夢の中でも謝ってる――司法書士、休む場所がない

夢の中でも謝ってる――司法書士、休む場所がない

夢の中まで仕事――もう逃げ場がないと感じた夜

昨日、夢の中でまで登記簿の表記を直していた。現実ではすでに訂正済みの案件なのに、夢では何度もハンコを押し間違えて、依頼者に叱られ、法務局の職員に冷たくされる――そんな映像が繰り返された。目が覚めたとき、心がひどく疲れていた。司法書士という仕事は、ミスがすぐに「取り返しのつかないこと」になるという緊張感がある。それが抜けきらず、眠っていてもなお「仕事モード」が解除できないのだ。自宅の布団の中でさえ、私はまだ、誰かに謝っている。

ミスが頭から離れないとき、心はどこに避難すればいい?

頭では「過ぎたことだ」とわかっている。けれど、あの一言、あの対応、あの書類の出し直し…。ひとつの小さな失敗が、何重にもなって自分を責め立てる。そういうとき、どこに逃げ込めばいいのだろう。居酒屋で愚痴っても、家に帰れば結局また思い出す。心がふっと休める場所がないのだ。温泉にでも行けば気がまぎれるかと思ったが、風呂に入ってる間すら、登記のことを考えてしまっていた。笑ってしまうほど、逃げ場がない。

寝ても覚めても「すみません」ばかり言ってる

ふと自分のLINE履歴を見て愕然とした。「すみません」が異様に多いのだ。依頼者にも、事務員にも、取引先にも、司法書士会にも、法務局にも。四六時中「すみません」と書いている。そしてその言葉は、夢の中でも繰り返される。以前、寝言で「すみません…次からは気をつけます…」と呟いていたらしい。誰も聞いていなかったからよかったものの、自分の中に染み込んだ「反省グセ」は、もう癖を越えて“本能”になってしまっている気がする。

「しょうがないよ」って言ってくれる人もいない

家に帰っても独り身。誰かに「まあまあ、そんな日もあるよ」って言ってもらいたい気持ちはあるが、そんな存在はいない。事務所では立場上、弱音は吐きづらいし、同業者とは愚痴を言い合う時間もなかなか取れない。結局、自分の中で処理するしかなくなる。その「処理しきれなかった想い」が、夢となってあふれてくるのだろう。現実のミスが、心に残ったまま眠りについて、そのまま次の“勤務”に突入するような、そんな疲れ方をしている。

ミスを引きずるタイプの人間は、司法書士に向いてないのか?

たまに思うのだ。こんなにも引きずる性格で、なぜ司法書士になってしまったんだろうと。切り替えがうまく、スパッと忘れられる人のほうがこの仕事には向いている。私は些細な間違いにも長く悩んでしまい、「また同じミスをしたらどうしよう」と萎縮してしまうタイプだ。だけど、そういう慎重さこそ、この仕事に必要な部分でもあると信じたい。そう思わなきゃ、やっていられない。

真面目が仇になるこの仕事

真面目にやればやるほど、失敗が怖くなる。いい加減に仕事をこなせるなら、夢にまで出てくるような精神状態にはならないのだろう。でも、私は登記一枚にも責任を感じてしまう。誰も見ていないと思っても、自分だけは知っている。「あのとき、こうしておけばよかった」と。誠実さを捨てたら終わりだと思っているけれど、誠実さが自分の首を絞める夜もある。

完璧主義者ほど壊れやすい現場の現実

仕事の現場は思い通りにはいかない。完璧を求めていても、書類は抜けるし、相手は予定通りに動いてくれない。自分は100点を目指していても、誰かのミスで全体が台無しになることもある。そのとき「自分がもっと準備していれば」と思ってしまうのが、またツライ。そうして自分のせいにしていくと、どんどん心がすり減っていく。完璧主義は一見美徳のようで、実は心の毒でもあるのだ。

誰にも相談できない日常が夢に出る

夢に見るのは、現実で吐き出しきれなかった感情だと聞いたことがある。たしかに、私の夢はだいたい「言えなかったこと」で埋まっている。依頼者の無茶ぶりに「それは無理です」と言えず、「なんとかします」と引き受けてしまった後悔とか。事務員のミスに対してきつく言えなかったこととか。誰にも言えず、自分の中に押し込めた感情たちは、夢の中で自由に暴れ回る。

