気づけば独身歴=開業年数。笑えない一致が突き刺さる日々

気づけば独身歴=開業年数。笑えない一致が突き刺さる日々

独身歴と開業年数が並ぶカレンダー

ある日、何気なく事務所の開業届を出した年を思い出し、「あれ?これって…」と気づいてしまった。開業してからずっと独身で、気づけばその年数が完全に一致している。笑い話として誰かに言えればまだ救われるのだが、そんな相手もいない。この数字の一致は、もはや運命の悪戯ではなく、日々の積み重ねの結果である。忙しさにかまけて、後回しにしてきたもののツケが、年月の形で突きつけられたような気がした。

ふとした瞬間に見えてしまった「一致」

きっかけはほんの些細なことだった。年末調整の書類に開業年を記入していたとき、ふと「あれ?俺って開業してからずっと独身じゃないか?」と気づいてしまった。最初は笑って済ませたが、そのあとにくる妙な静けさ。何も変わっていないと思っていた人生が、こういう数字の形で「停滞」を突きつけてくるとは思ってもみなかった。

年賀状も結婚報告も、他人事になった

開業当初は、年賀状の中にちょこちょこと結婚報告が混じっていた。仲間の幸せを素直に祝えていたあの頃。それが数年後には、年賀状そのものが来なくなり、LINEで「二人目生まれました〜」と送られてくる通知を、ただ既読にして閉じるだけの自分がいた。祝福の言葉が出てこないわけじゃないが、自分との距離を思い知らされる。

仕事に打ち込んだ証なのか、ただの逃げなのか

「仕事が楽しくて夢中になってた」と言えればまだカッコがつく。でも正直なところ、恋愛や結婚に目を向ける余裕がなかったというより、向き合うのが面倒だったのかもしれない。相手に気を使うより、依頼書類の不備を修正している方がよっぽど気楽だった。その積み重ねが今、自分の部屋の静けさとなって返ってきている。

司法書士としてのキャリアと孤独の共存

この仕事は、社会的な信頼もあるし、頼られることも多い。それはありがたい。だけど、その裏にはどうしようもない孤独もある。相談され、解決し、感謝される。それでも誰かと夕飯を囲むことはない。自分の人生が「職業」と完全にイコールになっていく感覚に、時折ゾッとする。

開業当初の「今はそれどころじゃない」

開業して数年は、正直、生活するだけで精一杯だった。集客、事務処理、営業。土日も仕事。だから恋愛なんて「今はそれどころじゃない」で済ませていた。でも、それが10年続くとは当時の自分も思っていなかった。目の前の仕事に集中することで、見たくないものを見ないで済んでいたのかもしれない。

少しだけ落ち着いた頃には、誘いがこなくなっていた

ある程度仕事が安定して、少し余裕が出てきた頃には、もう周りは家庭を持っていた。飲み会の誘いも、遊びの誘いも、いつの間にか来なくなっていた。気づけば、携帯に届くのは依頼人からの連絡か、事務員からの報告だけ。誰かと遊びたいという気持ちすら、どこかに押し込めてしまったようだった。

忙しいけど、寂しい。誰にも言えない矛盾

「先生、お忙しいですよね」と言われることが多い。実際、忙しい。でも、「寂しくて死にそうです」と言ったらどう思われるのだろう。弱音は許されない空気が、この仕事にはある気がする。責任ある立場で、信頼されているからこそ、そういう感情を口にすること自体がタブーのような。でも、人間なんだから、本当は誰だって寂しさくらいある。

モテない理由を探すのもやめた

昔は「どうすればモテるか」なんて考えたこともあった。でも、ある日気づいた。「モテたところで、この生活スタイルじゃ無理だ」と。朝から晩まで書類とにらめっこ。デートの時間を捻出するために登記を後回しにはできない。そんな状況で恋愛するなんて、正直ハードルが高すぎる。

自分が悪いのか、環境が悪いのか

「性格が悪いのか?見た目が悪いのか?」と悩んだ時期もあった。でも、結局は環境だ。司法書士という職業は、出会いが極端に少ない。職場に女性はいないし、外回り先も男性ばかり。土日にセミナー、平日は登記簿と格闘。その中で、出会いを求める方が無理がある。

恋愛の優先順位は、どこかで捨てていた

書類の期限、登記の締め切り、裁判所とのやりとり。そんなことばかり優先しているうちに、恋愛の優先順位はどんどん下がった。気づけば、誰かを「いいな」と思うことすらなくなっていた。自分の中で「誰かを大切にしたい」という感情にブレーキをかけ続けた結果が、今の自分だと思う。

同じように悩むあなたへ

このコラムを読んで、どこか一つでも「わかる」と思ってもらえたら嬉しい。別に結婚しなきゃいけないわけじゃない。でも、孤独を「仕方ない」で済ませないでほしい。日々の忙しさに埋もれて、自分の感情を置き去りにしないでほしい。愚痴でもいい。声に出せば、誰かに届くこともある。

愚痴でもいい、声に出すことから始めよう

自分の気持ちを口にするのは、弱さじゃない。むしろ、それが強さだと思う。私は、こうやって文章にしてみて、少しだけ心が軽くなった。誰かに読んでもらえることで、「独りじゃない」と思えた。もし、あなたがこの文章を読んでくれているなら、今度はあなたが、誰かの「共感」になってほしい。

独り言でも誰かに届くと信じて書いています

司法書士という職業は、黙々と作業を続ける仕事だ。だからこそ、言葉にすることが大切だと思う。私は、愚痴や弱音を書きながら、誰かとつながりたかったのかもしれない。独身歴=開業年数。それはたしかに事実だけど、それだけが自分の価値じゃないと、少しだけ言い聞かせながら今日も仕事をしている。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。