午後4時59分の攻防――駆け込み申請の裏側で起きていたこと

未分類

午後4時59分の攻防――駆け込み申請の裏側で起きていたこと

なぜ毎回ギリギリになるのか:現場のリアル

登記申請は早めに、これは理屈としては誰でもわかっていることです。でも、実際の現場ではそう簡単にいかない。こちらがいくら前倒しで動いていても、相手方の事情や急な修正、関係者との調整で、気づけばいつも時計を見て焦る羽目になる。「またギリギリか…」と呟きながら、慌ただしく書類を抱えて役所へ向かう毎日です。

書類は揃っているはず…でも安心できない現実

「今日は完璧だろう」と思って出発した日の方が、なぜか問題が起きる気がします。法務局に着いて、ふとした表現のミスや記入漏れに気づいたときのあの絶望感。しかも、それに気づいたのが午後4時30分。修正できるかどうかは、もう紙一重。まるで登記の神様に試されている気分になります。

依頼人の「ちょっと待ってください」爆弾

提出間際に依頼人から「すみません、やっぱりこの書き方で大丈夫でしょうか?」という連絡。はい、爆弾です。こちらとしては全体の流れを見て進めているのに、部分だけに不安を感じて差し込まれる。不安にさせた責任はこっちにもあるんですが、正直「今かい!」と突っ込みたくなります。

役所との時間との戦いが始まる

15時を過ぎると、時計の進みが異常に早く感じます。「今から行けば間に合うか?」「駐車場が混んでいたら終わりだな」「窓口の職員さんが混んでいたら…」。もう、登記の内容よりも交通状況と受付の混雑具合に神経が削られている自分がいます。司法書士って、実は申請よりもタイムアタックの職業かもしれません。

午後4時59分、その一分にかける緊張感

申請書類を持って窓口に滑り込む瞬間、心の中ではいつも「お願いだからまだ開いていてくれ」と念じています。時計は16時59分。カウンターのシャッターが閉まりかけているのを見て、ダッシュ。これがほぼ毎月数回はある。これを読んで「そんなことある?」と思った方、それが現実です。

カウンター越しの冷たい視線とこちらの焦り

窓口職員さんも人間です。定時になれば帰りたい。そんな気持ちは痛いほどわかります。でもこっちも必死。閉まりかけたシャッターをくぐって「すみません!申請お願いします!」と言ったときの職員さんの顔が忘れられません。冷たいというより、「またか…」というあきれ混じりの視線。でも、それでも受け取ってくれるのです。

「間に合いましたよ」の一言で救われる瞬間

書類をパラパラと確認して、「はい、大丈夫です。間に合いましたよ」。この一言で、全身の力が抜けます。何ならその場で座り込みたいぐらい。申請が終わっただけで、心から「今日は頑張った」と思えるのが司法書士という職業。達成感と疲労感がセットでやってくるのです。

でも内心は「なんでこんな思いを…」

表向きは笑顔で「ありがとうございます」と言いつつ、内心は「なんでここまでしなきゃいけないのか」という思いが渦巻く。理不尽だなあと感じることも正直あります。でも、これはこの業界の習慣というか、文化みたいなもので、誰も文句を言わないだけ。たまに愚痴っても、結局また走る自分がいます。

職員の優しさに救われることもある

中には「まだ開けときますよ」と声をかけてくれる職員さんもいます。そういう方に当たると、泣きたくなるほどありがたい。人の優しさって、疲れているときに一番響きます。でも、その優しさに甘えすぎると自分がダメになるような気もして、複雑な気持ちになります。

閉庁時間過ぎても対応してくれる方々

一度、17時3分に到着してしまったときのこと。完全にアウトだと思ったけれど、「いいですよ、出しておきますから」と対応してくれた方がいました。その日は帰り道でコンビニに寄って、アイスを買って一人で祝杯。そういう日のことは、一生忘れません。

でも「甘えてはいけない」という自戒も

優しくしてもらうほど、「次はもっと余裕を持たなきゃ」と思います。けれど、その「余裕」は、どこを削れば生まれるのか。業務量を減らす? 無理です。依頼を断る? 無理です。結局、自分がもっと早く動くしかないんですよね。それが一番難しい。

一人事務所の限界とリスク

うちの事務所は、私と事務員さんの2人だけ。つまり、私が動けなければ業務は止まります。事務員さんに申請を任せられる内容もありますが、結局最後は自分がやらないと済まない案件ばかり。プレッシャーも責任も全部自分持ち。そりゃ疲れますよ。

自分が走らなければ誰も走ってくれない

風邪をひこうが、親戚の葬儀があろうが、登記は待ってくれません。ちょっと無理してでも動かないと、誰かが困る。だから今日も走る。でもふと思うんですよね、「誰が自分のことを守ってくれるんだろう」って。誰も守ってくれないから、自分で何とかするしかないってだけの話です。

事務員さんにも無理はさせられない

うちの事務員さんは本当に優秀。でも、彼女にも家庭があるし、無理を強いることはできません。だから「これお願い」と言いたくても、結局「いや、俺がやろう」ってなってしまう。人を雇うって、任せることだと思ってたけど、実際は逆。気を使って、守って、負担を減らすようにして…ってこっちの負荷が増えるばかり。

体力勝負、メンタル勝負の毎日

司法書士の仕事は、書類作成というデスクワークだけじゃありません。移動も多いし、クライアントとの調整も地味に神経を使う。正直、40代後半に入って、疲れが抜けにくくなってきたのを実感しています。体力が落ちると、気力も落ちる。そして、ミスが怖くなる。そんな悪循環との戦いです。

今後のためにできることはあるのか

毎回ギリギリで申請するたびに、「今度こそ早めに動こう」と思う。でも、同じことの繰り返しになる。改善したいという気持ちはあるのに、なぜか動けない。だからこそ、自分なりに少しずつ変えていくしかないのかなと、最近は思うようになってきました。

余裕を持った進行なんて理想論?

理想としては、すべての案件を3日前には仕上げ、1日前には提出、当日はのんびり。そんなふうにいけばいいんでしょうけど、現実は次々と依頼が飛び込んでくる。1件終われば2件増える。それが現実。理想と現実のギャップに、何度心が折れたかわかりません。

「午前中に出せばいい」なんて無理な話

事務作業や相談対応が午前中に集中する日も多く、午前中に申請を終えるなんて夢のまた夢。特に月末や週明けは大混雑。午前中に出すためには、前日深夜まで準備を終わらせないといけない。でもそれをすると、次の日に体が動かなくなる。もう、どこかを妥協するしかないんです。

それでも小さな改善を積み重ねるしかない

だから、無理をして一気に変えようとするのはやめました。「今日は15分早く事務所を出る」とか、「申請予定を1日早くカレンダーに入れる」とか、そういうレベルからの見直し。それでも、小さな変化が積み重なれば、いつかは「4時59分の攻防」ともおさらばできるかもしれません。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

未分類