朝の届出と赤い封筒
役所からの一通の手紙
朝、事務所のポストに赤い封筒が差し込まれていた。差出人は市役所資産税課。よく見ると「至急開封」と朱書きされている。どうやら、これはただの催促状ではなさそうだ。
サトウさんの冷たい指摘
「シンドウさん、机の上に書類が山になってますけど、これ、本当に処理してるんですか?」と、冷ややかな声が飛んできた。あぁ、サトウさん、今日も朝から辛辣だ。でも、この赤い封筒は、ちょっと気になる匂いがする。
相続登記の依頼人
古い家屋と固定資産税
封筒の中には一通の相談依頼書が入っていた。依頼人は先月父親を亡くしたという女性。問題は、父親名義のままになっている古い木造家屋の固定資産税が、昨年から妙に高騰しているという点だった。
不自然な評価額
確かに、資料を見ると、家屋の評価額が前年度の倍近くになっていた。増築でもしたかと思いきや、現地調査の記録にはそうした記述はない。おかしい。おかしすぎる。
消えた課税標準の記録
評価証明書の謎
市役所に問い合わせて取り寄せた評価証明書を確認すると、前年までのデータが一部欠落している。しかも、「訂正済」の押印があるのに、その理由の記載が見当たらない。
役場職員の妙な反応
資産税課に直接出向いてみると、対応した職員が「その件はちょっと、、、」と明らかに歯切れが悪い。まるで、ドラえもんのジャイアンが宿題を忘れた時のような表情だった。
過去の申告と現在の齟齬
サザエさん的ミスの可能性
最初は単なる転記ミスかと思った。ほら、サザエさんでもよくあるじゃないか。波平さんの年金通知がカツオ宛てに届いて大騒ぎ、みたいなやつだ。
隠された増築部分
ところが、現地を見に行ってみると、道路からは見えない裏手に謎の倉庫が。しかも、固定資産台帳にその倉庫の記載はない。どうやら、未申告の増築があるらしい。
亡くなった被相続人の秘密
古い手紙の発見
押入れの奥から、依頼人が一通の封筒を見つけた。差出人は亡き父親。中には「この倉庫は役所にバレないように建てた」との自白めいた内容が記されていた。やれやれ、、、なんで皆、死んでから告白するんだよ。
やれやれ、、、やっぱり出てきたか
「これは納税義務逃れの未申告案件ですね」とサトウさんが淡々と告げる。まるでルパン三世の次元大介のようなクールさ。ぼくは思わず深いため息をついた。やれやれ、、、やっぱり出てきたか、という感じだ。
追い詰められる現役職員
改ざんされた評価台帳
調べを進めるうち、台帳が一度改ざんされた形跡が浮かび上がる。どうやら、資産税課の職員の一人が、意図的に未申告部分を含めた評価を追加したのだが、その正規な手続きがなされていなかったようだ。
誰のための減免だったのか
しかも、その変更によって何らかの減免措置が外れていた。つまり、依頼人が損をし、その職員は上からの命令で黙って処理した。よくある話だ。でも、それを表に出せるのが、司法書士の地味な力なのだ。
真実に至る仮説
サトウさんのロジック
「固定資産税って、土地建物の価値だけじゃなくて、人の良心まで量るのかもしれませんね」とサトウさん。名探偵コナンならここでメガネが光るシーンだ。
私のうっかりが導いた突破口
私は、封筒を読み間違えて送る書類を間違えた。それがきっかけで、役所に二度手間をかけさせた結果、職員がぽろっと「実はあの台帳、、、」と漏らしたのだった。うっかりも時には役立つのだ。
告白と証拠
一筆書かれた納税通知書
亡くなった父親が生前に書いた「本当は申告すべきだったが、、、すまない」との一筆。これがすべての証拠となった。本人の反省が、皮肉にも事件の真相を明るみにした。
税に託された遺志
依頼人は「父が最後に残したのは金じゃなくて、悔いだったのかも」とポツリと漏らした。それを聞いて、少しだけ胸が詰まった。登記とは、人の物語を記録する仕事でもある。
事件の結末
不正な軽減措置の行方
役所は内部処分を検討し、家屋の評価額は適正な水準に修正された。依頼人にも過剰請求分の還付が決まった。騒ぎは小さく収束したが、心には少しだけ風が吹いた。
司法書士の役目として
誰かが見過ごした矛盾に気づき、記録をたどる。それが、ぼくの役割だ。華やかじゃない。でも、誰かの安心になるなら、それでいい。
そして、いつもの日常へ
サトウさんの塩対応は続く
「今日も書類の山ですよ、シンドウさん」そんなサトウさんの声に、また肩をすくめた。だが、心なしか、あの赤い封筒の重みは、もう感じなかった。
次の依頼人もまた一癖ありそうで、、、
ドアが開き、新たな依頼人が入ってきた。眉間にしわを寄せた中年男性。やれやれ、、、今度は何が飛び出すことやら。