静かに見える日常に潜む叫び
司法書士としての日々は、表面上は淡々としたルーティンに見えるかもしれません。書類を整え、依頼者の相談を聞き、登記を提出する。ただ、それだけ。しかしその裏では、見えない焦燥とプレッシャーに押しつぶされそうになることがしょっちゅうあります。周囲には「落ち着いていていい仕事ですね」と言われるけれど、本音を言えば、常に何かに追われている感覚があるんです。表に出すことはないけれど、内心では叫び声をあげているような気分。それが、僕の日常です。
忙しいのに誰にも気づかれない感覚
一番つらいのは、「忙しいって嘘でしょ？」という無言の視線。たしかに、外から見れば僕はデスクに座って、キーボードを打ったり、書類に印鑑を押したりしてるだけに見えるかもしれない。でも、案件ごとに異なる法的要件を確認して、依頼者に適切な説明をして、法務局とのやり取りもして——そうした一連の作業は、神経を使ううえに、時間もぎりぎり。にもかかわらず、「今日って暇そうでしたね」なんて言われると、心の中で「ああ、この仕事の見えなさがつらい」と思ってしまいます。
「暇そうですね」と言われるたびに
たとえば、先日も不動産業者の担当者に「最近は動き鈍いですよね？」と笑われました。確かに、不動産の売買が落ち着く時期ではありますが、その裏で遺産整理や法人登記の相談が立て込んでいたんです。でもそれを説明しても、なんとなく「言い訳」っぽくなってしまう気がして、苦笑いでごまかすだけ。そういうやり取りが重なると、自分の仕事が“見えない労働”の典型なのだと痛感します。そして、誰にも気づかれないまま、心の中で小さく「そんなに暇じゃないよ」とつぶやいています。
本音を言えば、休みたいけど休めない
正直、休みたいです。まる一日、何も考えずに過ごしてみたい。でも、依頼者の「急ぎでお願いしたい」に応えるには、休んでいる場合じゃない。小さな事務所だから代わりもいないし、事務員さんだって専門的な対応まではできません。だから、どんなに疲れていても「はい、対応します」と言うしかない。体よりも心がすり減っていく感覚があって、それでも誰にも迷惑かけたくないと思う自分がいる。だから今日も、静かに叫びながら、仕事をしています。
仕事の重みを一人で背負う現実
この仕事の大変さは、「最後は自分で責任を取らなければいけない」という一点に尽きます。たとえチームで進めていた案件でも、最終的な署名をするのは僕。つまり、何かあれば全部、自分に返ってくる。これは、開業してから身にしみて感じたこと。たまに眠れない夜もありますよ。「あの書類、提出前にもう一回確認すべきだったか」とか、「あの説明、正確だったか」なんて、後から押し寄せる不安に頭を抱えることもあります。小さな事務所の“長”って、孤独です。
事務員はいても結局責任は全部こっち
うちの事務員さんはとても頑張ってくれているけど、やっぱり最終判断を任せるわけにはいかない。たとえば登記申請で添付書類に不備があったら、怒られるのは僕です。「事務のミスでした」は通用しない世界。そんな中で、事務員にプレッシャーをかけすぎないように気をつけつつ、自分も責任を背負っていく。これが、なかなか消耗する。彼女が帰った後に一人で書類をチェックし直す時間が、実は一番、気を張っているかもしれません。
「司法書士だから当然でしょ」に疲れた
「司法書士なんだからそれぐらいやって当然」って、無意識に思われてるのがきつい。別に特別扱いされたいわけじゃないけど、たまには「大変ですね」って声をかけてくれたっていいじゃないかと感じることもあります。こっちだって人間なんですから。朝から晩まで集中して、気を抜いたら致命傷になるような仕事をこなしてるのに、その労力が当たり前に消費されていく感じ。心の中では、「当然って何だよ…」と、また静かに叫んでいます。
潰れても代わりなんていない事実
もし僕が倒れたら、この事務所はその日から止まります。書類の進行も、相談の対応も、全部止まる。だから無理をしてでも出勤するし、多少の体調不良も「気のせいだ」と思い込んで動く。それって、本当に健全なんでしょうか？いや、わかってます。わかってるけど、現実はそう甘くない。僕には「いないと困る人」がいても、「僕を守ってくれる人」はいない。それが、独立開業した司法書士のリアル。誰にも代われないという重圧が、日々の静かな叫びになっています。
