静かに爆発する司法書士ブログ

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静かに爆発する日々:司法書士という名の火薬庫

一見すると、司法書士という仕事は冷静沈着で穏やかな印象を持たれるかもしれません。実際、外から見れば「安定した士業」「誠実な専門職」と映ることが多いでしょう。でも実情は、静かに積もるストレスの山の上で、何とか笑顔を装って仕事をこなす日々です。火薬庫に火がつく瞬間というのは、大きな事件ではなく、ほんの些細な一言や、予期せぬ電話だったりします。僕のように地方で一人事務所を切り盛りしている司法書士にとって、「静かに爆発する」という表現は、冗談でも大げさでもないリアルです。

表向きは「安定」だけど、内側では常に火花

「士業って安定していていいですね」と言われることがあります。正直、その言葉を聞くたびに心の中で苦笑いしています。確かに収入の波はそれほど大きくないかもしれません。でも、感情の波は大荒れです。毎日、新しい登記、期日のプレッシャー、顧客対応に追われ、気づけば深夜にコンビニ弁当を食べながら作業していることも。見た目は静かな日常でも、心の中では「今日も終わらない」「またミスったらどうしよう」と火花が散っているのです。

一見静かな事務所でも、脳内は大混雑

僕の事務所はとても静かです。事務員さんも一人だけで、基本的にはお互い黙々と作業しています。けれど、その沈黙の裏では、僕の頭の中は常にフル回転。「あの登記は補正が出るかも」「この案件、顧客が納得してなさそう」「法務局、また仕様変わった?」そんな思考がぐるぐる回り、気づけば何も手が進んでいないこともあります。静かな環境と、脳内の喧騒。このギャップが、じわじわとストレスを溜めていくんです。

書類ミスがトリガーになる精神的地雷

一文字の誤字、一つのハンコのズレ。それだけで、登記が止まり、顧客に頭を下げ、法務局に電話を入れ、事務員に指示を飛ばし、すべての予定が崩れます。その瞬間、静かに積み重なっていたストレスが「ドン」と爆発します。叫んだりしません。ただ、机に拳をぎゅっと押し当て、声も出せずにしばらく固まる。これが僕の「静かに爆発する」瞬間です。そして何事もなかったように、また次の書類を作る。地雷は、毎日の業務に紛れて潜んでいます。

「この程度のことで怒る?」という誤解

たまにお客様や同業の方に、僕がちょっとピリついた態度を見せてしまうと、「え?そんなことで?」という反応をされます。表面的には僕が悪い。でも、そこには積もりに積もった背景があります。小さな不満が積もって、最後の一滴がこぼれただけ。それだけのことなんです。けれど、それを説明するのも面倒で、ただ黙って我慢する。こうやってまた、次の爆発の火種が生まれていくんです。

他人の一言が火種になる日もある

「そんなの、簡単でしょ?」「忙しそうですね〜(笑)」——この手の何気ない一言が、一番グサッと来ます。僕たちは、仕事を軽く見られることに敏感です。それは、責任が重く、しかも評価されにくい仕事だから。登記が終わっても「ありがとう」の一言がない案件だって珍しくありません。だからこそ、軽口が妙に心に刺さる。そういう日は、帰宅後に酒を飲みながらテレビもつけずに、ただ座っている時間が長くなるんです。

「電話に出ないと怒られる」は妄想なのか現実か

日曜日、久しぶりに温泉でも行こうと思った矢先、スマホに鳴り響く着信音。番号を見た瞬間、胃がキュッと縮まります。「今、出ないとマズいかも…」という焦りと、「いや、休みだし」と自分をなだめる気持ちがせめぎ合う。結局、出なかったことを1日中気にしてしまう。怒られるのは妄想かもしれない。でも、それが現実だったことも何度かあるからこそ、休んでも心は休まりません。

相談できる人がいない職業病

僕のように地方で一人事務所を営むと、仕事の悩みを共有できる相手が本当にいません。司法書士同士も横のつながりは少なく、同業に弱みを見せるのも気が引けます。友人はまったく違う業界で、説明するにも専門用語ばかりになってしまい、話す気も失せる。事務員さんには愚痴をこぼせないし、家族もいない。気づけば、頭の中だけで不満を反芻するクセがついてしまいました。これってもう、職業病ですね。

「愚痴を言う相手がいない」の孤独

会社勤めをしていたころは、同僚と居酒屋で「上司がさ〜」と愚痴ることができました。でも今は、上司もいなければ同僚もいない。たまにお客様の愚痴を聞きながら、「この人、ちゃんと吐き出せてるな…うらやましいな」と思ってしまうことすらあります。自分の心の中には、言葉にできない重りのようなものが沈んでいて、それが日々少しずつ重くなっていくのを感じます。

事務員さんに本音をぶつけられないジレンマ

事務員さんは本当に頑張ってくれているし、ミスも少ない。でも、やっぱり言えないことはたくさんあるんです。たとえば急ぎの案件が重なってイライラしている時、本当はちょっと八つ当たりしたくなる。でもそれをグッとこらえて笑顔で指示を出す。僕にとって事務員さんは「支え」であると同時に、「支えられていないフリをする相手」でもある。このジレンマは、言葉にするほど余計つらくなります。

それでも続ける理由:誰かの役に立てるという希望

こんなにしんどいのに、どうして僕はこの仕事を辞めないのか。その答えはとても単純です。誰かに「助かった」「ありがとう」と言ってもらえる瞬間が、全てを帳消しにするからです。それが毎日あるわけではありません。でも、たまに訪れる「報われた」と感じる瞬間が、僕の静かに燃えたぎる内側の火を、一度だけやさしく冷ましてくれるのです。

ふとした「ありがとう」で救われる瞬間

ある日、登記が完了したお客様が、わざわざお菓子を持って事務所まで来てくれました。「無理ばかり言ってすみませんでした。本当に助かりました」と。涙が出そうになりました。僕のしていることは、書類を整えて届けるだけ。だけど、その先にある「安心」や「信頼」は、誰かの人生にきっと意味を持っている。そう思えるとき、もう少しだけ頑張ろうと思えるんです。

報酬以上に心に残る一言

報酬明細に記載された数字より、「あなたに頼んでよかった」という一言の方が、心にはずっと残ります。士業は、金額に見合わないことが多すぎる仕事ですが、逆に言えば、お金に換算できない価値を提供しているとも言えます。静かに爆発する毎日の中で、こうした言葉だけが僕を再び立ち上がらせてくれる。だから、僕は今日もまた、静かに爆発しながら生きています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。