「紹介されたからには…」が重たく感じる夜に

「紹介されたからには…」が重たく感じる夜に

紹介って、ありがたいのにしんどい矛盾

「紹介って嬉しいですね」と言われることが多い。でも本音を言えば、紹介がプレッシャーになることって、案外多いんです。司法書士という仕事は、信頼で成り立っているからこそ、「○○さんから紹介されたんですよ」と言われると、こちらも無意識に身構えてしまう。ありがたいけど、それがしんどい。紹介されること自体は信頼の証かもしれないけれど、それに応えるために自分をすり減らしてしまう夜が、実は少なくありません。

「うまくやってね」と背中を押された瞬間のプレッシャー

先日、地元の顔なじみの不動産屋さんから「ちょっと頼むよ、いい人だから」と紹介されたお客さんがいました。事前に「この人、少し面倒かも」と聞かされていたのもあって、こちらも気を抜けない。紹介者の「頼んだよ」という無邪気な一言が、なぜか自分に「絶対に失敗してはいけない」という命令のように響いてしまう。普通の仕事なのに、普通じゃなくなる。それが、紹介という存在の不思議な力です。

紹介者の顔がチラつくたびに自分の自由がなくなる

紹介された人に対して何かを言うたび、「これ、紹介者が聞いたらどう思うだろう」と頭のどこかで考えてしまう。正直な意見を言いたくても、それが「感じが悪い」と取られたら紹介者の顔に泥を塗ることになるんじゃないか…そんな思考がぐるぐる回り始めると、もう自由に対応できない。紹介って、嬉しいようで、実はすごく自分を不自由にすることがあるんです。

ミスできない空気に息苦しさを感じる

紹介案件で最もつらいのは、「失敗できない」という見えない空気。通常の依頼なら多少の修正で済むミスでも、紹介だと「紹介してくれた人に申し訳ない」と何倍にも重くのしかかる。夜寝る前、「あの説明、ちゃんと伝わったかな」「不快にさせていないかな」と、答えの出ない反省会がひとりで始まるのは、いつも紹介の案件の後だ。

ちょっとした一言も、紹介者の評価に響くと思ってしまう

あるとき、「それは少し難しいです」とやんわり断っただけなのに、紹介者から「あの人ちょっと冷たいって言ってたよ」と言われたことがあった。言葉尻一つで印象が変わり、それが回り回って自分の評価、さらに紹介者の顔にまで影響する。それが怖くて、どこか過剰に丁寧になったり、言いたいことを飲み込むこともある。言葉が自由に使えない仕事って、想像以上にしんどい。

地元の狭さが余計にプレッシャーを増幅させる

田舎の司法書士あるあるかもしれませんが、地元って本当に狭い。紹介された人が、どこかで自分の知り合いとつながっていたりして、「あの人に言わないでね」と言われても実はもう話が回ってたりする。情報が早すぎるし、人間関係が濃すぎる。だからこそ、紹介のひとつひとつが「慎重に扱うべき爆弾」に思えてしまうのです。

「○○さんの紹介で」と言われるたびに緊張する

名刺交換の時に「○○さんから聞きました」と言われると、たいてい心の中で「うわ、出た…」と軽く身構えるようになってしまった。初対面なのに、もう評価の土台が決まっている。こちらの対応一つで、○○さんの顔が立つか、潰れるか、そんな重荷を勝手に背負い込んでしまう。それが積もり積もって、「紹介ってしんどいな」と思ってしまうのかもしれない。

ミス=噂話、だから神経をすり減らす

地元の紹介で一番怖いのは、噂話。たとえ小さなミスでも「あの先生、ちょっと頼りないらしいよ」と話が盛られて拡散される。ミスの内容よりも、「誰から聞いたか」の方が話題になるのが田舎の怖さで、「○○さんが紹介したのにね」とセットで語られることもある。だからこそ、普段以上に気を張ってしまう。精神的な消耗が本当に激しい。

知らぬ間に「評判」が一人歩きしている現実

何よりも厄介なのは、自分が知らないうちに、自分の評価が勝手に定着していること。どこかで何かを失敗したら、それが尾ひれ付きで別の紹介に影響してくる。もう自分の言葉ではなく、他人の言葉で自分が形作られていくような怖さがある。紹介って、信頼関係の証である一方で、噂社会ではまるで呪いのようにもなる。

紹介案件=断れない、の思い込みとその弊害

忙しくても断れない。体調が悪くても「紹介だから」と無理をする。これはもう自分の性格の問題でもあるけれど、紹介者の顔を潰すくらいなら自分がつらくても…と思ってしまう。この「断れなさ」が、自分を追い詰めていることには、正直気づいている。でも、やっぱり断れないんです。優しさと弱さの境目って、本当に難しい。

忙しくても断れずに引き受けてしまう自分

以前、葬儀の手続き直後でクタクタになっているときに、「今すぐ見てほしい」と紹介された案件がありました。断れたらよかったんですが、「○○さんの紹介だから」と頑張ってしまい、結果的に別件のスケジュールが崩れて大混乱。あとで冷静に考えると、自分が無理してまで背負うべきことじゃなかった。それでもまた同じことを繰り返してしまう。これはもう、性格なんでしょうかね。

優しさじゃなくて、ただの弱さかもしれない

人から見れば「誠実な人」と思われているかもしれない。でも、自分の中では「ただ断れないだけの人」なんじゃないかと不安になることも多い。優しさと弱さは違うのに、その境界線がよくわからない。紹介された相手に過剰に気を遣うのも、相手のためじゃなくて、自分が悪く思われたくないからかもしれない。そう思うと、自分の行動が情けなくなる。

紹介のプレッシャーから抜け出すための小さな工夫

このままじゃ身が持たない、と思ったときに少しずつ実践している工夫がある。完全にプレッシャーから解放されるわけではないけれど、少しでも楽になる方法を模索するしかない。司法書士として一人でやっていく以上、精神的なバランスを保つ工夫は、自分の身を守る手段でもあります。

最初に「紹介だからといって気を遣いすぎないでください」と伝える

紹介で来た方には、できるだけ早い段階で「普通にお話ししてください」と伝えるようにしている。「○○さんから紹介されたんで…」と相手が恐縮していたら、「紹介者の顔は関係なく、対等にやりとりしましょう」と笑顔で言う。これだけで、ずいぶんお互いが楽になる。自分も、少しだけプレッシャーから解放される。

紹介者にも「絶対に成功するとは限らない」と先に言っておく

紹介者にも、事前に「相性が合わないこともあるので、そのときは遠慮なく断っていただいて大丈夫です」と一言添えるようにした。紹介=成功しなきゃ、というプレッシャーを減らすのは、先に言葉で逃げ道を作ることが大切だった。紹介者の信頼を損なわずに、自分を守るための防衛線。これは本当に効果がある。

自分の身を守る一言が、心を軽くする

「紹介だからって、全部うまくいくわけじゃないですからね」と笑って言えるようになってから、少しずつ気持ちが楽になってきた。紹介はありがたい。でも、それに縛られる必要はない。完璧じゃなくてもいい。自分の心を守る言葉をひとつ持っているだけで、夜の重たさが少しだけ和らぐ気がしている。

「紹介案件は嬉しいけど…」の本音を認めよう

紹介で来る仕事はありがたい。けれど、その裏にある「しんどさ」や「気遣いすぎる自分」も、間違いなく本音の一部。それを否定せず、「そういう感情もあるよね」と認めてあげることで、少しだけ自分に優しくなれる。今日も誰かの顔を思い浮かべながら仕事をしているけれど、たまには「もうしんどい」と口にしてもいいんじゃないか。そんな気がする。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。