ミスしないってほんとに難しいと思う日

ミスしないってほんとに難しいと思う日

完璧を求められるプレッシャーの中で

司法書士という仕事は、とにかく「ミスをしないこと」が当たり前とされる職業です。登記にしても、書類作成にしても、少しの間違いが依頼人の不利益につながりかねない世界。たまに「一文字ぐらいなら大丈夫でしょ」と軽く言われることもありますが、私たちにとってはその一文字が命取りです。正確性がすべて、でもそれを完璧に保ち続けるのって、正直つらい。元野球部だった私は、当時は「一球のミスが命取り」とよく言われましたが、今では「一筆のミスが命取り」になってます。プレッシャーって、グローブより重いもんですね。

司法書士という仕事に付きまとう「正確さ」

どんな仕事でもミスは許されないと言われがちですが、司法書士の世界はそれが特に顕著です。特に不動産登記などでは、誤字脱字すら笑い事では済みません。過去に「新宿区」とすべきところを「新宿町」と誤記し、法務局に提出した際、差し戻しを食らったことがありました。依頼者から「何してるんですか」と詰められ、胃がキリキリしたのを今でも覚えています。結局、訂正書を作って再提出。時間も労力も余分にかかり、何より「信用」を失った気がして、あの時は家に帰って焼酎を一人で空けました。

たった一文字の違いが大問題になる世界

ある日のこと、会社の商号変更に関する登記申請書を作成していたとき、「株式会社○○」のところを「株式會社○○」と旧字体で記入してしまったことがありました。昔ながらの会社だったため、会社印も旧字体だったので、違和感がなかったんです。でも、法務局からは「これは旧字体ではなく常用漢字で」と指摘され、結局再提出。しかも依頼者が急ぎの案件だったため、めちゃくちゃ怒られました。漢字一文字でここまで空気が変わるのかと、痛感した出来事です。たかが一文字、されど一文字。それがこの業界の怖さなんです。

実際に起きた登記申請ミスとその後始末

そのときは、すでに登記完了予定日も伝えていたので、依頼者の期待値も高かったんです。なのに訂正のために数日遅れ、平謝りしても「そっちのミスでしょう?」と冷たく返されました。修正後の書類を再提出するまでの間、何度も法務局に足を運び、電話で確認し、夜中にこっそり事務所でチェックを繰り返しました。こんなふうにして、たった一つのミスが、何日もの負担を生む。精神的にもきついし、何より「またミスしたらどうしよう」と怖くなる。ミスってほんと、連鎖するんですよね。

「確認したはずなのに」では通用しない現実

一応、提出前には何度も見直すようにしています。でも、見慣れた書類って、目が慣れすぎて間違いを見逃すんです。「確認したはず」が「確認したつもり」になってることに、あとから気づく。特に疲れているときや、他の案件で気が散っているときは危ないです。経験年数が増えると「これくらいは大丈夫」という油断も出てきます。自分でも情けないけど、人間だから仕方ないとも思いたい。でも、「プロなんだから」と責められると、逃げ道がなくなる。このあたり、独り身の自分にはなおさらしんどいです。

ダブルチェックでは防げなかった失敗談

実は、事務員さんと一緒にダブルチェック体制を取るようにしてから、ミスはだいぶ減ったんです。それでもゼロにはなりません。ある日、「送付状に書いた日付」がひと月ズレていて、先方から「これ、日付間違ってませんか?」と連絡が入りました。二人で確認したのに、なぜか見逃していた。「いや、お互い見てるのに!」って、思わず事務所で苦笑しました。でも、そんな失敗もまた、信頼をちょっとずつ削っていくのがつらいところです。

忙しさに飲まれていく日常

気づいたら朝から夜まで、分刻みで案件をこなしている日々。ごはんをかきこみながら、メールをチェックして、ついでに法務局のサイトを開いて…。この忙しさが、知らず知らずのうちに判断力を奪っていくんです。ミスの多くは、疲れたとき、焦ってるとき、そして「なんとなくで進めたとき」に起こります。心の余裕がなくなれば、余裕のある仕事はできない。当たり前のことなのに、気づいたときにはもう遅い。ミスをしないって、気力も体力も根性も、全部必要なんですよね。

時間に追われると起こるケアレスミス

急ぎの案件が2件、3件と重なると、注意が散漫になります。以前、別件の資料を誤って添付して郵送してしまい、先方から「関係ない書類が入ってました」と連絡を受けたことがあります。ほんの数秒の判断ミスでしたが、その数秒の代償は大きかった。あのときの自分に、「落ち着け」と言いたかったですね。焦っていると、視界が狭くなる。書類の表面しか見えていない。こういうときに限って、ミスはやってくる。怖いほどに。

焦る気持ちが視野を狭くする

登記申請の締切が迫っていると、つい他のことが手につかなくなります。電話対応もどこか上の空になり、ミスを誘発しやすくなります。焦ると、確認作業も雑になりがち。まるでランナーがゴール目前で転ぶようなもの。急いでいるからこそ、いつもより丁寧に進めるべきなんですが、現実はその逆。元野球部だったころの監督の言葉を思い出します。「急がば回れ。基本をおろそかにするな」。ほんとにその通りです。

元野球部のクセで「大丈夫だろう精神」が出る

「まあ大丈夫だろう」と思ってしまうクセ、野球部時代から染みついてるんです。フライが上がっても「誰かが取ってくれるだろう」と思って取れず、試合を壊したこともありました。仕事でも同じ。「多分、これはOKだろう」と思って進めると、案外どこかで落とし穴があるんです。その一瞬の「大丈夫だろう」で、大丈夫じゃなくなる。年を取っても治らないクセ。あのときのフライ、今も心に落ちてきます。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。