「急ぎで」と言われた書類は大体ヤバい

「急ぎで」と言われた書類は大体ヤバい

「急ぎでお願いします」の破壊力

司法書士をしていると、なぜか定期的に舞い込んでくる「急ぎでお願いします」という依頼。これがまあ、ほぼ例外なくヤバい。普通の依頼なら段取り組んで進められるけど、「急ぎで」と言われた瞬間、頭の中がざわつく。経験上、ろくに書類も揃ってない、期限ギリギリ、下手したら内容も曖昧…という三重苦が待っていることが多い。依頼主は必死だけど、こっちにも時間も心の余裕もない。笑顔で「大丈夫ですよ」と言ってしまった自分を、あとで必ず後悔する。

心の準備もなく飛び込んでくる「至急」案件

ある日、昼休憩に入ろうとしていたとき、一本の電話。「至急お願いしたいんですけど、今日中に登記完了できますか?」と。こっちは食事もまだなのに、突然の爆弾投下だ。内容を聞けば、まだ登記原因証明情報すら作っていないとのこと。つまり「急ぎ」の意味は、「そっちで全部なんとかして」という裏返し。急ぎと書いて“丸投げ”と読む。こっちの生活ペースも何もかもが乱される。

なぜか全部が「今日中」になる不思議

「急ぎで」と言う依頼の9割は、なぜか「今日中」に完了してほしいというものだ。どうしてそんなに今日なのか聞いても、「なんとなく」とか「上司に言われたから」とか、曖昧な理由が返ってくる。こちらは法務局の締め時間もあるし、移動もある。それでも「今日中」が絶対条件になる。この“今日中病”にかかっている人の多さには驚かされる。どうして昨日じゃダメだったんだ、と何度も心の中で叫んでしまう。

そして当然のように「ミスが許されない」

おかしな話だが、こうした急ぎ案件に限って「ミスは絶対NGでお願いします」と言われる。こっちは慌てて書類を整えて、法務局に走って、それでも細心の注意を払って処理してるのに、「本当に大丈夫ですか?」と何度も聞かれる。じゃあ、もっと早く依頼してよ…と喉元まで出かかるけど、それを言ったら終わり。プレッシャーだけは一人前に押し付けてくるのが、「急ぎ」の依頼あるあるだ。

依頼主の焦りがこちらに転送されてくる

急ぎの依頼って、要するに依頼主が焦ってるということ。でもその焦り、なぜかダイレクトに司法書士に転送される。こっちが焦っても仕方ないし、急いだところで処理スピードには限界があるのに、「なんとかならないんですか?」と迫られる。時間の責任を取らされているようで、本当に疲れる。焦るのはわかるけど、こっちも人間です。

こっちの予定はガン無視されがち

こちらも他の案件を抱えていて、スケジュールはパンパンなこともある。それなのに「今日行けますか?すぐ来れますよね?」と、まるでヒマしてるかのような言われよう。予定があると伝えると、「そっちをずらせないんですか?」とくる。こっちの業務も依頼主からすれば“見えない”から、簡単に調整できるように思われている。でも、現実はギリギリの綱渡り。そんな中に急ぎ案件が飛び込んできたら、もうバランスなんて取れるわけがない。

「なんとか今日いけます?」の圧がすごい

「なんとか今日いけます?」という言葉には、お願いというより命令に近い圧がある。断ると「なんだ、ダメなのか…」というガッカリリアクションが返ってきて、気まずい空気になる。お願いされてるはずが、なぜか試されているような気分になる。「プロならやってくれるんでしょう?」という無言の期待が痛い。無理なことは無理と言いたいけど、それがなかなか言えないのが、この仕事のつらいところ。

断ったら「融通きかない人」扱いされる理不尽

断ると、「あの人は融通きかない」「使いづらい」と噂されることもある。これが地方の怖いところ。ちょっとした対応ひとつが、その後の紹介や付き合いに響く。でも、だからといって無理な依頼を全部受けていたら、こちらの心と体が壊れる。実際、体調を崩して点滴を打ちながら仕事したこともある。融通よりも命が大事だと、最近になってやっと気づいた。

急ぎの案件に限って内容が重い

なぜか急ぎの案件に限って、やたらとボリュームがある。「ちょっとした登記ですから」と言われても、ふたを開けてみたら数件にまたがる相続だったりする。必要書類を確認したら「それって必要なんですか?」と言われる始末。書類が足りない、説明も不十分、でも急いでいる…。無理ゲーすぎて笑えてくる。

