紙の海で溺れそう——“書類に囲まれて生きる”日々のリアル

紙の海で溺れそう——“書類に囲まれて生きる”日々のリアル

「またこの山か」朝から机に積もる紙の存在感

出勤してまず目に入るのは、机の上に無造作に積まれた紙の山。前日片付けきれなかった書類、今日の申請に使う資料、依頼者の控えやチェック待ちの書類たち。まるで「まだまだ終わらせないよ」と嘲笑ってくるようです。誰が積んだって、そりゃ私です。でも、気がつけばどんどん増えていく。事務員さんと二人、無言でため息をつくのが朝のルーティンになってしまっています。

書類の山に“慣れる”ことはあるのか

最初は何とかしようと分類したり、ファイルにまとめたりしていました。でも、それを上回るスピードで新たな書類が発生するんです。依頼が重なると、処理が追いつかない。気づけば「見ないふり」が一番の整理術になってしまっている。書類の山に“慣れる”というのは、正確には「諦める」に近い感覚かもしれません。

事務所に広がる「紙の領土拡大」問題

最初は机の上だけだったんです。それが、机の下、脇の棚、果ては応接テーブルの上にまで…。事務所の床面積に対して紙の領土が明らかに拡大している。ここは司法書士事務所なのか、それとも紙の倉庫なのか。たまに来訪されたお客様が「お忙しそうですね」と言ってくれるんですが、その視線には「片付けた方がいいですよ」という含みを感じます。

「電子化すればいいじゃない?」って言われるけど

何度となく言われました。デジタル化すればいいのに、と。でも、現場を知らない人ほど簡単にそう言えるんですよね。たとえば、登記申請一つとっても、紙での提出が必要なことがまだ多い。しかも電子化の準備にかかる時間を捻出する余裕が、そもそもありません。

そもそも“電子化する暇”がない

書類をスキャンしてPDFにして保存して、ファイル名を整えて、バックアップして…それ全部、仕事が落ち着いたらやろう、と思っている。でも落ち着く暇なんて、こない。夜中に1時間、スキャナーの前で立ち尽くしてる自分が情けなくなることもあります。電子化は理想。でも現場は理想に追いつかない。

紙じゃないと対応できない制度の矛盾

法務局に提出する書類の多くはいまだ紙ベース。添付書類に押印が必要であったり、原本を提出しなければならなかったり。電子申請も対応範囲が限られていて、むしろ「紙+電子」のハイブリッド対応が一番面倒だったりします。

法務局の申請で感じる“時代とのギャップ”

マイナンバーが普及して、クラウドで情報共有できる時代に、なぜこの書類は手書きで、印鑑を押して、窓口で提出しなければならないのか。そんな疑問を抱きつつも、制度が変わらない限り、私たちはそれに従うしかないんです。愚痴を言いたくなる理由、わかってもらえますかね。

仕事の本質が「紙の仕分け」になりがちな現実

本来、司法書士の仕事って、もっと法律的な判断や提案が求められる専門職のはず。でも現実には、紙の仕分けと管理にかなりの時間が費やされている。これが「やりがい」とズレるんです。

本来やりたい仕事は“考えること”のはずなのに

依頼者の事情を汲み取って、どう登記を組み立てるか。そこにこそ頭を使いたい。でも実際には「この登記原因証明情報どこに挟んだっけ?」と探してばかり。紙に時間を奪われてる感覚が強いんです。

段ボールと格闘する日々に疲弊する理由

処理済みの書類を段ボールにまとめて保管する作業も、地味に疲れます。腰を痛めないように気をつけて、ラベルを貼って、日付を記録して…その積み重ねが精神的にじわじわくる。月末に「保管庫まで持っていく作業」が憂うつなんです。

事務員さんの「紙アレルギー」との戦い

うちの事務員さん、よく頑張ってくれてます。でも「この書類、また別の場所にしまったんですか?」と聞かれるたびに、申し訳なさと情けなさが込み上げてくる。整理が行き届かないのは、私の責任でもあるのに。

ひとり事務所の限界と人への申し訳なさ

小さな事務所では分業も難しい。依頼が重なると、事務員さんに無理をさせることもあります。「あ、これ後でやるつもりだったんですけど…」と言いながら、資料の山をごまかす自分が嫌になる。お互い気まずくなるのもまたストレスです。

「どこにしまったっけ?」が生む心理的ストレス

「あの書類、どこですかね?」と聞かれたときに、すぐ答えられない。思い当たる引き出しを次々開けて、見つからない焦りが冷や汗になる。単純に探す時間もムダですが、その都度“信用を失っている気分”になるのが一番しんどいです。

紙とどう付き合っていくか、現実的な話

じゃあ紙をゼロにできるかといえば、それは無理。でも、紙との付き合い方を少し変えるだけで、気持ちは少し楽になることもあるんです。

完璧じゃなくていいから、まず“把握”する

分類が雑でもいい、今どこに何があるか“なんとなく把握できてる”状態を保つ。まずはそれが大事なんだと割り切るようにしています。完璧主義を捨てるのって、実は一番の整理術かもしれません。

一日の中に「紙の時間」をあえてつくる

どんなに忙しくても、15分だけ「書類整理の時間」をつくるようにしています。スキマ時間じゃなくて、あえて“正式な業務”として組み込む。毎日は無理でも、週に数回でもやるだけで違います。

最後に——愚痴だけど、同じ状況の人に届けば

ここまで読んで「うちもそうです」と思ってくれた方がいたら、ちょっと嬉しいです。紙に囲まれてると、自分が時代に取り残された気分になる。でも、そうじゃない。制度がそうなってる以上、ある程度仕方ないんです。

「自分だけじゃない」と思えるだけで楽になる

SNSでキレイなデスクを見ると落ち込みますが、実際は多くの事務所が「紙と格闘中」だと思います。自分だけじゃない、そう思えることが、前に進む第一歩になる気がします。

小さな改善が、ちょっとだけ前向きな気持ちをくれる

書類の位置を一つ決めるだけでも、心が少し軽くなる。全部は無理でも、少しずつ前に進んでいく。そんなスタンスで、今日も紙に囲まれてがんばってます。溺れそうでも、なんとか浮いていきましょう。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。

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