出張帰りに話し相手がいない夜に考えること

出張帰りに話し相手がいない夜に考えること

出張の帰り道に感じる孤独

仕事で出張することも多い。都会のビル街を抜けて、最終の新幹線や高速道路で地元へ戻るたびに、ふとした瞬間に押し寄せるのが「孤独」だ。成果を出してクライアントに感謝されても、それを語る相手がいない。たとえ話をしたくても、帰りの車の助手席は空っぽだし、電話をかける先もない。そんな夜は、妙に疲労が重く感じられる。昔は打ち上げに行ったり、同期と居酒屋でくだを巻いたりできたけれど、今はただ静かに、AIが相手のナビだけが喋っている。

車窓に映る自分の顔に思うこと

新幹線の窓ガラスに映る自分の顔を見て、「老けたな」と思う。20代の頃は希望や野心でパンパンだった顔が、今はどこかやつれている。周囲の乗客は寝ていたり、誰かと楽しそうに話していたりするのに、俺は黙ってスマホを見るだけ。SNSを開いても、誰かの幸せそうな投稿が目につくだけで、何も心は動かない。誰かに「今日どうだった?」って聞いてもらえたら、それだけでずいぶん救われるんじゃないかと、心の中でつぶやいてみるけれど、返事はもちろんない。

「なんでこんなに疲れてるんだろう」とつぶやく帰り道

出張先では一生懸命だった。契約書のチェック、登記の説明、依頼者との調整。誰からもクレームはなかったし、むしろ感謝された。でも、なぜか帰り道は足取りが重い。肩がずっしりと重く、足元がおぼつかない。「なんでこんなに疲れてるんだろう」と、口に出しても答えは出ない。肉体よりも、心がすり減ってる。達成感ではなく虚無感がある。達成の先に誰かと共有できる時間がないと、こうまで虚しいものなのかと知る。

話し相手がいないことの現実

独身で地方に住んでいて、仕事もプライベートも一人。日々誰かと話す機会はあっても、それは「業務上」の会話だ。本音や感情を交えることはない。せめて昔の同級生にでも電話すればいいのだろうが、今さら何を話せばいいか分からない。夜中にAIスピーカーに「今日も頑張ったよ」と声をかけたところで、「お疲れさまでした」と返ってくるだけ。誰かと感情を分かち合うことの価値を、失ってから気づくのは、少し遅すぎた気がする。

仕事は順調でも心は晴れない

司法書士という仕事は、社会的には「安定職」だと言われるし、周りからも「しっかりしてる」と思われがちだ。でも、実際はどうだろう。案件が増えて事務所も忙しくなればなるほど、逆に感情はどんどん削られていく。嬉しいことも、誰かに腹が立ったことも、どこにも吐き出せないまま溜まっていく。心の整理も追いつかないまま、ただ次の案件がやってくる。そんな繰り返しが、淡々とした孤独を育てていく。

誰にも話さない成功談はどこへ行くのか

「あの登記、無事に完了しました」と伝えたときの相手の安心した顔。それを見て、こちらも安堵する。だけどその瞬間を誰かと共有することができない。飲みに行って「今日はさ、ちょっと大変だったけどさ」と語れる相手がいない。自己完結で終わる日々。褒めてもらいたいわけじゃないけど、誰かに「頑張ったね」って言ってもらえるだけで、こんなに救われるんだと、たまに夢で昔の上司に褒められる場面を見ると実感する。

「AI相手にしゃべってる自分」が怖くなる瞬間

「今日の天気は?」「ニュースは?」そんな音声操作のはずが、最近はAIスピーカーに話しかける頻度が妙に多い。「疲れたな」「俺、変かな」などと独り言をつぶやくようになり、それをAIが無言で受け止める。ある晩、ふと我に返って「やばいな俺」と苦笑いした。誰かに話せる時間があれば、こんな風にはならなかったかもしれない。だけど現実は、AIが一番返事をくれる存在になってしまっている。それが一番の問題かもしれない。

司法書士としての孤独な戦い

士業という仕事は、専門性が高い分だけ責任も重い。間違えたらすべて自分の責任。ミスが許されない世界で、毎日が緊張の連続だ。そんな世界で、一人で踏ん張っていくのは、思っている以上に心が擦り減る。仕事の愚痴を言える相手がいればまだ救われるが、事務員さんには気を遣うし、同業者には弱音は見せにくい。「話せる相手がいない」ことが、どれだけストレスになるかを実感する日々だ。

事務所では頼られるけど

事務員さんから「先生、これで合ってますか?」と聞かれるたび、「うん、それでいいよ」と答える。でも、その一言の裏には、「もし間違ってたら…」という重圧がのしかかっている。信頼されることはありがたいが、そのぶんの責任はすべてこちらに来る。だからこそ、感情の逃げ場が必要なのに、それすらない。自分が倒れたら、この事務所は止まってしまうというプレッシャーが、ひたすら重たい。

「先生、決済終わりました」の一言が救い

事務員さんが笑顔で「先生、無事に終わりました」と言ってくれる。その一言が、どれだけの救いになるか。たった一言でも、誰かが安心した声をかけてくれることで、「やっててよかったな」と思える。だけどそれをそのまま心に留めるしかないのが、また切ない。誰かとその喜びを共有できるだけで、孤独感はずいぶん軽くなるのに、それが叶わない今の状況が、じわじわと心を冷やしていく。

事務員さんとの距離感に悩む

事務員さんは信頼しているし、感謝もしている。ただ、あまりに近づきすぎると仕事がやりにくくなるし、距離を取りすぎると逆に冷たくなる。このバランスが難しい。気軽に愚痴を言える間柄でもないし、プライベートな話題も控えている。だから、職場でのコミュニケーションも限定的になる。こんな時、ふと「誰かに本音を言いたい」と思ってしまう。だけどそれを言える相手がいない。それがまた苦しい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。