やらかした日、そばにいたのはあなたでした

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やらかした日、そばにいたのはあなたでした

やらかした日、そばにいたのはあなたでした

ひとつのミスで、世界がぐらりと揺れる

司法書士として十数年。多少の経験と場数を踏んできたという自負もありました。ところが、ある日、たった一つのミスでその自信は簡単に崩れ去ります。何年も積み上げてきた信用が、一瞬で揺らぐような感覚。そんな日が、私にも訪れました。冷静なフリをしても、内心はぐちゃぐちゃ。「自分はまだまだだ」と痛感した出来事でした。

「まさか自分が…」という慢心

不動産の所有権移転登記。慣れた案件で、確認もそこそこに処理を進めてしまったのが失敗の始まりでした。登記原因証明情報に日付のズレがあり、法務局からの補正指示。初歩的すぎるミスに顔から火が出そうでした。「こんなミス、若い頃でもしなかったのに」と思う一方、「最近、確認を人任せにしていたかも」とも気づきます。慢心、それが原因でした。

たった一枚の書類が引き起こした大混乱

補正指示を受けたその日、予定していた別件の調整、クライアントへの謝罪連絡、事務員への指示で頭がパンク寸前。修正すれば済む話かもしれませんが、信頼関係にヒビが入ることの重大さは、司法書士にとって致命的です。書類一枚の記載ミスが、事務所全体の空気を一気に緊張させることになりました。

冷や汗の先に待っていたのは、信頼の危機

依頼人に連絡を入れたとき、正直言って震えていました。「怒られるだろうな」「他の司法書士に切り替えられるかもな」と。けれど、返ってきた言葉は意外にも「大丈夫です、そんなこともありますよ」。信頼というのは、完璧さよりも誠実さで築かれるのかもしれない。そう思い知らされた瞬間でした。

それでも、そばにいてくれた人

ミスをして、自分を責め、落ち込んでいたとき、そばにいたのは派手な言葉ではなく静かに動く人たちでした。事務所の空気が重くなる中、何も言わずに淡々と業務をこなしてくれる人の存在が、どれだけありがたかったか。その「当たり前」に支えられている自分を、改めて実感しました。

無言で手伝ってくれる事務員の姿に救われる

その日、私が何度もため息をつきながらバタバタしていたとき、事務員の彼女は何も言わずに補正書類を用意してくれていました。ミスを責めるでもなく、余計なことも言わない。ただ、いつものように業務を進めてくれる。その静かな姿勢に、どれだけ救われたか。ありがたくて、情けなくて、なんとも言えない気持ちになりました。

「気にしないでください」と言ってくれた依頼人

正直に説明したとき、依頼人は拍子抜けするほど落ち着いていました。「先生も人間なんですから」と。プロとしてあるまじき失態かもしれませんが、こうして許してもらえるのは、これまでの対応が信頼に足るものであったからかもしれない。そうであってほしいと願いながらも、救われたのは事実です。

失敗を笑い飛ばせる関係の大切さ

翌日、事務員に「昨日はほんとすみません」と謝ったら、「まぁたまには、やらかしてください。私の出番が増えるので」と笑ってくれました。その軽口に、どれだけ心が和んだか。ミスを責める空気ではなく、支え合える空気がある職場にしてきたことは、間違いじゃなかったと思えた瞬間でした。

ミスが教えてくれる、人の温かさと自分の未熟さ

今回の出来事で、「自分はまだまだ未熟だ」と再確認したと同時に、「周囲の人の温かさ」に深く気づかされました。支えられて、初めて成り立つ仕事。司法書士はひとりでやっているようで、決してそうじゃない。ミスを通じて見えてくる景色が、確かにあるのです。

完璧主義を捨てられない自分との葛藤

私は、基本的に完璧主義です。「間違えてはいけない」「絶対に確認する」と自分に課してきました。でも、それは現実には無理がある。自分を追い込みすぎていたことに、ようやく気づきました。ミスを許せない自分が、誰より自分を苦しめていたのかもしれません。

誰かのフォローにどれだけ助けられているか

普段は気づきにくいですが、毎日の業務の中でどれだけ人の支えに助けられているか、こういう時にこそ実感します。ひとりでやっているようでも、メール一つ、電話対応一つ、全部が誰かの気遣いで回っている。そんな当たり前を、忘れないようにしたいと思います。

司法書士という仕事に求められる「人間力」

法律を扱う仕事ではありますが、結局のところ、人の感情と信頼を扱っているとも言えます。完璧な書類よりも、誠実な対応。冷静な判断力と同時に、謝れる素直さ、支えに感謝できる謙虚さ。そういった「人間力」が、この仕事の土台になっていると感じます。

専門性だけじゃ回らない現場のリアル

いくら知識があっても、ひとりで完結する仕事ではありません。登記書類ひとつにしても、関係者の確認、依頼人の事情、法務局とのやりとり……さまざまな要素が絡み合っています。専門性はもちろん大事。でも、それだけでどうにかなる仕事じゃない。現場のリアルは、もっと複雑で人間的です。

支え合いがなければ続かない仕事

この仕事は、孤独なようでいて、実は「支え合い」がなければ成り立たないものです。どんなに優秀な司法書士でも、完璧にはなれない。だからこそ、周りとどう関わるか、感謝をどう返していくかが問われるのです。私は今回のミスで、そのことを改めて学びました。

「ありがとう」が言えるようになるまで

感謝の言葉は、簡単そうで、実はとても難しい。特にミスをしたときは、謝罪ばかりに気を取られて、「ありがとう」が言えなくなることもあります。でも、本当に言うべき言葉は「ありがとう」だったのかもしれません。支えてくれた人へのその一言が、自分を少しだけ前に進ませてくれるのです。

感謝を言葉にすることの難しさと向き合う

「ありがとう」は恥ずかしい。でも、黙っている方がもっと不誠実だと思うようになりました。言わなきゃ伝わらない。伝えなきゃ、すれ違う。そんな当たり前のことを、実は私自身が見落としていたのです。

不器用でも誠実に伝えることの意味

上手に言えなくても、不器用でもいい。言葉にしようとするその姿勢が、相手にはちゃんと伝わる。事務員にも、依頼人にも、周りの支えに恵まれている今、ようやく「ありがとう」が自然に言えるようになってきた気がします。それが、少しだけ成長した証かもしれません。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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