽くなります。同業者の存在は、孤独との戦いにおける小さな灯りです。

「辞めたい」気持ちを否定しない習慣づくり

「辞めたい」という言葉を思い浮かべるたびに、「でも頑張らなきゃ」と打ち消していた自分。今ではその感情を否定せず、「今日はそういう日なんだな」と流すようにしています。完璧じゃない自分を許すことで、少しだけ楽になりました。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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