結婚相談所より法務局に通ってる回数多い

結婚相談所より法務局に通ってる回数多い

気づけば法務局の方が通い慣れていた

いつの間にか、週の予定に「法務局」が自然と組み込まれている。かたや結婚相談所への訪問は、思い出そうとしても記憶の片隅にもない。忙しい日々に追われる中で、法務局は私にとって“安心する場所”になってしまった。誰も私のことを詮索しないし、必要なものを提出すれば、無言で処理が進んでいく。この無機質な距離感が、逆に心地よく思えるようになっているのは、寂しさがこびりついてしまった証拠かもしれない。

結婚相談所より馴染みの窓口

結婚相談所に行ったのは、数年前のことだ。真面目にプロフィールを書き、スーツを着て面談に挑んだ。しかし結果は芳しくなく、連絡も続かず、自然と足が遠のいた。それに対して法務局は、訪れれば必ず誰かが対応してくれる。冷たくも丁寧で、こちらの提出書類に文句を言うこともない。数回通えば顔を覚えてもらえ、名前を呼ばれた時には一瞬だけ「社会に存在している実感」が湧く。

「また来たんですか」と言われる安心感

最初は「こんなに来て大丈夫か?」と自問したが、窓口の職員に「また来たんですか」と笑顔で言われた瞬間、なんとも言えない安心感に包まれた。恋愛では味わえなかった“自分を覚えてくれている”という感覚。それが法務局という場所で味わえるとは、皮肉なようでいて、今の私には貴重な接点でもある。

恋愛よりもスムーズに進む登記申請

恋愛は駆け引きやタイミングが命だが、登記申請は手続きさえ整えば、きっちりと進んでいく。ルールに従っていれば裏切られない。何かを準備しても「ごめんなさい、やっぱり違うかも」と言われることもない。その安定性が、今の私には心の拠り所なのかもしれない。

なぜこうなった?独身司法書士の現実

忙しさにかまけて、気づけば独身のまま45歳。出会いの機会はゼロではないが、仕事を優先してしまい、誰かとの関係を深める時間も余裕もない。「いつか時間ができたら」と思っていたら、その“いつか”は一度も訪れなかった。自分の選択だったのに、なんだか世間から取り残されたような気持ちになる。

婚活の優先度がどんどん下がっていく

30代半ばまでは、まだ「間に合う」という感覚があった。婚活アプリに登録したこともあるし、紹介を受けて会ったこともあった。でも気づけば仕事の納期や申請期限を優先し、出会いの予定を後回しにしていた。気づいたら、婚活の優先順位はカレンダーの下の方に押しやられていた。

「この時期忙しいんで…」が毎年の言い訳

4月は相続関係でバタつく、6月は登記変更のラッシュ、年末年始は決済ラッシュ…。そんな言い訳を繰り返して、誰かと向き合う時間を後回しにしていた。「今じゃない」と思っていたのに、結局“今”がずっと続いてしまった。

もはや“予定”の中に婚活が存在しない

スケジュール帳には、誰との食事の予定もない。あるのは依頼者との打ち合わせ、法務局訪問、そして自分一人で行くコンビニやスーパーの時間だけ。婚活?そんな言葉、もう自分には縁がない気がしてしまうほど、心のどこかであきらめている。

仕事は山積み、でも孤独は山より高く

登記や書類作成、相続相談に追われて、平日は一瞬で過ぎていく。でも、ふとした瞬間に感じるのは「孤独」という名の空白。特に休日の夜、誰とも話さずに1日が終わったとき、心の中にぽっかりと穴が開いたような気分になる。

誰とも話さない日があるという恐怖

事務所にいても、電話も鳴らず、来客もない日がある。そんな日は、自分がこの世界に存在しているのかさえ不安になる。声を出していない自分に気づき、ひとりごとで「あー」と言ってみたりする。そのくらい、誰かと繋がっていたいという思いは、どこかに残っているのだと思う。

事務員さんとの会話が唯一の社会性

一人で仕事をしていた時期もあったけれど、事務員さんを雇ってから、ようやく会話が戻ってきた。「今日は寒いですね」から始まる何気ない会話に救われることも多い。たった数分の雑談が、どれほど心を軽くしてくれるかは、独り身の人間にしかわからないかもしれない。

「あの人、また一人で来てる」って思われてる

法務局に通う頻度が高くなると、さすがに職員の方々にも顔を覚えられてくる。「あの人、また来てるな」と思われているのかもしれない。でも、それでも誰かに存在を認識されているという事実は、案外悪くない。

法務局にいる時間=自分の人生の一部

法務局のカウンターに並び、書類を整え、手続きが終わるのを待つ。その時間が、私の“ルーティン”になっている。誰かと会う約束ではなく、書類と向き合う時間。それでも「今日もちゃんと生きてる」という確認作業のような、そんな意味がある。

相談じゃなくて提出だけ、なのに常連

「今日は何のご用件ですか?」と聞かれて、「所有権移転の申請です」と淡々と答える。それだけの会話なのに、常連感が出てしまうのが不思議だ。飲み屋の常連とは違って、こちらは心の交流があるわけでもない。でも“いつもの席”に座るような安心感が、法務局にはある。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。