なぜかいつも金が足りない
司法書士として独立して10年以上経つが、ふと気づくと毎月の収支がマイナスになっていることがある。「収入はそれなりにあるはずなんだけど…」と帳簿とにらめっこしても、何が悪いのかわからない。気づけば赤字、というより、気づいたときにはすでに赤字。これはもう、慢性赤字体質なのではないかと思うレベルだ。原因を突き詰めようと考えたことは何度もあるが、そのたびに「まあ今月乗り切ればなんとかなるか」と後回しにしてしまう。そして翌月もまた同じ悩みに戻ってくる。そんな繰り返しだ。
収入があるのに財布が軽い謎
忙しい月には50件を超える登記をこなすこともある。報酬は一件一件は少なくない。しかし、手元に残る金額が妙に少ない。入金があるたび「これでやっと少し余裕が出る」と思うのに、気づけば口座はスカスカ。財布は軽い。現金主義でもないのに、どこに消えているのかが本気でわからない。こういうとき、「経営者」としての力量のなさを痛感する。どこかで見た「小さな経費が事務所を殺す」という言葉が、妙に胸に刺さる。
請求書を開くたびに胃が痛む
月末が近づくと、机の上に封筒が積まれる。保険、通信、リース、クラウドシステム…。どれも「必要だから契約した」はずなのに、今ではその請求書を開けるのが怖い。中身を見ずにそのまま置いてしまい、結果として支払い期日に追われて余計に焦る。ある日、請求書を開いた瞬間、思わず「うわっ」と声が出た。冷蔵庫の電気代より、複合機の保守料の方が高かった。
「今年こそ設備投資は控えよう」と毎年言ってる
年始になるたびに「今年こそ倹約」と心に誓う。なのに、ふとネットで見かけた便利そうなソフトや、営業電話で薦められた業務管理ツールに「これで効率が上がれば元は取れる」と自分に言い聞かせてしまう。元野球部だったころ、「用具の質で勝敗が決まる」とよく言われていたせいか、仕事の道具にも変なこだわりが抜けないのかもしれない。そうして今年もまた、設備に吸われる日々が始まる。
積み重なる支払いの内訳
何がそんなにお金を食っているのか、改めて見直してみた。すると、月々の支出の大半が「固定費」であることに気づく。しかも、その多くが「途中でやめられない」「今さらやめると困る」類のもの。始めたときは必要だと思っていたが、今となっては惰性で払い続けている。保険と設備は、その最たる例だ。
保険料だけでひと月が終わる
司法書士という職業柄、万が一のための保険は欠かせない。業務上過失に備える賠償責任保険、火災保険、地震保険、医療保険、生命保険、そして最近ではサイバー保険まで入っている。これらを月々分割払いにしているので、それぞれが小さく見えるが、合計すると事務所の家賃並みに膨れ上がっている。なのに、いざ使おうと思っても「これは対象外です」と言われるときの虚しさといったらない。
コピー機リース地獄から抜け出せない
「買うよりリースの方が経費になるし楽ですよ」と言われて契約したコピー機。確かに導入当初は便利だったが、今では使う頻度も減っている。なのに月々のリース代は変わらず引き落とされていく。解約には違約金がかかるし、新しい機種を入れればまた新たなリースが始まる。こうして、リース地獄は無限ループになる。
事務所経営は見えないコストとの闘い
司法書士という仕事は見た目に反して「経営者」的な感覚が問われる。収入と支出のバランス、設備と人件費、広告と信頼性…すべてがコストとして積み上がっていく。しかしそのコストが、見た目に表れないから余計に厄介だ。「いつか楽になるだろう」と思って走り続けてきたが、気づけばコストに追われる日々だった。
「必要だから仕方ない」で買い続けたもの
結局のところ、「必要だから」で自分を納得させてしまうのがクセになっていた。「クライアントの印象を良くしたいから」と内装を変えたり、「作業効率を上げたいから」と高性能PCを導入したり。それぞれに意味はある。だがそれが収益にどれだけ寄与したかを検証する余裕もなく、次の「必要」が訪れる。そしてまた、財布が軽くなる。
なんとなく導入したシステムの維持費
最近では電子申請や顧客管理システムも当たり前になってきた。便利なのは間違いないが、それぞれ月額使用料がかかる。乗り換えるにはデータ移行が必要で、それも面倒くさい。だからそのまま使い続けているが、年間の支払いを見ると正直ゾッとする。結局、「なんとなく始めたもの」が、じわじわと経営を圧迫しているのだ。
独立って自由だけど孤独
独立して良かったと思う瞬間もある。でもそれと同じくらい「全部一人で決めなきゃいけない」プレッシャーが重くのしかかる。設備一つ入れるにも誰かに相談したいと思うが、経営の話は身近な司法書士同士でもなかなか話せない。みんな大変なのはわかっているけれど、口に出すのがなぜか恥ずかしい。だから黙って飲み込むしかない。
誰にも相談できない設備投資の判断
たとえば「FAXはもう要らないんじゃないか?」と考えても、誰にも相談できずにそのままにしてしまう。新しいプリンターを買うかどうかも、ひとりで悶々と考えるしかない。「失敗したらどうしよう」「ケチって効率が落ちたらどうしよう」と不安だけが募る。結果として、必要かどうかの判断ではなく、「不安解消のための出費」になっている気がする。
「それ買う必要ありました?」と誰かに言ってほしい
本音を言えば、「その設備、本当に必要でした?」と誰かに問いただしてほしい。でもそれを言われたら、たぶんムキになって正当化してしまう自分もいる。だから言われないように先回りして、もっと設備を整えてしまう悪循環。たまには誰かにストップをかけてほしいけど、そういう人がいないのが独立の現実だ。