気づけば、ボールペンの替え芯がまたひとつ空になっていた
仕事が終わった夜、ふと引き出しを開けると、使い終わったボールペンの芯が3本も転がっていた。「ああ、また今月もこんなに書いたのか」と思う反面、「これだけ働いて、自分は何か満たされたのか?」と胸の中で声がした。書類を仕上げるたび、心のどこかが削れていくような感覚に気づかないふりをして、今日もまたペンを取る。替え芯はまだある。でも、心の余白は、どうだったろうか。
インクの減りは働いた証か、それとも無駄な焦燥か
「それだけ仕事してるってことだよ」と言われれば聞こえはいいけれど、実際にはそのほとんどがルーティン。報告書、登記申請書、契約書。一つひとつの業務に意味はある。でも、その“意味”を感じる余裕がこちらにはない。インクが減るたびに、やりきった充実感よりも、「また時間が過ぎてしまった」という焦りだけが残る。働いているという実感はあっても、生きているという実感は薄れていく。
書類の山に埋もれる日々の中で
登記の締切、依頼人からの問い合わせ、役所との調整。気づけば机の上には書類の山。その一枚一枚を裁くたびに、自分の中から何かが少しずつ削られていく。まるでボールペンの芯のように。朝に感じた小さな違和感や疲れも、昼には無理やり飲み込んで、夜にはもう思い出せない。ただ「処理を終えた」という実績だけが残り、感情はどこかへ置き去りにされていく。
誰も褒めてくれない頑張りの先にあるもの
「ちゃんとやって当たり前」なこの仕事では、誰かに褒められることなんて滅多にない。たまに感謝されても、それが次の依頼に繋がるわけでもなく、ただ「助かったよ」で終わる。それでいい。でも、自分の中では何かが枯れていくのがわかる。誰にも評価されない頑張りを積み重ねることに、どれほどの意味があるのかと、深夜の帰り道でつい考えてしまう。
「効率化」とは言うけれど、現場は今日も手書きまみれ
テクノロジーが進んでも、司法書士の現場には“紙”がついて回る。電子化は進んでいると言われるけれど、結局、申請書は手書き、書類確認も紙。地方の役所はFAXすら健在だ。そんな状況で「もっと効率よくやればいいじゃん」と言われても、こちらとしては「じゃあ、現場見てから言ってくれ」と言いたくなる。理想と現実のギャップに疲れ、今日もまたペンを握る。
時代遅れな仕組みに振り回される現実
都心の事務所なら違うのかもしれない。でも、ここは地方。ネット環境も人材も限られていて、手作業での確認が多い。法律は改正されているけれど、実務はなかなか変わらない。新しい仕組みに合わせようとするほど、逆に手間が増えることもある。そんな非効率な作業に時間を奪われるたび、「これ、本当に必要なことなのか?」と疑いたくなる。
電子化の波に乗り切れない田舎の司法書士事務所
「IT化で業務効率がアップ!」なんて話をニュースで見るたびに、「それ、うちには関係ないやつだ」と心の中で突っ込む。行政書士や税理士のようにシステムが整っているわけでもなく、結局は地道な手作業。田舎の司法書士には、電子の波はまだ届かない。だからこそ、自分の体と気力がすべての原動力。効率化どころか、毎日が綱渡りなのだ。
手続き一つに、何枚の紙が必要なんだろう
登記申請一件に必要な書類。委任状、印鑑証明、登記原因証明情報、固定資産評価証明書…。それに加えて、念のための控え、補正に備えた予備、そして訂正印のための別紙。気づけば、ひとつの仕事で10枚以上の紙を使っている。環境に悪いとか言ってる余裕はない。こっちはただ、ミスなく早く終わらせたいだけ。でもそのたびに、自分の中の「納得感」は少しずつ減っていく。
事務員さんが辞めたら、すべてが止まる
今、僕の事務所はたった2人で回している。事務員さんが1日休むだけで、処理が2倍になる。もし辞められたらと思うと、正直ゾッとする。信頼してるし、感謝もしている。でも、頼り切っている自分に気づくと、情けなくなることもある。司法書士の仕事は個人の力量だけで成り立つものじゃない。支えてくれる人がいるから、かろうじてバランスが取れているだけなのだ。
少人数体制のギリギリバランス
電話を取りながら、申請書のミスをチェックし、来客にも対応する。そんなマルチタスクな日々に慣れてしまったけれど、それは“慣れた”のではなく“諦めた”に近い。人を増やせばいい。でも地方の司法書士事務所に、応募があるわけもなく。誰かが倒れたら、すべてが止まる。そんなギリギリの綱を、毎日渡っている感覚なのだ。
「先生」と呼ばれても、内情は綱渡り
外から見れば「先生」と呼ばれ、それなりにしっかりしてそうに見えるかもしれない。でも現実は違う。人手不足、業務過多、資金繰りの悩み。どれも“経営者”としての肩書きの裏側にあるプレッシャーだ。愚痴をこぼす相手もいない。だから、せめてこの文章の中でだけは言わせてほしい。「誰か、少しだけ肩を貸してくれ」と。
続きの見出し例(以下を追記可能です)
- 気づかないふりをしていた心の摩耗
- 独身の寂しさは、仕事で埋まるわけじゃない
- それでも、この仕事を選んだ自分を責めたくない
- ボールペンが止まる日、心にも少しの余白を