申請ミスなんて、どうとでもなる
司法書士をやっていれば、申請ミスの一つや二つは避けられません。登記の補正指示が来たとき、そりゃ一瞬は血の気が引きますけど、やり直せば済む話です。訂正印を押して、添付書類を差し替えて、はい完了。ミスしないに越したことはないけれど、「業務の一部」と思えば割り切れます。ところが、同じ“訂正不能”の出来事でも、恋愛の失敗はどうも引きずるんですよね。再提出も、補正も、受付番号の再発行もない世界。これが、地味にキツいんです。
書類の訂正、慣れれば機械作業
登記の世界では、「ミスは想定されるもの」として仕組みができています。法務局から電話がかかってきても、「ああ、またか」と肩をすくめるだけ。書式を直して、PDFを再出力して、速達で送って終わり。感情を挟まない処理手順が染みついてるから、心が疲れません。人間って、感情よりルールの方がずっと楽なんです。だから私は、機械的に処理できる申請ミスの方が、恋愛よりずっと気が楽なんだと思います。
補正指示が来ても、焦らない心構え
一度や二度じゃありません。司法書士を始めたばかりの頃、補正が来るたびに焦っていました。「依頼者に申し訳ない」「信用を失ったらどうしよう」って。でも何度も経験していくうちに、補正は“業務の一部”でしかないと気づきました。ミス自体が問題なのではなく、それをどう修正して、どれだけ迅速に処理できるか。それこそが専門職としての実力。そう思えたら、だいぶ楽になりました。
恥ずかしさも最初の数年だけ
最初の頃は法務局の職員さんに電話口で指摘されるだけで、顔が熱くなっていました。「またこの人かと思われてるかも」なんて気にして。でも、数年経った今では、もうその恥ずかしさもなくなりました。逆に、「この程度のミスで済んでよかった」と思えるようになったんです。人間って本当に慣れる生き物ですね。ただ、恋の恥ずかしさには、どうやら一生慣れそうにありません。
事務員さんの優しさが沁みる日もある
そんな補正案件が重なった日でも、事務員さんが「大丈夫ですよ、先生。みんなやってますから」と言ってくれるだけで救われる瞬間があります。たった一言でも、気持ちは変わるものです。そう考えると、やっぱり人間関係の中にしか、ほんとうの救いってないのかもしれません。恋愛も同じで、「ただ側にいてくれる人」がいれば、それだけでいいのかもしれない。いないんですけど。
「大丈夫ですよ」って言われたら涙出そうになる
とある冬の日、寒い法務局から戻って、申請ミスに気づいた私。ため息をつきながら事務所に戻ると、事務員さんが紅茶を淹れてくれていました。「私も前職でミスばっかでしたよ、気にしないでください」って。その一言が、本当に染みたんです。恋人に言われたら惚れるレベルのやさしさ。でも、私はその日も、一人鍋でした。
でも、デートの断られ方は慣れない
申請ミスは何度でも修正できますが、デートの断られ方は一発で心に響きます。「予定があるので…」「忙しくて…」そんな言葉の裏にある“本音”を深読みしてしまう自分がいます。登記簿はウソをつかないけど、人の心はそうはいきません。書類なら読み解けるのに、どうして人の気持ちはわからないんだろう。そんな疑問と虚しさが、独身司法書士の夜にはつきまといます。
「また今度」が来ない、あの沈黙
食事に誘って、「また今度」と返ってくる。期待してしまう自分が悪いのかもしれません。でも、次は来ない。「次は○○に行きましょうね」なんて言葉を鵜呑みにしたこともありました。結局、既読スルー。それってつまり、“補正不能”ってことですよね。書類なら「どこが間違ってるか」教えてくれるけど、恋愛はノーヒントでの不合格通知。何がいけなかったのか、わからないまま沈んでいくあの感じ、何度経験しても慣れません。
申請は再提出できるけど、LINEは既読で終わる
数ヶ月前、少しだけ仲良くなった女性とLINEでやりとりしていて、「週末に映画でもどうですか？」と送ったんです。数分後、既読。返信は来ませんでした。申請書類なら、記載漏れがあれば赤ペンで返ってくる。恋愛の世界は違う。沈黙が答え。それが妙に効くんですよね。「俺ってその程度だったか…」と。再提出も却下もなく、ただただ「終了」。傷口に塩を塗るような既読マークが、いまだにスマホに残っています。
年齢とともに深まる「自分の扱い方」の難しさ
45歳。若い頃なら笑い話で済ませられたような断られ方も、年齢を重ねるごとにズシンとくるようになりました。自分の立場や年収、生活リズム、全部考えて「それでもどうですか？」って聞く自分の必死さが、逆に恥ずかしくなる瞬間があります。司法書士という職業の信頼はあっても、それが“人間としての魅力”には直結しない。このギャップが年々、辛くなってくるんですよ。
誠実なだけじゃ、誰かの特別にはなれない
私は決して遊び人ではないし、むしろ誠実なほうだと思っています。でも、それだけじゃダメなんだなと感じることが増えました。誠実って、面白くはないんですよね。安定はあっても、ときめきがない。仕事では重宝される「堅実さ」も、恋愛では“面白みに欠ける”と見られてしまう。この矛盾が、自分でもどうしようもない壁として立ちはだかります。申請ミスより、はるかに修正の効かない人生の設計ミスかもしれません。
