感情の波に飲まれて疲れた日

感情の波に飲まれて疲れた日

他人の気分で自分の一日が決まる理不尽さ

朝の機嫌が悪い人に会うと、こっちのやる気まで削がれる。司法書士という仕事は書類と向き合っていれば済むわけじゃない。相手の不安、怒り、焦り、時には理不尽な怒鳴り声すらも受け止めなければならない。そんな日々のなかで、自分の感情のコントロールがどれだけ難しいか、身をもって知っている。今日もまた、他人の不機嫌に心をかき乱されて始まった。

朝から不機嫌な相手に出会うと調子が狂う

ある日の朝、登記相談に訪れた依頼人がいきなり「朝から機嫌悪いんだよ」と言ってきた。その一言にすべてを持っていかれた気がした。こちらは笑顔で迎えたつもりなのに、開口一番それでは、立て直すのに気力がいる。いつも通りの手続きを説明するだけで疲労感が倍増する。相手の感情の渦に巻き込まれると、自分が持っていたペースはすぐに壊されてしまう。

笑顔で対応しても伝わらない虚しさ

何度も経験していることだが、こちらがどれだけ丁寧に笑顔で対応しても、相手が心を閉ざしているとそれは届かない。まるで分厚いガラス越しに話しているような気分になる。特に、何か問題を抱えて相談に来る人ほど、余裕がない。こちらにとってはルーティンでも、相手にとっては不安の塊。だからこそ誠意をもって対応するが、その虚しさに胸がつまる。

「機嫌が悪い人に引っ張られるな」と自分に言い聞かせる

そんなとき、自分に言い聞かせるようにしている。「相手の不機嫌は、自分の責任じゃない」。だが、そう割り切れたら苦労はしない。元野球部の頃、監督の機嫌をうかがって動くのが上手だったせいか、今でも人の顔色を読んでしまう癖が抜けない。プロとして冷静でいたいのに、感情に引きずられてしまう。それが一番疲れるのだ。

事務員の愚痴にも付き合わざるを得ない日

自分ひとりならまだしも、事務所には事務員が一人いる。彼女もまた、感情を持つ人間だ。毎朝、私より早く出勤して、掃除から始めてくれているのはありがたい。でも、たまに始まる長い愚痴や「なんで私ばっかり」の空気に、正直ついていけない時がある。こっちは心がすり減っていても、顔には出せない。気遣う側の疲労は、意外と誰にも理解されない。

気を使う側がいつも損をしている気がする

結局、気を使う方がいつも損をしているような気がする。怒鳴ったり不機嫌をぶつけたりする側が得して、黙って我慢する方が消耗する。なんで世の中ってこうなんだろう。元来「場を和ませるタイプ」と周囲に言われてきたが、司法書士としてそれを続けていたら、どんどん自分をすり減らすだけの存在になってしまった気がしてならない。

頼られているのか都合よく扱われているのか

気づけば、「◯◯先生、これやっといてください」と簡単に頼まれるようになっていた。もちろん責任者だから当たり前とも言えるが、「都合よく使われているだけなのでは?」と疑いたくなる時もある。頼られているのと、使われているのとでは、似ているようで全く違う。その境目が分からなくなると、自分の存在意義まで見失いそうになる。

電話一本で崩れる心のバランス

午後になってようやく落ち着いてきたと思った頃、一本の電話が入る。「急ぎなんですが、今日中にできますか?」という一言。その口調には焦りと苛立ちが混じっていて、こちらの事情など一切考慮されていない。心の中でため息をつく。こちらも人間だ。相手の不安や苛立ちをぶつけられてばかりでは、気持ちのバランスも壊れてしまう。

相手の焦りに巻き込まれてこちらまで落ち着かなくなる

焦っている相手の対応をしていると、自分まで落ち着きを失ってくる。不思議なことに、電話の声ひとつでこちらの脳内がざわつき始める。元々そんなに動じない性格だったはずなのに、最近は些細な声のトーンや間に、敏感に反応してしまう。これはきっと、疲れている証拠だろう。焦っているのは相手なのに、まるで自分のミスのように感じてしまう。

「すぐやれますよね」と当然のように言われるプレッシャー

一番しんどいのは、「すぐできますよね?」という当然の圧力だ。それが言外にあっても、感じ取ってしまう。心の中では「無理だ」と叫んでいるのに、「はい、検討してみます」としか返せない自分がいる。その瞬間から、また一つ予定が狂い、残業が確定する。そんな小さな積み重ねが、感情の疲れをどんどん膨らませていくのだ。

感情をコントロールするのは簡単ではない

「冷静に対応すればいい」「感情に巻き込まれないように」などとよく言われるが、実際に現場にいるとそんな余裕はない。人と接する以上、感情のやりとりは避けられないし、こちらが鉄のメンタルを持っているわけでもない。日々、書類の山と感情の波、その両方に追われているような気分になる。

元野球部でも耐えがたい感情の疲労

高校時代、野球部のしごきには耐えられた。炎天下のノックも、理不尽な罵声も、それなりに笑い話にできた。でも、今のこの「感情に巻き込まれる疲れ」は、それとは質が違う。肉体的なきつさではなく、終わりの見えない精神の摩耗。やっぱり、大人になるってしんどい。誰も正解を教えてくれないまま、それでも前に進むしかない。

怒らず笑顔で受け流すのが正解なのか

怒らず、笑顔で対応していれば丸く収まる。それは確かに正解かもしれない。でも、それが「自分を殺すこと」だとしたら、本当にそれでいいのかと思う時がある。自分の感情を押し殺して、相手に合わせる。そればかりが癖になってしまうと、いつか壊れてしまう気がしてならない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