ミス連鎖が止まらない日。心がどんどん沈む午後にて。

ミス連鎖が止まらない日。心がどんどん沈む午後にて。

朝のつまずきが一日を決める日もある

司法書士という職業は、毎日の積み重ねが命です。だからこそ、「朝からの一手」でその日の調子が大きく左右されることも少なくありません。ある朝、目覚ましが鳴らなかったことからすべてが狂い始めました。たった15分の寝坊が、遅れた通勤、慌てて出した書類のミス、さらには事務員への指示ミスへと波及。こういう日は、「運が悪かった」と片付けるにはあまりにも現実が重たく感じます。

目覚ましが鳴らなかった…その瞬間から始まっていた

その日は、なぜかアラームが鳴らなかったんです。スマホのOSアップデートのせいか、ただ単に寝ぼけて止めてしまったのか。目を覚ました瞬間、時計を見て「あ、やばい」と口に出たのを覚えています。そこからの支度はもう、まるで災害対応。髪もセットせずスーツに袖を通して、車に飛び乗りました。信号にひっかかっては舌打ちし、コンビニでおにぎりすら買えず、事務所にたどり着いた時にはすでに頭の中が真っ白。そんな状態で、冷静な判断ができるわけもなく……。

小さな遅れが、大きな波を呼び寄せる

遅刻はたった10分だったのに、その日はずっと「遅れを取り戻さないと」と焦りが心を支配していました。焦る気持ちは判断を鈍らせます。お客様への返送書類を封入しようとして、内容を確認せず封を閉じてしまったのがその証拠。あとで気づいて事務員に再封をお願いするも、気まずさと情けなさで顔が上げられませんでした。小さな遅れが、心のバランスを崩し、次々に波を立てていくのです。

冷蔵庫の中の牛乳すら責めたくなる朝

その日の朝、唯一の朝食だったはずのコーヒー用の牛乳が切れていたんです。普段なら「あ、買い忘れたな」と済ませるところを、「なんでこんな日に限って…」と冷蔵庫を恨めしく睨みつけました。冷蔵庫も牛乳も悪くないのに、余裕がないと、すべてに苛立ちが向いてしまう。心が不安定なときは、些細なことすら敵に見えてしまうんです。

「すみません」ばかりの自分に嫌気がさす

一日を通して口にする回数が増える言葉、それが「すみません」。本来なら謝る場面ではないのに、「申し訳ない」「失礼しました」と何度も頭を下げているうちに、自分がどんどん小さくなっていく感覚がありました。司法書士は信頼で成り立つ職業ですが、自分に自信がなくなったら、その信頼も揺らぐのではないかと不安になります。

事務員さんにまた謝る

午前中だけで、事務員さんに3回謝った日がありました。封入ミス、書類の確認漏れ、印紙の枚数間違い。いずれも「先生、これ違ってます」と言われて気づいたミスばかりです。謝りながら、「この人がいなかったら、今ごろ全部パーだったな」と冷や汗が出ました。でも同時に、情けなさでいっぱいでした。小さな事務所で、こんな頼りないボスでいいのかと。

他人に優しく、自分に厳しいループ

事務員さんは怒るでもなく、「今日は大変そうですね」と笑ってくれました。優しさに救われる一方で、自分への評価はどんどん下がっていきます。人には感謝できるのに、自分には「ダメだな」「またか」と罵声を浴びせる。優しさの矛先が間違っていると、自分の居場所すら見失いそうになるのです。

責任感と自己嫌悪のはざまで

ミスが重なると、責任感が暴走して自己嫌悪に変わります。「もっと確認しておけば…」「寝坊さえしなければ…」と、もしもの世界ばかり想像してしまう。でも現実は変わらないし、クヨクヨしている時間すらもったいないのに、思考がぐるぐる止まりません。自責のループは、静かに心を削っていきます。

依頼者の前では笑顔を装うが

午後の打ち合わせで、依頼者の前に座ったときには、すでに心がボロボロでした。それでも笑顔を作らなきゃいけないのがこの仕事のつらいところです。内心では「さっきの書類は大丈夫だったか…」と気が気でないのに、「大丈夫です、すぐ対応できますよ」と口では言ってしまう。笑顔が嘘にしか思えなくなる瞬間です。

ミスを見透かされているような視線

ある時、依頼者の目線が鋭く感じて、「この人、私がミスしてるの気づいてる?」と変に勘ぐってしまいました。実際はただの思い過ごしかもしれない。でも、自信を失っていると、相手のちょっとした仕草や表情すら「責められてる」と受け取ってしまうんです。これは、精神的にかなり危険な状態だと感じました。

「先生も人間なんですね」と言われて刺さる

一度、依頼者に「先生も人間なんですね〜」と笑って言われたことがあります。その場では「ははは」と返したけど、帰りの車の中でなぜか涙が出そうになりました。完璧を求められる職業で、「人間らしさ」は許されないのか。そう思っていた自分にとって、それは皮肉にも聞こえてしまったのです。

信頼される重さに押しつぶされそう

信頼されることは嬉しい。でもそれは、時に重荷にもなります。「先生に任せれば安心」という言葉が、今日はプレッシャーに感じました。自分の不調が、その人の人生に影響してしまうかもしれない。そう考えると、怖くて仕方ない日もあるのです。

明日はきっと「連鎖」を断ち切れるように

こうして一日を終えて思うのは、「もうこんな日には戻りたくない」という切実な願いです。明日も仕事はあるし、やることは山積み。でも、深呼吸して、今日よりほんの少しだけ自分を許してあげられたら、連鎖の糸は切れるのかもしれません。私もまだまだ、練習中の身です。

朝、深呼吸から始めてみよう

明日は少しだけ早く起きて、窓を開けて深呼吸してみようと思います。気分がすべてを変えるわけではありません。でも、気分が変われば、行動がほんの少し変わるかもしれない。そして、その小さな変化が、大きな流れを変えてくれる。そう信じたいのです。

ミスの先にあった、気づきと優しさ

ミスを重ねて初めて気づくことがあります。人のありがたさ、自分の限界、そして意地を張ることの虚しさ。全部、順調な日は見えなかったものばかりです。そんな日こそ、人に優しく、自分にも優しくなれるチャンスかもしれません。

弱い自分を受け入れる練習中

私は司法書士としてまだまだ未熟です。ミスもするし、不安にもなります。けれど、そんな自分を否定せず、「今日は弱かったな」と認めることで、少しずつ前に進めるような気がしています。完璧じゃないからこそ、誰かの痛みに寄り添える。そんな自分でいられるよう、これからも、練習を続けていこうと思います。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。