休むのが怖い理由は何なのか
世間では「休むことも仕事のうち」とよく言われるけれど、実際のところ休んでいても心が全然落ち着かない。地方の小さな司法書士事務所を一人でまわしていると、休む=仕事を止めるということになる。誰も代わりはいないし、何かトラブルがあればすぐに対応しなきゃいけない。「休みます」とカレンダーに書いても、頭のどこかで不安が常に点滅しているような状態だ。昔は野球部で「気合でどうにかなる」と思ってたけど、この年になると気合で解決しない不安が増えるばかりだ。
身体は休んでも心が動き続けている
例えば久しぶりに温泉に行こうと思っても、車を走らせてる途中で「登記の完了通知出したっけ?」「あの書類、もしかして漏れてない?」なんて考えが浮かんでしまう。風呂に浸かっててもスマホを確認してしまい、結果として何一つ癒されない。肉体的には確かに休んでいるのに、脳みそはずっと働き続けている。これって本当に「休んでる」って言えるのだろうか。
「あの案件、大丈夫だろうか」が頭から離れない
数日前に処理した相続登記の案件が、ちゃんと通っているかどうか、依頼者に誤解を与えるような説明をしてないか、郵送した書類がちゃんと届いたか…。次から次へと心配が押し寄せてくる。特に夜寝る前に思い出すと、もうダメだ。布団に入っても眠れなくなる。疲れてるはずなのに、余計な不安が頭の中で渦巻いて、全然休まらない。
忘れるためにスマホを見るのが逆効果だったりする
不安を紛らわせるためにSNSを開いてみたら、同業者が「今日も無事に終わりました」とか「素敵な休日でした」なんて投稿してて、余計に落ち込む。自分はなんでこんなに不安なんだろう?って。スマホって便利だけど、安心にはつながらないんだよなって、最近つくづく思う。
そもそもちゃんと休めていない
そもそも「今日は休もう」と決めていても、仕事の電話が鳴ると無視できない。たとえそれが営業の電話でも、もし依頼者だったらと思って出てしまう。そして、電話の内容次第では一気に現実に引き戻されてしまう。何もしていない時間に罪悪感を抱いてしまう自分がいる。「今、誰かが困ってるかもしれない」と思うと、ついPCを開いてしまうのだ。
「これ休みって言えるのか」と自分で思ってしまう
一応「休み」とは言っても、メールはチェックしてるし、LINEにも返信してる。気になる案件の登記情報を法務局のページで確認したりもする。「休む」と言いながら仕事の延長線上にいる自分に、ふと嫌気が差す。これじゃあ平日と何が違うんだろうって。ちゃんと休んでる人がうらやましく見えるけど、実際それができない自分が一番つらい。
結局どこかで仕事のことを考えてしまっている
「何も考えない日を作ろう」と意気込んだこともある。でもそれは無理だった。昼飯を食べながらも「次の案件、書類どうするか」って思い出してるし、テレビ見てても司法書士ネタのドラマが流れると、つい真剣に見てしまう。頭が完全に仕事と繋がってしまってる。これはもう職業病というより、性格の問題なのかもしれない。
趣味すら「時間の無駄」に感じてしまうとき
昔好きだった草野球のチームにも、最近は参加していない。理由は単純で「時間がもったいない」と思ってしまうから。楽しんでる間にも「事務所の掃除しておけばよかった」とか「月末の請求書出してないな」なんて考えてしまう。趣味すら素直に楽しめない自分が、どんどん小さくなっていくような気がして怖い。
休むと不安になるのは甘えじゃない
よく「もっと肩の力抜いたら?」なんて言われるけど、それができたら苦労してない。独立してから10年以上、誰にも頼れずに一人で回してきたからこそ、ちょっとでも抜けるとすぐ不安が襲ってくる。仕事が止まれば収入も止まるし、信用も落ちる。田舎では特に、ちょっとした評判が仕事の明暗を分けることもある。
独立しているからこそ休み方がわからなくなる
会社勤めなら「有給とって休みます」で済む。でも自営業はそうじゃない。カレンダーに「休み」と書くのも、自分で決めなきゃならない。だけどその休みをとったことで、誰かに迷惑がかかったら…と考えてしまう。実際、休んでる日に限ってトラブルが起きたりするから、余計に休むのが怖くなる。
仕事量より「責任感」に潰されそうになる
たぶん、疲れている原因は仕事量そのものよりも、背負っている「責任感」なんだと思う。登記一つミスすれば信用問題になる。依頼者にとっては人生の節目だったりもするから、絶対に失敗できない。だからこそ気が抜けないし、結果としてずっと緊張している。これが何年も続くと、疲れも積もり積もっていく。
悪循環から抜け出すためのささやかな工夫
最近、自分なりにこの「休めない悪循環」から抜け出すための工夫を少しずつ始めている。完璧にはできないけど、「ちょっとでもマシにする」くらいの感覚がちょうどいい。急に全部変えようとすると、それがまたプレッシャーになるから。
まずは休みを「予定」に入れてしまう
カレンダーに「休み」と書いても守れなかったので、「友人と昼飯」「通院」など、具体的な予定を先に入れるようにした。それだけで休む理由が生まれるし、罪悪感も少し減る。誰かと予定を合わせるっていうだけで、「自分だけの判断じゃない」って思えるから不思議と気が楽になる。
誰かと予定を入れると休む理由になる
最近は昔の野球仲間と月に一度会うようにしている。話の内容はほとんどがどうでもいい雑談だけど、それでも十分。予定があるから事務所も閉められるし、何より「その日を守る」という意識が強くなる。強制力が少しだけあると、休むハードルが下がる。