司法書士の裏側、ちょっと話します ― モテない僕のささやかな告白

司法書士の裏側、ちょっと話します ― モテない僕のささやかな告白

誰も教えてくれない司法書士のリアル

司法書士というと、「安定していて、堅実で、信頼できる職業」といったイメージを持たれがちです。たしかに、資格が必要で、それなりの専門性も求められます。でも、その裏側は想像以上に泥臭く、精神的な負担も大きい仕事です。人からの信頼を得るのと引き換えに、自分の感情を押し殺すこともしばしばあります。そして、誰にも愚痴をこぼせない孤独な立場。そんな現実を、少しだけお話ししてみようと思います。

「安定してそう」って言われるけど、その実態

「資格あるし、食いっぱぐれないでしょ?」とよく言われます。でも実際には、業務量に波があり、月によって収入も変動します。依頼が重なると土日も関係なく働かねばならず、逆に閑散期は不安に押し潰されそうになる。特に地方だと新規の依頼も限られ、競合との争いも地味に続きます。安定という言葉とは程遠い、綱渡りのような毎日です。

開業したら勝ち組?そんなに甘くない現実

「独立したら自由でしょ?羨ましい」と言われるたび、心の中で苦笑します。実際には、自由どころかすべての責任が自分にのしかかります。ミスひとつで大損害になる世界。電話が鳴るたび胃が痛くなり、夜中にふと目が覚めて「登記漏れしてないか?」と確認することも。自由とは、孤独と責任の裏返しなのです。

「先生」と呼ばれることの重さと虚しさ

「先生」と呼ばれると一見、立派に見えるかもしれません。でもそれは、人格まで立派であれと期待されているようなもの。疲れていても、機嫌が悪くても、いつでも完璧でなければならない。そう思い込んでしまうと、どんどん自分を押し殺してしまいます。最近は「先生」ではなく、ただの一人の人間として見てほしいと思うようになりました。

地方でひとり+事務員、これが限界のライン

僕の事務所は地方にあり、事務員さんはひとりだけ。つまり、僕が倒れたら業務は完全にストップします。繁忙期になると、朝から晩までひたすら書類との格闘。お客様に怒鳴られることもあれば、法務局から細かい指摘をもらうことも。なのに、それを誰かと分かち合えるわけでもなく、ただ一人で受け止めるしかありません。

事務員さんが休む日の絶望感

ある日、事務員さんが体調を崩して休んだことがありました。その日は登記申請の締切が重なっていて、電話応対、書類チェック、郵送、法務局とのやり取り…すべて僕一人で回しました。終業後、疲れ果てて事務所のソファで寝落ちしてしまった自分を見て、「このままでいいのか?」と本気で思いました。

「誰か手伝ってくれ」と叫びたくなる瞬間

時には、「もう無理だ」と思う瞬間もあります。特に、同時に複数案件が進んでいて、しかもトラブルが発生しているとき。電話が鳴るたび、「今だけは誰か代わってくれ」と願う。もちろん誰も代わってはくれません。そんなときは、机の下に頭を突っ込んで深呼吸するのが、僕なりの乗り越え方です。

モテない司法書士の人生模様

「モテなさそうですね」と冗談混じりに言われることがあります。正直、冗談でも心に刺さります。婚活もしたし、マッチングアプリもやってみました。でも、土日が潰れがちな生活、家に持ち帰るプレッシャー、そして疲れた顔。そんな僕を選んでくれる人はなかなかいません。

お見合いもマッチングアプリももう疲れた

30代の頃は何度もお見合いや婚活パーティーに参加しました。プロフィールに「司法書士」と書くと、最初の印象は悪くありません。でも、仕事の話をすると「難しそう」「忙しそう」と距離を取られるのが現実。最後には「やっぱり趣味が合わないですね」で終了。今ではもう、スマホに恋愛アプリを入れる気力もありません。

「仕事が好きなんでしょ」と言われる寂しさ

一番辛かったのは、ある女性に「仕事が恋人なんでしょ」と言われたとき。「あなたにとって私は必要ないですよね」とも。もちろんそんなつもりはなかった。でも、いつも忙しそうな僕を見て、そう思わせてしまったんだと思います。仕事に打ち込む姿が、誰かを遠ざけることもあるんだと知りました。

土日も出勤、気づけば誰とも話していない週

一番孤独を感じるのは、土日も仕事が入っているとき。外出は法務局とコンビニのみ。電話はクライアント対応だけ。気がつけば一週間、プライベートな会話を一言もしていない。自分がどんどん「司法書士」という役割だけになっていくようで、不安になります。

「優しいけど面白みがない」と言われて

過去に付き合った女性に言われた一言が今も残っています。「優しいけど、なんか面白みがないんだよね」と。きっと、疲れている僕は、会話も無難に済ませることばかり考えていたのでしょう。笑わせたいと思っても、心に余裕がないと難しい。結局、優しさだけじゃ誰かの心には届かないのかもしれません。

人に頼られる仕事なのに、心は置いてけぼり

仕事では「ありがとう」「助かりました」と言われることもあります。でも、それが心に染みるかというと、そうでもない時があります。誰かの力にはなれても、自分の心が空っぽになっていく感覚。誰にも弱音を吐けず、誰にも甘えられず、ただ機械のように働く日々。司法書士は、頼られる分だけ、孤独も大きい仕事です。

それでも司法書士を続ける理由

こんなにも愚痴をこぼしながら、それでも続けているのはなぜかと考えることがあります。やっぱり、誰かの人生に関われることの重み。言葉ではなく、書類で誰かを支えるという不思議なやりがい。それが、僕を今日も机に向かわせているのかもしれません。

書類の山に意味を見出す日々

登記や契約、相続や会社設立。どれも書類中心の仕事。でも、その一枚一枚が誰かの人生の節目なのです。結婚して名字が変わった、親が亡くなって相続が始まった、会社を始めようとしている――そんなタイミングに関われること。それだけで、この仕事には価値があると思えます。

誰かの人生の節目に立ち会える仕事

ある日、初めて会社を設立するという若者が来所しました。緊張した様子で、「これで間違ってないでしょうか」と何度も確認してきました。登記が完了したときの彼の笑顔を見て、「ああ、この仕事は悪くない」と思えたのを覚えています。書類を通して、人の夢や節目を支える。そんな仕事、なかなかありません。

「ありがとう」が唯一のご褒美

僕たちの仕事には、派手な成功や拍手喝采はありません。でも、「ありがとう」と深く頭を下げてもらえた瞬間、それだけでやってきた意味があると感じます。誰にも気づかれない努力でも、それを感じてくれる人がひとりでもいれば、もう少しだけ頑張ってみよう。そう思えるのです。

これから司法書士を目指すあなたへ

僕みたいな愚痴の多いおじさんの話が、これから司法書士を目指す人の役に立つかはわかりません。でも、現実を少しでも伝えておきたいと思いました。華やかさはなく、孤独も多いけれど、それでも人の役に立ちたいと思えるなら、きっとやっていける仕事です。

孤独と戦える覚悟があるなら

司法書士という仕事には、孤独がついて回ります。でもその孤独と向き合いながら、誰かのために役立つことができたとき、その瞬間だけは満たされる感覚があるのです。その感覚を支えにできる人なら、司法書士という職業は合っているかもしれません。

それでも向いてる人は、確かにいる

地味で、派手さはなくて、日々の仕事は単調。でも、それでもこの仕事を好きだと思える人がいるのも事実です。もしあなたが、そういう人なら。僕のような弱音を吐きながらも、それでも続けている司法書士に、きっとなれると思います。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。