相続でも登記でも「簡単」な急ぎは存在しない

急ぎだからこそ「簡単な内容です」と言われがち。でも、簡単な案件ならそもそも急がないはず。大抵は、相続人の数が多いとか、不動産が複数あるとか、過去に手続きしていないものが残っているとか、問題を抱えている。しかもそれをこちらに丸投げして「何とかしてほしい」となる。急いで、でも完璧に。理不尽な要求に応え続けるのは、正直しんどい。

準備不足の書類、謎の略語、読みづらい字

たいてい、持ち込まれる書類は準備不足。住民票が古い、戸籍が一部欠けている、委任状が未記入…。しかも、謎の略語が手書きで書き込まれていたり、筆跡が読めなかったりと、ストレスが加速する要素満載。こちらが何度も確認をしている間にも、「まだ終わらないんですか?」と急かされる。もう笑うしかない。

実は「急ぎで」の背景には依頼主側の事情がある

「急ぎで」という言葉の裏には、たいてい依頼主側の“間に合わなかった事情”が隠れている。計画的に動いていれば間に合っていたはずなのに、気づけばギリギリ。焦った結果、司法書士に丸投げ。自分のミスや遅れを「急ぎでお願いします」で包み隠そうとする。言われる方はたまったもんじゃない。

本人がギリギリまで放置していたパターン

正直、一番多いのがこれ。「前から知ってたけど、バタバタしてて」と言いながらやってくる依頼者。手続きの期限が目前に迫っていて、逃げ場がなくなった状態で「助けてください」と来る。こちらが一番苦労するパターンだ。事前に相談してくれていれば、もっと余裕を持って対応できたのに…。心の中では何度もそうつぶやいている。

社内事情で押し付けられてくる悲劇

会社の中で処理を後回しにされ、結局末端の担当者が火消し役としてこちらに持ってくることもある。担当者自身も悪くないのに、必死でお願いしてくる姿を見ると、断るのがつらくなる。でも、そういう案件ほど書類が揃っていなかったり、社内決済が通ってなかったりと、トラブルの火種が満載。「どうにかなる」と思って持ってこられても、どうにもならないこともある。

事務員さんにも急ぎの波が及ぶ

一人しかいない事務員さんにも、当然急ぎの波は及ぶ。電話応対、書類コピー、押印準備…。そのすべてを巻き込んで、急ぎ案件は事務所全体をかき回す。事務員さんが「また急ぎですか…」とため息をついたとき、自分の無力さを感じる。誰も得しない「急ぎ」に、毎度振り回される日々だ。

断る勇気を持てるか

最近ようやく、「無理なものは無理」と断る勇気が少しずつ持てるようになった。最初は怖かったけど、無理して受けても誰も幸せにならないと気づいた。自分の健康を守るためにも、そして事務所を守るためにも、「急ぎで」の呪縛から少し距離を取るようにしている。

「本当に今日じゃないとダメですか?」の一言

「今日中でないとダメですか?」と静かに聞いてみると、意外と「じゃあ明日でも…」という返事が返ってくることがある。この一言が魔法のように効くこともある。急ぎの言葉に飲まれず、まずは冷静に期限を確認する。これだけでも、こちらの精神的な負担はだいぶ軽くなる。やはり、言葉は大事だ。

断ったあとにくる「別の事務所に頼みます」攻撃

正直、断ると「じゃあ他の司法書士に頼みます」と言われることもある。最初はそれが怖くて無理をして受けていた。でも最近は、「それもまた仕方ない」と思えるようになってきた。こちらにも限界があるし、自分を守らなければ長く続けられない。無理な依頼を断ることは、自分を守る大切なスキルだと、今では心から思う。

急ぎ案件とどう付き合っていくか

「急ぎで」と言われたときに、心をざわつかせないために、自分なりのルールや線引きを作るようにしている。全部を受けない、優先順位を明確にする、そして断る勇気を持つ。この3つを意識するだけで、急ぎ案件に振り回されることは減ってきた。

時間と心の余裕をどうやって守るか

自分のスケジュール管理を徹底すること。そして、急ぎで来た依頼にも「ここまでならできます」とはっきり伝えること。そうすることで、余裕が保てるし、ミスも減る。焦って対応した結果、後悔するようなミスをすれば、結局一番損をするのは自分。だからこそ、自分の心と時間を守ることが、仕事を続けるための最低条件だと思っている。

実は「急がせない工夫」が一番のスキルかもしれない

一番の理想は、「急ぎで」と言われる前に動いてもらうこと。そのためには、依頼主に早めに動く大切さを伝えるスキルが必要だ。少しずつでも、「この人に頼むなら、早めに準備しよう」と思ってもらえるような信頼を積み重ねていきたい。急がせない、焦らせない、そんな司法書士になれたら、ちょっとは人生が楽になるかもしれない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。