忙しさの中で恋愛は後回しになる
朝から晩まで書類に囲まれ、依頼者とのやり取りに追われる毎日。地方の司法書士として独立したものの、「好きな時間に働けていいね」と言われても、その実態は「好きな時間に働くしかない」現実だ。そんな生活をしていると、当然のように恋愛は後回しになる。気づけば、久しぶりに異性と会話したのは役所の窓口だった、なんてこともザラだ。
そもそも出会いがない司法書士の現実
一人事務所に事務員さんが一人。毎日、顔を合わせるのはほぼこのメンバー。そもそも婚活市場にすら立っていない状態である。士業仲間との飲み会でも、話題は不動産登記か相続の愚痴ばかり。恋の話なんて、ほとんど出てこない。結婚相談所に登録してみようかと思ったこともあったが、写真を撮るのが億劫で、結局放置したままだ。
仕事と恋愛の天秤はいつも片方に傾く
一度だけ、無理して時間を作ってデートしたことがある。土曜日、午後の面談を断って出かけた。でも、頭の片隅では「この分の売上どうしよう」がずっとチラついていた。結局、心ここにあらずで相手にも伝わったのだろう。関係は自然消滅した。恋愛と仕事、どちらも大切にしたいと思っているはずなのに、なぜか選ぶときはいつも仕事を取ってしまう。
電話が鳴ればデートも中断される生活
焼肉を食べている最中に不動産業者から電話が来て、外に出て対応したことがある。「すぐに連絡しないと登記が間に合わない」と言われれば、こちらとしても断れない。戻ると相手はデザートを一人で食べていた。そんなことが何度か続き、ある日「あなたとは将来が見えない」と言われた。電話一本で崩れる関係、それが自分の恋愛のスタイルなのかもしれない。
恋をしてもなぜか続かない理由
こちらが真面目に向き合おうとしても、どうしても途中で「何か違う」と言われてしまう。理由を尋ねても、はっきりとは教えてくれない。「ごめん、ちょっと重たくて…」とか「タイミングが悪かった」とか、どれも抽象的で納得いかないけれど、それが答えなのだろう。恋愛に必要なのは「誠実さ」だけじゃないと、痛感する場面が多すぎる。
相手にとって都合のいい存在になっていた
相談に乗るのが得意なのか、ただ聞き役になってしまうのか。よく「話を聞いてくれる優しい人」とは言われるが、それ以上に進展しない。気づけば、愚痴や悩み相談の相手どまり。都合のいい人、便利な人、でも恋人ではない。感情を出すのが下手で、相手に甘えることができない自分が、そこに拍車をかけているように思う。
嫌われないようにと下手に出す癖
恋愛初期、好かれようとして無理をしてしまう癖がある。断られたくないから、相手の希望に合わせすぎて、自分をどんどんすり減らしていく。結果的に、「本音が見えない」「一緒にいて疲れる」と言われて終わる。相手にとって心地よい存在でいたいはずが、なぜか「距離感がある」と言われてしまう。優しさと遠慮の境界線が、うまく取れないのだ。
恋愛も登記も丁寧すぎるのは損かもしれない
仕事では「念には念を」で細かく確認する。登記の漏れは許されないからだ。でも恋愛でそれをやると、「確認ばかりで進まない」「慎重すぎる」と捉えられる。仕事の癖が恋愛に持ち込まれているのかもしれない。確認癖、慎重さ、用心深さ。どれも悪いことではないのに、恋の場面では裏目に出る。皮肉なものだと思う。
恋愛のたびに契約解除を告げられる
恋が始まるたびに、いつか終わる未来が見えてしまう。だからこそ慎重に、誠実に向き合ってきたつもりだ。でも結果はいつも「ごめんなさい」か「やっぱり友達でいたい」。まるで契約更新の審査に落ちるような感覚だ。恋の終わりに「あなたは悪くない」と言われるたびに、「じゃあなぜ?」と一人問いかける夜が増えていく。
一方的に切られる関係の共通点
振られるときはいつも突然だった。メールの返信が急に遅くなり、会う約束が曖昧になり、気づけば「話がある」と言われるパターン。冷静に考えれば、前兆はあったのかもしれない。でもそれを見ないふりをしていたのは自分だ。関係を維持するために無理をしていたのは、相手ではなく自分だった。
好きな人ほど振り向いてくれない
好意を抱いた女性ほど、こちらを見ていない。振り向いてほしくて頑張れば頑張るほど、相手は遠ざかっていくような気がする。まるで高校時代、憧れのマネージャーに告白できなかったときのように。手を伸ばすと逃げてしまう、そんな不器用な片思いばかりを繰り返している。
真面目すぎてつまらないと言われた夜
「あなたは真面目すぎるのよ」と、ある女性に言われたことがある。仕事の話ばかりしていた自覚はある。でも、それが自分の世界の中心だったから、仕方なかった。ふざけ方がわからない男は、恋愛市場では不利なのかもしれない。けれど、ふざけられる余裕なんて、この生活にどこにあるのだろうか。
元野球部のプライドが邪魔をすることも
若い頃は、もう少し素直だったと思う。野球部で声を張り上げ、チームで戦っていた頃は、感情を出すことに抵抗がなかった。でも今は違う。弱音を吐くのも、誰かに頼るのも、どこか恥ずかしくてできなくなってしまった。司法書士という肩書きと、元野球部という変なプライドが、自分を窮屈にしているのかもしれない。
本音を言えない男は結局損をする
好きな人に「会いたい」とも言えず、デートの予定も「空いてたらでいいよ」と控えめに伝える。気遣いのつもりが、「本気じゃないのかな」と誤解されることもある。本音を言わずにいることが、相手の不安を生み、自ら関係を壊している。仕事では沈黙が信頼になることもあるが、恋愛では言葉がないと何も伝わらない。
頼られるけど求められない関係の虚しさ
相談はされるが、甘えられることはない。仕事で依頼者に頼られるのは嬉しい。でも、恋愛では「頼られる」ばかりでは寂しいものだ。自分も誰かに頼りたい、寄りかかりたいと願っているのに、その気持ちを見せることができない。強く見せようとするあまり、本当の弱さを隠してしまっている。
それでも人に優しくしたい理由
うまくいかない恋愛を繰り返しても、それでも人に優しくありたいと思う。誰かの手続きを丁寧にサポートしたり、不安を抱えた依頼者に寄り添う日々。それが司法書士としての自分であり、人としての自分でもある。恋愛においては不器用で報われないことが多いけれど、人を思う気持ちだけは大事にしていきたいと思っている。
誰かの人生に寄り添うのが仕事だから
登記や相続というのは、人生の節目に関わる仕事だ。結婚、離婚、死、相続、事業の始まりや終わり。そこに立ち会う仕事をしているからこそ、人の感情には敏感でいたい。たとえ自分の恋愛は失敗続きでも、依頼者の想いには応えたい。そんな矛盾を抱えながら、今日も机に向かっている。
たとえ恋に不器用でも誠実さは武器になる
恋はうまくいかなくても、人としての誠実さは、きっと誰かに届く。すぐには伝わらなくても、嘘をつかず、約束を守り、相手を思いやる。その積み重ねが、人生のどこかで報われることを信じている。契約解除される恋ばかりだったけれど、いつか「更新希望です」と言ってもらえる日が来ると信じて、今日も頑張っている。