肩こりは揉めても、孤独は揉めない — 地方司法書士、孤独の重さと向き合う日々

肩こりは揉めても、孤独は揉めない — 地方司法書士、孤独の重さと向き合う日々

肩こりは揉めても、孤独は揉めない — 地方司法書士、孤独の重さと向き合う日々

肩こりが辛いのは物理的。でも孤独は…?

肩こりって、わかりやすいんです。重い、痛い、首が回らない。整体に行けば「こってますね」って言ってもらえて、少しは軽くなる。でも孤独はどうでしょう。何が重いのか、何が痛いのか、自分でもはっきりわからない。気づいたら胸の奥が沈んでいて、笑うのが億劫になって、誰かと話すことすら疲れてしまう。そんな重さは、どこに持っていけばいいのか…。司法書士という仕事柄、人と接することは多いのに、心のどこかではずっと独りです。

湿布じゃどうにもならない「人の気配のなさ」

冬の事務所は寒い。エアコンをつけてもどこか空気が乾いていて、音がしない。事務員のキーボードの打鍵音と、時折なる電話だけが生活音。それ以外は、静寂。肩が痛くて湿布を貼るけれど、どうにもならないのは“人の気配のなさ”。肩より先に心がこっていたのかもしれない。誰かの笑い声とか、ちょっとした雑談が、こんなにも自分を支えていたんだって、失ってから気づく。

朝起きて、話しかける相手がいないということ

朝、布団から出る理由が「締切」だけになっていることに気づいたのはいつからだったか。隣に誰かがいるわけでもなく、「おはよう」と言う相手もいない。テレビをつけても、朝のニュースキャスターはただ情報を読み上げるだけ。話し相手にはならない。以前は仕事に打ち込めば紛れると思っていた。でも、毎日が“処理”の繰り返しで、“心”を置き去りにしたまま動いていた。そう気づくと、ますます朝が重くなる。

なぜ司法書士は孤独になりやすいのか?

世間から見れば、司法書士という職業は「人と接する仕事」に見える。でも実際には、業務は淡々とした書類仕事や手続きばかり。誰かと本音で向き合うような対話は少ない。独立して事務所を構えると、なおさら孤立しやすくなる。事務員との会話も限られ、感情を分かち合う相手がいないまま、日々の業務だけが進んでいく。これが知らず知らず、孤独を深くしている。

一人事務所+一人事務員=会話は実務の話だけ

うちの事務所は、僕と事務員さんの二人だけ。年配の女性で、まじめに仕事をしてくれる。だけど、仕事の話以外はほとんどしない。「登記簿出しました」「印紙貼りました」それで終わる。たまに世間話を振っても、気まずそうに返されて話はすぐ終わる。向こうも気を遣ってくれているのかもしれないけど、結局それがさらに壁を作ってしまう。心が通わない会話って、逆に孤独を強調する。

感情を交わさない会話は、心を乾かす

「人と話してるのに、ひとりぼっち」って状態、司法書士にはありがちだと思う。感情を交わさないやり取りが何十件も続くと、自分が機械になった気分になる。登記を回し、書類をチェックし、印鑑をもらって提出。そこに感情はいらないし、むしろあってはいけない。だけど、それを続けていると、心がどんどん乾いていく。声をかけられても、笑う元気すらなくなってしまう。

相談を受ける側なのに、相談できない不条理

司法書士という立場上、相談を“受ける”ことは多い。でも、“相談する”ことには慣れていない。誰かに「つらい」と言うのは、なぜこんなに難しいのか。たとえ同業の集まりに出ても、話すのは業務のことばかりで、心の内は隠したまま。それどころか、「暇です」と言えば能力を疑われ、「しんどいです」と言えば仕事を断られるかもしれない。結局、黙って笑って「順調です」とだけ言ってしまう。

依頼人との距離が近くて遠い

毎日のように誰かと話している。でもそれはあくまで「依頼人」としての関係。こちらは「先生」と呼ばれ、あちらは「お客さん」。感情を交わす余地は少ない。相手は問題を抱えてやってくるけれど、こちらの心の中までは届かない。表面的なやり取りだけが繰り返されて、ふとしたときに「今日一日、誰とも心から話していない」と気づくことがある。

「先生」と呼ばれても、人として見られていない気がする

「先生」と呼ばれることに、最初はちょっとした誇りもあった。でも今では、それが逆に壁になっている気がする。どこかで、「人間」ではなく「司法書士」として見られている感じ。冗談を言っても笑ってもらえず、ちょっと疲れた顔をしていても気づかれない。肩こりのように「そこ痛いんです」と言えたらいいのに、孤独の痛みは見えないし、触ってもらえない。

泣きたいときに、泣けない立場のしんどさ

昔、依頼人が手続きの途中で泣き出したことがあった。誰もいない応接室で、黙ってハンカチを差し出した。でもそのときふと思った。「俺も泣きたいんだけどな」と。だけど司法書士は泣けない。弱さを見せたら、信頼を損なう。プロとしてふるまうべきなのはわかっているけれど、人間としての感情を押し殺すのって、思ってる以上にしんどいんです。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