事務員に弱音は吐けない、でも限界はくる

事務員は一人。彼女も忙しそうにしている中で、こちらが疲れた顔をしていたら、空気が悪くなる。だからなるべく笑顔で接している。でも、心の中は「今日も間に合わなかった」「あの登記、間違ってないだろうか」と焦燥でいっぱいだ。限界を超えても、誰も「もうやめとけ」とは言ってくれない。だからこそ、自分で自分の限界に気づかないといけない。でもそれが、一番難しい。

独り言が増える夜と、ため息しか出ない朝

最近、夜中に「よし…」とつぶやきながら机に向かっていることがある。誰に言ってるわけでもないのに、独り言がどんどん増えていく。朝起きても、ため息から始まる。テレビのニュースも入ってこない。今日はどんなトラブルが起きるんだろうと、先に心配してしまう。そんな自分に嫌気がさす。でも変えようとしても、すぐには変わらないのが現実だ。

そもそも「休んでない」のが問題だった

気づけば何カ月も休みらしい休みを取っていない。日曜も電話が鳴れば出るし、急ぎの書類があれば取りに行く。小さな事務所だから、全部自分でやるのが当たり前になっていた。けれど、当たり前にしてしまったことが、自分を追い詰めていたのだ。夢にまで仕事が出てくるのは、たぶん「もう無理です」って体が出してるサインなんだと思う。

休むことに罪悪感を感じる悪循環

休もうとすると「こんなときに?」と自分で自分を責める。依頼者に申し訳ない気がして、結局パソコンを開いてしまう。誰も責めてないのに、勝手に自分で背負い込む。そして疲れて、またミスをして、また夢に出る。これ、完全に悪循環だ。司法書士が健康でいることは、依頼者の利益でもあるはずなのに、どうしても自分の体を後回しにしてしまう。

同じような司法書士さんに伝えたいこと

私と同じように、真面目に、ひとつひとつの業務に誠実に取り組んでいる人へ。夢の中で謝ってしまうような自分を、どうか責めないでください。それは、あなたがちゃんと向き合っている証拠です。仕事に疲れて、心が限界に近づいているときは、他人よりまず自分を守る勇気を持ってほしい。私も、これを書きながら、自分に言い聞かせています。

夢でまで働いているあなたは、きっとちゃんとしてる

いい加減な人は、夢にまで仕事を持ち込んだりしません。責任感が強いからこそ、夢でも頭が回ってしまう。でも、それは裏を返せば「それだけちゃんとやってる」ということ。自分の価値を疑わないでください。夢の中で謝ってるあなたを、私は責めません。むしろ、よくやってるなあと心から思います。

それでも間違えるのが人間、という当たり前

誰だってミスはする。どれだけ気をつけていても、漏れは出る。完璧な人間などいません。司法書士という仕事は、完璧を求められる職業かもしれませんが、それでも人間がやっている限り、間違いはつきものです。だから、少しぐらい間違えても、「自分はダメだ」と思わないでください。ミスした自分に優しくなることも、必要なスキルのひとつです。

「心の休暇」の取り方、ありますか?

私は最近、小さな「心の休暇」を作るようにしています。旅行とかじゃない。日常の中で、ほんの少し心を緩める時間。たとえば昼休みに外で食べる。たとえば公園を10分歩く。たったそれだけのことでも、「ああ、今日も自分をちょっと大切にできたな」と感じられる。日々の小さな積み重ねが、心を守るためには案外大きいんです。

小さな逃げ場を日常に忍ばせておくコツ

大きな休暇を取るのは難しい。けれど、毎日の中に「自分だけの休憩ポイント」を入れておくのは意外と簡単です。誰にも邪魔されない時間をほんの数分でも持てれば、心がふっと軽くなります。逃げ場を持つことは、甘えではなく「戦略」です。

朝のコンビニコーヒーを全力で味わう

私は毎朝、コンビニのコーヒーを買います。ただのルーティンだったけど、最近は意識的に「この5分だけは誰のことも考えない」と決めています。コーヒーを飲む時間に集中することで、リセットが効くようになりました。

事務所に1時間だけ「仕事禁止」の時間を設ける

ときどき、午前中の1時間だけ「一切電話も書類も触らない」と決めています。書棚を眺めるだけとか、整理整頓をするだけの時間にする。それだけでも頭が整理され、夢の中まで仕事が入ってこなくなった気がします。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。