駅前で言われた衝撃のひとこと:「無職ですか?」
ある平日の昼下がり、役所帰りに駅前のベンチで少し書類整理をしていたときのことです。スーツを着て、鞄には登記書類、胸には司法書士バッジ(正確にはポケットの中)という、いつもの装いでした。そこへふらっと近づいてきた年配の男性が一言、「無職ですか?」。あまりにも唐突すぎて、返す言葉も見つかりませんでした。思わず「いや、司法書士です」と答えたものの、その人は「ふーん」と言ってどこかへ行ってしまいました。そんな日があってもいいんでしょうか?
スーツ姿でも伝わらない“仕事してる感”
私たち司法書士は、たいていスーツで仕事をしています。でも、どういうわけか「仕事感」が伝わりにくい。何をしているか分からない雰囲気なのか、休憩中にスマホをいじっているだけで「ニート」に見えるようです。ましてや平日昼間に一人でベンチに座っている中年男性なんて、「人生に疲れた人」にも見えるかもしれません。職業の認知度も低ければ、仕事中に見える瞬間も少ない。悲しいかな、それが現実です。
司法書士バッジの存在感のなさに泣いた
司法書士には、国家資格者の証としてバッジがあります。金色で、まぁそれなりに立派なんですが、街中でつけていても誰も気づきません。警察官のように威厳があるわけでもなく、弁護士バッジのような知名度もない。結局、誰からも見られず、むしろ「なんかピンバッジ好きなおじさん」くらいにしか思われないことも多いんです。だから私は最近、バッジをつけるのをやめました。…逆効果でした。
名乗ったら「へぇ〜」で終わる寂しさ
「司法書士です」と名乗ると、だいたいの人は「へぇ〜」と言って話を終わらせます。深掘りされることもなく、興味も持たれない。おそらくほとんどの人が、司法書士が何をしているのか知らないのでしょう。登記?裁判所の書類?相続?「よくわからないことをしてる人」扱い。それが現実です。名乗るたびに、世間との距離を感じる。それでも、私は司法書士を続けています。
なぜ“働いていなさそう”に見えるのか
人は見た目が9割と言いますが、まさにその通りだと実感します。どれだけ書類に追われ、電話対応に追われていても、外に出ているときの姿だけで「暇そう」「無職そう」と判断されてしまうことがある。特に地方では、役所や銀行に行くスーツ姿の人が多いわけでもないので、逆に浮いてしまうのです。日常のなかで「仕事してます感」を出すのって、意外と難しいんですよね。
「なんとなく暇そう」が放つ破壊力
人にとって“なんとなく”という印象は強烈です。「あの人、暇そうだよね」と一度言われると、そのレッテルはなかなか剥がれません。実際は1日中机に張り付いて、登記の準備や裁判所への提出書類に追われているのに、外で一服している姿だけで「ヒマ人」扱い。これはほんとに辛い。努力がまったく伝わらないって、けっこう心折れるんです。
昼間にコンビニ寄っただけで漂う無職感
昼間にコンビニで弁当を買っていたら、後ろから小声で「この人、何してる人だろうね…」という会話が聞こえてきたことがあります。スーツを着ていても、表情が疲れていたらそう見えるんでしょうか。せめて「仕事の合間かな?」くらいに思ってほしいものですが、まぁ世間はそんなに優しくない。こっちは一人で事務所回してるんですけどね。
本当に忙しいんですけど?
正直、暇そうに見えると言われるたびに、スケジュール帳を見せてやりたくなります。朝から法務局、午後はお客さんと打ち合わせ、夜は書類作成。事務員さんと二人だけの事務所では、すべての業務をこなす必要がある。なのに、なぜか「楽そうな仕事ですね」と言われがち。外見で決めつけられるたびに、「もう勝手に思っててください」と心の中でつぶやいています。
スケジュールは真っ黒、心は真っ白
手帳は予定でぎっしりです。でも、心は空っぽのときも多い。特に忙しさに追われているときこそ、自分の存在意義がわからなくなります。誰のために、何のために働いてるのか見えなくなる。そんなときに「無職ですか?」なんて聞かれたら、もうダブルパンチです。思わず笑うしかない。笑ってごまかして、また事務所に戻るしかありません。
休みの日に限って登記の相談が入る
「先生、急ぎなんですけど…」という電話が休みの日に鳴ることがあります。登記の期限があるとか、相続の期限が迫ってるとか。結局、休みでもスーツに着替えて出かける羽目になる。そんな姿を誰かが見て、「あの人、どこか就職活動行ってるのかも」なんて思ってるかもしれません。いや、違うんですよ。もう働いてるんですよ。
今日も“なんとなく無職に見える男”として
司法書士という仕事は、誇りも責任もある反面、世間からの認知は決して高くない。ましてや見た目やタイミングひとつで、「無職」と言われるなんてこともある。それでも、依頼者の人生の節目に寄り添うことができるこの仕事を、私は続けていきたいと思っています。誰にも気づかれなくても、名も知られなくても、自分にしかできない仕事がある。そう信じて、今日も地味に生きていきます。