繁忙期は戦場閑散期は無音心の起伏が激しすぎる

繁忙期は戦場閑散期は無音心の起伏が激しすぎる

繁忙期と閑散期のジェットコースター

司法書士事務所の仕事には、まるでジェットコースターのようなアップダウンがある。特に繁忙期と閑散期の落差はえげつない。忙しい時期には昼食を取る暇もないのに、閑散期になると誰からも連絡が来ない日が平気で続く。この切り替えに心がついていかない。ずっと忙しい方が辛いはずなのに、不思議と暇な時のほうが精神的にしんどくなる。そんな繰り返しに、毎年のように翻弄される。

事務所の空気が一変する瞬間

一年のうち、何度か「地獄の入口」が開くタイミングがある。例えば3月の年度末、12月の年末。急に電話が鳴り始め、メールが押し寄せ、依頼が雪崩のように舞い込んでくる。事務所の空気がピリッと張り詰める。「あ、来たな」と身構える。うちの事務員もそわそわし始める。ふだんはのんびりしてるけど、彼女の表情にも緊張が走る。

朝から電話が鳴り止まない日々

午前9時、電話のベルで一日が始まり、そのまま夜まで途切れない。対応の合間に申請書を作成し、役所とのやりとり、郵送物の確認…。一つ終わったと思ったら、次の案件。昼ご飯?夢のまた夢。野球部時代のダブルヘッダーの方がまだ楽だった。終業時間には体が鉛のようになっているのに、帰宅後も頭の中は依頼内容でいっぱい。眠れない夜もある。

静かすぎて不安になる季節

一方で閑散期。電話も鳴らない、来客もない。静かすぎて、逆に不安になる。まるで事務所が“社会から忘れられた存在”になったような感覚。SNSを見れば、他の事務所は元気そうで焦る。なのに、なぜかうちは暇。原因を探しても見つからない。焦って営業してみても空回り。事務所の空気が“動かない時間”に支配される。

気持ちの切り替えが追いつかない

この落差に対して、気持ちの切り替えが本当に難しい。繁忙期の緊張感が続いたと思ったら、次の日にはスカスカのスケジュール。そんな急な変化に、自律神経がやられてしまいそうになる。集中しようにも、心がついていかない。

急にスイッチが入らないタイプの人間です

自分でもよく思う。僕は、スイッチのオンオフが極端に苦手なタイプだ。エンジンがかかるまで時間がかかるし、一度止まったら再始動が遅い。周囲からは「もっと効率よくやれば?」と言われるけど、そんな簡単に割り切れたら苦労しない。気持ちのムラをコントロールできるようになりたいと思いつつ、いつも置いてけぼりにされている。

野球部時代のノックのほうがまだマシ

高校時代の野球部で、連続ノックを受けていた時は「つらいけど、終わると分かっている」から乗り越えられた。けど今の仕事は、ゴールが見えない。繁忙期が終わっても、「また来るぞ」と身構えてしまうし、閑散期には「このまま終わりかも」と思ってしまう。ノックのほうがマシだったなと、つい思い出す。

繁忙期のストレスが限界を超える

繁忙期には、何より「時間が足りない」という感覚が強烈だ。ひとつひとつの案件に向き合いたい気持ちはあるが、物理的に無理。作業の質が落ちるのではと焦る一方、スピードを求められるジレンマ。ストレスが肌に出るほど溜まってしまう。

依頼の山に埋もれて見失う自分

ある日、ふと鏡を見たら、自分の顔がどこか遠くを見ていた。「あれ、誰だ?」と思ったほど。依頼者の要望に応えようと必死になりすぎて、自分のペースや感情を置き去りにしてしまっていた。やりがいよりも「終わらせなきゃ」という義務感が勝ってしまうと、もうただの作業ロボットだ。

事務員さんもパンク寸前

うちの事務員も、繁忙期は顔色が悪くなる。お互いに「頑張ろう」と励まし合いながらも、どちらも余裕がないからピリつくこともある。余計な一言で空気が凍る日もあった。今は反省して、できるだけ感謝の気持ちは言葉にするようにしているけど、忙しさに飲み込まれると難しい。

「あと一件だけ…」が命取り

繁忙期には断りきれない案件も増える。「これだけなら」と引き受けた仕事が、実は大変な案件だったというのはよくある話。しかもそういう案件に限って、最後まで気が抜けない。結果、睡眠時間が減ってミスが増える。悪循環のループだと分かっていても、断れない性格が災いしてしまう。

感謝されることの少なさ

忙しく働いても、感謝の言葉をもらえることは稀だ。お金をもらっている以上、当然と思われているのだろうけど、やはり「ありがとう」の一言があるだけで救われるのに。それがないと、心が少しずつすり減っていく。

誰のためにやっているのか分からなくなる瞬間

自分は誰の役に立っているんだろう、と考え込んでしまう日がある。感謝されない仕事をこなしていると、存在意義すら見失いそうになる。特に、クレームだけはしっかり来るときなんか、「何やってるんだろう」と一気に心が冷える。

報酬と手間が釣り合わない仕事たち

手間の割に報酬が低すぎる案件も多い。書類の作成に何時間もかけたのに、報酬は数千円。手取りを考えたら、アルバイトのほうが稼げるんじゃないかとすら思うこともある。でも、やめられない。自分で選んだ仕事だからと、自分に言い聞かせている。

どうにかこの落差と付き合う方法

この仕事を続ける限り、繁忙期と閑散期の波からは逃れられない。だからこそ、どう付き合っていくかがカギになる。完全に解決はできなくても、少しでも自分のペースを取り戻す工夫はしておきたい。

自分なりのペース配分を探す

無理をしない、自分に合ったリズムを作る。そのために、予定を詰めすぎず、心と時間に余白を持たせるよう心がけている。たとえ一日中空いていても、「今日は何もしない」と決めた日も必要だ。

予定を詰めすぎない勇気

暇な時期にスケジュールを埋めたくなるのはわかる。でも、それが後の繁忙期にしわ寄せを生む。未来の自分を守るために、「あえて何もしない日」をカレンダーに書き込むようにしている。これが意外と難しいけど、大切な習慣。

閑散期こそ準備と整備の時間にする

申請テンプレートの見直しや、事務所内の書類整理、普段後回しにしていたことを、閑散期にやるようにしている。忙しくなると絶対できないことを片づける時間と割り切れば、不安も多少和らぐ。

同業とのつながりが救いになる

独立してから、ひとりで仕事を抱え込むことが多かった。でも最近は、同じ司法書士仲間との交流が心の支えになっている。愚痴を言い合える相手がいるだけで、だいぶ楽になる。

愚痴を言い合える相手のありがたさ

「ああ、それうちもそう」「分かる分かる」と言ってくれる人の存在は本当に貴重だ。内容が解決しなくても、気持ちが軽くなる。そんな仲間がいるだけで、この仕事を続けていけると思える瞬間がある。

一人で抱え込まないという選択

真面目すぎる自分にとって、「誰かに頼る」ことが苦手だった。でも、最近は「助けて」と言えることも一つのスキルだと思うようになった。完璧じゃなくていい。多少の不器用さも、自分の味だと受け入れるようにしている。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。