新しい服を買ったけど着る予定がなかった

新しい服を買ったけど着る予定がなかった

新しい服を買ったけど着る予定がなかった

司法書士という仕事をしていると、外に出ることはあっても、いわゆる「おしゃれして出かける」ような予定はほとんどありません。にもかかわらず、なぜか新しい服を買ってしまう。そしてそれが、クローゼットの奥で静かに眠る日々になる。たぶん、服がほしかったんじゃなくて、「変わりたい自分」を買っていたんでしょう。でも、仕事に追われ、結局その服を着る機会なんて来ない。そんな話、あるあるですよね。

買ったときは少し前向きだった

仕事に疲れていたある休日、ふと立ち寄ったショッピングモールで、いつもとは少し違う色のシャツを見つけました。ちょっと勇気を出せば着こなせそうな、そんなシャツ。店員さんの「お似合いですよ」の一言で、そのままレジに向かいました。着るタイミング?そのうち何かあるだろう、そんな漠然とした期待だけを胸に。でも現実は甘くなかったんです。

どこかに出かけたくなるような気がしただけだった

そのシャツを買った日は、不思議と「何かを変えられるかも」と思えたんです。服一枚で、いつもと違う自分に変身できるような気がして。でも、それは錯覚でした。予定は自然に湧いてくるわけじゃない。行動しなければ、どこへも行けない。服だけが準備万端でも、自分の気持ちが追いついていなければ、ただの布に戻ってしまうんですよね。

サイズも素材もちゃんと選んだはずなのに

シャツのサイズはぴったりだったし、肌触りも気に入っていた。タグだってまだついていた。でもそれを着てどこに行くのか、そのビジョンがなかった。目的地のない旅のためにスーツケースだけ買ったようなもので、無計画な希望は時間とともにフェードアウトしていきました。気づけば、服が悪いんじゃなくて、覚悟が足りなかったのだと思い知らされました。

結局タグも切られず眠るまま

そのまま月日は流れ、クローゼットの奥に吊るされたままのシャツ。試しに袖を通すことすらせず、ただそこにある。何度か「今日こそ着てみようか」と思ったけど、結局いつもの無難な服を選んでしまう自分がいるんです。「せっかくの新しい服なんだから、もっとちゃんとした日に」と言い訳して先延ばし。その“ちゃんとした日”は、いつまでたってもやって来ないままでした。

そもそも服を着る“場面”がない

司法書士という職業は、基本的にフォーマルなスタイルが求められます。派手な色やカジュアルな格好は信頼に関わる。そう考えると、仕事の場で着る服はほとんど固定されてしまうんですよね。だからといって、プライベートで着るかというと…そもそも予定がない。外に出る理由がなければ、新しい服の出番なんて訪れないわけで、ますますタンスの肥やしになっていくんです。

ジャケットは結局いつものグレー

いつの間にか、何にでも合う無難なグレーのジャケットばかり着るようになりました。何も考えなくて済むし、どこに行っても浮かない。けれど、その「無難さ」が自分をどこにも連れて行ってくれないことにも気づいてしまうんです。あのシャツのように、自分に少しだけ期待した日は、もう遠い過去のよう。グレーの服と同じように、自分の心も色褪せていたのかもしれません。

汚れてもいい服が正義になった

不動産の現場に行くときは、泥がついても構わないような服装が基本。オシャレしても足元がぬかるんでいたら意味がない。だからつい、「どうせ汚れるから」という理由で安物の作業着を選んでしまう。服に対する意識すら、合理性と効率に支配されてしまった。気づけば、身にまとうものがどんどん“仕事用”しかなくなっていく日々に、自分でも少し哀しくなってきます。

土日は洗濯と昼寝で終わる

平日の疲れが溜まりに溜まって、土曜日は午前中から洗濯、そして昼からはほぼ昼寝。気づいたら夕方になっていて、そこから晩飯を食べて、風呂に入って寝るだけ。オシャレしてどこかへ出かけようという気持ちすら起きません。結局、せっかくの休みを「回復」に使うだけで、リフレッシュもないし、新しい出会いなんて当然ない。これじゃ服の出番なんてあるわけないんです。

おしゃれする気力も予定もゼロ

若い頃は「せっかくの休みだからどこか行こう」と思えたのに、今は逆。「せっかくの休みだから何もしたくない」に変わってしまった。おしゃれして出かけるって、やっぱり少しはエネルギーがいるんですよね。誰かに会うかもしれないとか、どこかで写真を撮るかもとか、そういう“期待”が必要なんです。でもその期待すらもう持てなくなったとき、新しい服はただの物になってしまう。

予定がないと服も出番がない

当たり前のことだけど、着る予定がなければ服は着ない。それだけの話。でも、だからこそ、服が増えていくほどに、予定のなさが浮き彫りになってくるんです。「こんなに持ってるのに、着ていく場所がない」という現実。クローゼットを見るたび、過去の自分が「何かを期待していたこと」が痛々しく感じられてくる。そしてその期待を裏切ったのは、たぶん今の自分なんですよね。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。