出会いはある。でも、誰ともつながらないまま年をとった
出会いだけなら、まあまああった気がする
「出会いがない」とはあまり言わないようにしている。婚活アプリもやってみたし、友人から紹介を受けたこともある。街コンにも、勇気を出して何度か足を運んだ。仕事柄、会話のマナーはあるつもりだし、清潔感もそこそこ意識している。でも、それでもなぜか「続かない」。連絡先を交換しても、2、3回やりとりして終わる。こっちが何か悪いこと言ったのかと思ってログを読み返すが、思い当たるフシはない。出会いはある。つながらないだけだ。
婚活アプリ、紹介、街コン…それなりに動いた過去
最初に登録した婚活アプリは、司法書士と書くとウケがいいという噂を信じて始めた。でも実際は、やりとりが始まっても「へぇ〜そういう仕事なんですね」で終わるか、「なんか固そう」と言われるかのどちらかだった。紹介も受けた。地元の同級生が「この人なら合うかも」と言ってくれた女性とお茶をしたが、緊張しすぎて話題が全部業務の話になってしまった。街コンでは、話が盛り上がったこともある。でも次の約束がなぜか決まらない。動いた過去はある。でも、続かないのだ。
いい感じだった人もいた。「あの人と、もし続いていれば」
一人だけ、今でもふと思い出す人がいる。静かな雰囲気の方で、地元の図書館でたまたま出会った。本の話で盛り上がり、その後何度かご飯も行った。でも、ある日を境に「今はちょっと忙しくて」と連絡が減り、自然に途切れた。「もし、あの時もっと自分を出せていたら」と考えるけど、後の祭りだ。司法書士という仕事柄、感情を抑える癖がついていて、相手の心に踏み込むのが怖い。だから、いい感じだった出会いすら、自ら手放してしまったのかもしれない。
仕事柄、最初は真面目で誠実そうに見られるけれど
「真面目そう」「安定してそう」「誠実そう」と最初はよく言われる。でもそれって、ある意味“無難”ってことだ。魅力があるというより、特徴がないということかもしれない。特に恋愛の場では「安心できるけどドキドキしない」と言われたこともある。安心感があるのは仕事上では強みだが、対人関係では時に退屈と見なされる。そんな自分に気づいたのは30代の終わり。そこから変わろうとしたけど、もうどう頑張っても“面白い人”にはなれなかった。
「まじめすぎる」「つまらない人」扱いされてフェードアウト
一番よく聞く別れの理由は、「いい人なんだけど、なんか違う」。中には「まじめすぎる」とはっきり言う人もいた。「つまらない人」と思われたのだと思う。自分では真剣に話をしているつもりでも、相手にとっては“盛り上がらない”と映るのだろう。無理にウケを狙っても空回りするだけで、ますます自信を失う。フェードアウトされるのはもう慣れたけど、やっぱり心には小さな傷が残る。気づけば、また仕事に逃げている。
なぜか深くつながれない。自分にも原因があるのか
ここまで誰とも深くつながれなかったということは、やはり自分にも原因があるのだろう。相手ばかりを責めるのではなく、自分の内面を見つめ直さなければならない時期にきていると思う。けれど、毎日の仕事に追われる中で、そんな時間も余裕もなかなか持てない。だからこそ、ますます心の距離は縮まらないままなのだ。
忙しすぎて、誰かの人生に関われる余裕がない
朝から電話、書類作成、登記申請、依頼人との面談…。気づけば一日が終わっている。事務員さんも手伝ってくれてはいるが、基本的には自分で回すしかない。「今日は誰かとゆっくり話そう」と思っていても、急ぎの依頼が入ればそれどころではない。恋愛は友人との予定もドタキャンすることが増え、次第に声がかからなくなる。自分から関わろうとしても、タイミングがことごとく合わない。「また今度ね」と言った“今度”は、たいてい来ない。
依頼人には時間を割けても、恋愛や友人関係は後回し
皮肉なことに、依頼人のためには深夜まで働けるのに、プライベートの時間はどこかで削ってしまう。もはや「他人の人生の処理」を優先するのが癖になっているのかもしれない。たとえば、せっかくの休日にランチの約束があっても、急な相続の相談が入るとそちらを優先してしまう。もちろん仕事だから仕方ない。でも、その繰り返しが「この人とは続かないな」と思わせてしまっているのではないか。割けるはずの時間が、いつも“後回し”になってしまうのだ。
会話もどこか“仕事モード”が抜けない自分がいる
つい職業病のように、会話を論理的に組み立ててしまう。相手が言ったことに対して「それはつまりこういうことですね」と返してしまう癖がある。日常会話ではそれが“冷たい”とか“機械的”と映るらしい。こっちは丁寧に返しているつもりなのに、なぜか盛り上がらない。仕事の場では評価される「要点を押さえた会話」が、プライベートでは足を引っ張る。誰かとリラックスして話す、という当たり前のことが、今では一番難しいことになってしまった。
「また連絡しますね」が永遠に来ない現実
「また連絡しますね」。このセリフほど空虚なものはない。たいてい、こちらから連絡しても既読スルー。タイミングが悪かったかなと思って数日おいて再度送るも、反応なし。ブロックされたかもしれない、と確認したくなるが、怖くてできない。理由がわからないまま終わる関係ばかりだと、自分に問題があるんじゃないかと疑い始める。信頼していたはずの言葉が、今では“社交辞令ランキング1位”になってしまった。